20話
大音量の重低音と共に施設全体を大きな揺れが襲った。
たぶん上で激しい戦いが繰り広げられているんだと思う。
「よし、今のうちに」
わたしは瞬間移動を駆使し、壁をすり抜けると、全力ダッシュであの爆弾を目指した。しかし、今の衝撃によって随分と施設全体が脆くなってしまっていて、全ての爆弾を回収して帰るには時間が足りない。
でも、せめて、そんな風に思いながら間違えて起動させてしまった爆弾だけを回収し、元いた部屋のほうへと駆け出す。
ついでに途中で業務用の机を二つほど部屋の中へと飛ばしておく。
そして本日二度目となる瞬間移動を使い、部屋の中に飛び込むと、先にここに飛ばしておいた机を二つ積み上げて、その上にわたしは乗る。
すると、見事に天井までの高さがギリギリ瞬間移動で抜け出せる高さになった。
早々と本日三度目の瞬間移動で部屋を脱出すると、どうやらそこは正面入り口と、わたしたちがここに来たときに使った入り口の中間地点らしい様子だった。
さっきから轟音を奏でている正体が分かってはいるが、脱出したということを伝えるために様子を見に行ってみる。
一方には影千代君と月夜ちゃんが、もう一方には大八木が立っている。
そして影千代君は手負いのようだった。左腕がだらりと垂れ下がり、まったく力が入っていないように見える。
「女ここで何をしている」
「ちょ、だまってて」
「女」
「五月蝿いな」
「おい」
「少しは静かにしてよ」
「女! ここで何をしていると聞いているんだ!」
「だから!」
振り返ると随分と体格のいい男の人が立っていた。
「し、失礼しましたー」
「逃がさんぞ」
男はわたしの襟首をしっかりと掴んで、逃がそうとはしてくれなかった。服を脱ぎ捨てれば逃げ出すことも苦ではないけど、流石にそれは精神的に受け付けられない。
「さて、逃げ出した罪は重い。ここで死んでもらおう」
男は右腕を岩石のようなもので覆い、振りかぶった。
「安心しろ、痛みなんて無い」
絶対に痛みしかない攻撃を繰り出そうとしているその拳が迫り来るなか、わたしは男の無駄に鍛え上げられた腹筋に手を当て、地中五十メートル付近に移動させる。
「ふぅ、これで一安心かな」
流石に地中から逃げ出してこられるほど強い人ではないでしょう。そう祈りましょう。
「女ぁ! そこで待っていろ、今すぐに殺しに行くからな!」
足元からそんな声が響き渡った。
「……やっば」
ここから逃げるというのはなんか違う気がする。
そんな思いだけで一先ずこの場に残ることを決意し、そこら辺に転がっている石や、瓦礫、木片、硝子などを掻き集める。
ゴボ。
文字で表そうとすればそんな表記でしか書き記すことが出来ない音を立てながら地を砕き、男が姿を現した。
「待たせたなぁ! 今すぐに殺してやるから安心しろ!」
男が体中にこびりつかせた土を掃うことなくそう言うと、さっきとまったく同じ行動を繰り返した。
流石のわたしも一度見たものを繰り返されれば反応ぐらい出来るわけで、まったく触れらることなく避けきると、掻き集めておいたものをすべて男の体内へと瞬間移動させ、見た目には何の変化ももたらさず、体内を破壊しつくす。
そしてその死体をそのままにするのがなんだか申し訳なく、ついでに死体を見ていると言うのも気分が悪くなりそうだったから、土の中に埋めてあげることにする。
もちろん、わたしが埋められる一番深い場所に。
「さて、月夜ちゃんたちは……」
わたしは目の前の光景に絶句した。
いや、絶句というよりも息がつまったというか、呼吸が出来なくなったというか――あえて言うならば、
慄いた。
そして気が付けば足が動き出す。
というわけで、20話でした。
至らぬ点が多々あるとは思いますが、少しでも楽しんでいただけていれば幸いです。




