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ギフト  作者: 菓子の木
10/25

10話

 わたしは現在黒装束の二人組みによって追われている。理由はわたしが泥棒だからと言うことで間違いないと思う。

「おい、待てガキ!」

 二人組みのうちの一人が叫ぶ。

 十六歳ってまだガキなのかな?

 そんな疑問もつかの間後ろから火の球がとんでくる。わたしはそれを右斜め前に瞬間移動をすることで避ける。

「お、おい今……」

「気にするな! 瞬間移動といったって五十メートルがいいところのはず」

 ご名答。

 伊勢家に先祖代々伝わるこの魔術は五十メートルが限界。しかも連続して使い続けると、瞬間移動の負荷に体が負けるから、自分を移動させるのは一日に五回が使える限界。

 だけど、自分以外のものだったら話が違うんだよね。

 わたしは目の前に停車している無人の車に手を触れ、ちょうど二人組みの上に瞬間移動させる。

「うわっ」

「このくらいで足を止めるな!」

 どうやら先輩らしい一人が車を火の球によって爆散させてしまう。

 流石に無理だったかぁ。

 それでもまあ一瞬動きを止められたことには変わりないはず。それだけでも十分。

 本当だったら瞬間移動をして早々と逃げるところだけど、ここら辺の地理に関してまったく知らないわたしは、変な場所に移動してしまって、逆に追い詰められると言うことを怖がってしまってまともに瞬間移動が使えそうにない。

 それこそ地面の中だったり壁の中だったり、そんな場所に移動しちゃったらと考えるだけで生きた心地がしないよ。

 それにしても、そろそろ走っているのにも限界が見えてきた。追いかけてきている二人はしっかりと訓練がされているのか、まったく疲れている様子が無い。

 せめて自転車を。

 そう願ったとき、都合よくコンビニに自転車が置いてあるのを確認する。

「誰か分からないけどごめんなさい」

 一言謝ってから、わたしは自転車にまたがり、全速力でペダルをこいだ。

「おい、コラ! 俺の自転車勝手に持っていくなよ」

「自転車泥棒ですね」

 声に驚き振り向くと、今度は新しい二人組みがわたしを追っていた。

 あれ? 今度は少年と女の子の二組みか、悪いことしちゃったかな。でもわたしも凄く困ってるからいいよね。

「おい、邪魔だ!」

「子供は引っ込んでろ」

 わたしが自転車に乗っている間に大分差を詰められていたようで、黒装束たちは少年と女の子の間に割って入った。

「邪魔なのは、お前だ(あなたです)!」

 少年が一人の男の頭に業火を放ち、女の子はさっきまで持っていなかったナイフで心臓を抉った。

 それも、足で地面を蹴ってから足が地面を捉えるその一瞬で。

 この子達はヤバイ。

 このままだと確実に殺される。

 わたしじゃあんなの相手に出来ない。

 そんな言葉が立て続けに脳裏を過ぎ去っていく。

 恐怖に追われわたしは自転車を前へ前へと進めていく。

「影千代さん、自転車に走って追いつくのは無謀です」

「そんなこと言ったって仕方ねぇだろ、そんなこと言うなら自転車作ってくれよ」

「無理です。今何かを食べている暇なんてありません」

「それなら黙って追いかけてろ」

 後ろからそんな話し声が聞こえてきた。

 声の遠さから考えると、さっきよりも数メートル引き離しているかどうか、ってくらいだと予想できる。

 とりあえず、どこか大きめな店に入って、走り回った末に一番外に近い壁から外に瞬間移動して逃げよう。きっとすぐには理解が追いつかないだろうし。

 確か昨日行ったスーパーが馬鹿みたいに大きかったから、とりあえずそこまで行こう。この角を曲がった場所にあったはずだし。


 ここで世界が暗転し、しばらくして時が流れ出す。


「君にはここで生活をしてもらいたい」

 そう言って連れてこられたのは、まさに廃アパート。

 結局影千代君と月夜ちゃんに捕まえられちゃって、色々あって大塚さんと言う中年のおじさんに連れられてここにいる。

「ここ、ですか?」

「そうだ。安心してほしい、ここで生活するのに必要なお金はこちらで負担する、当然食費やその他雑費もだ」

 突然そんなことを言われてもわたしは混乱する以外のことを出来ない。

「もちろん、条件は付いているけどね」

「はぁ?」

「条件は二つ。一つはこの腕輪を着けて生活をしてもらう」

 そう言って大塚さんがわたしに見せたものはしばらく着けられていた足かせと同じものだろう。

 つまり、魔術を使うな。と、そう言いたいのだと思う。

「そしてもう一つは何かあったときに手を貸して貰う」

 わたしが手を貸すと言うことは、この能力を使わせろと言うことでいいんだろうか。なるほどつまり、この能力を大塚さんの使いたいように使わせる、と言うことかな。

「この二つの条件を飲んでくれるなら、君が捕まった記録を抹消して、ここで生活するのに必要なもの全てを用意しよう」

 これはとても美味しい話だ。

 だってわたしが魔術を使わなければ本来失うはずであった自由を失わずに済むのだから。

「ただ、もしもこちらの指示によって行なったこと以外で罪を犯した場合、僕の手で君を殺すことになるけどね」

 罪を犯さない限りの自由を保障していただけるのなら十分だと思ういや、十分すぎるくらいだよね。

「それと、ここには特殊な結界が張ってあって、僕と君以外の者は絶対に入って来れないから。まあ、僕か君が直接手を引いて連れてきた者は、以降も自由に出入りできるんだけどね」

 人を連れてくることのないわたしには関係のない話だけど、もしまた黒装束に襲われたときは凄く便利かな。

「……分かりました。その条件を呑みます」

「じゃあ何かあったときは頼むよ」

「はい」

 大塚さんは何事もなかったように大通りのほうへと歩いていった。

 随分と変わったおじさんだよね、あの人。


『ブゥゥゥブゥゥゥブゥゥゥ』

 小刻みに振動しながら携帯がわたしの快眠を邪魔する。

 いや、快眠を呼べるかどうかは分からないか。別に嫌な夢ってことはまったくない、むしろ懐かしくていい夢だったけど、夢を見ているときは熟睡できてないって言うし。

 わたしの睡眠を邪魔した仕返しとして、電話を掛けてきた主に罵声の一つや二つ浴びせてから、電源を切って夢の国に飛び立とう。

 そう決めて電話に出る。

『こんな時間にごめんよ』

「大塚さんですか」

 と言うことはついに何かが起きたらしい。

『明日そっちに行くけど、あの二人はそっちにいるかな?』

「はい、いますよ」

『じゃあ明日はどこにも行かずにそこで待っていてくれると助かるな』

「分かりました」

『また明日』

「また明日」

 そう言って通話は切れた。

 とても短い会話だったけど、一気に目が覚めてしまった。少し夜風にでも当たってこようかな。

 それにしても何であの夢見たんだろ。

 昨日の夜懐かしい話をしてたからか、今日黒装束を見たからか。

 うーん、なんでだろう。

というわけで、10話でした。

至らぬ点が多々あるとは思いますが、少しでも楽しんでいただけていれば幸いです。

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