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作者: フナジュー(14)

 「殺人だ!」という声が捜査一課に響く。

「君、宝月刑事と共に初動捜査にあたってくれ。場所は廃ビルの『びるぴぃ』、殺されたのは巡査が追っていたひったくり犯だ」

状況が良く掴めない。神張警部は続けた。

「密室殺人らしい」

「喜んで行きますよ!」

密室……か。これはやりごたえのありそうな事件だ。僕は飛び出した。


 佐々木巡査に話を伺うことになった。まあ、当然な流れだろう。

「第一死体発見者ということで、ひったくり犯を追跡した経緯から話を聞かせて下さい」

すると横から茶々をいれる自称科学捜査官。

「ちょっと、正有朱くん!この場をしきるのはこのアタシなんだけど」

無視。

「ええとですね、まず本官、パトロール中、ひったくりの現場を目撃したのです。それを見た本官、走って後を追いかけまして、ひったくり犯はこのびるぴぃに逃げ込んだのです」

「気になる点が二つあります。まず、ひったくりに合った人は今どうしていますか?」

「かばんをまるごと獲られたご婦人ですが、かばんは事件現場で発見されました。ほら、向こうに待機してもらっています。かばんの中から無くなっているものはない様なのでお返ししても良いのですが、何か手がかりが残っている可能性もありますので、こちらで預かっています。宜しければ後で調べて下さい、かばん」

佐々木巡査は早口でまくし立てた。

「もう一つは、巡査の前でひったくりをしたのには何か意図があるのでしょうか……」

「いやぁ、偶然だと思います。でも、びるぴぃに逃げ込もうとしていたのは確かです」

「そうですか、それなら続きをお願ゐします」

邦月刑事は、早速かばんの指紋を検出し始めた。

「ひったくり犯はびるぴぃの一室に入ると、内側から鍵を閉めました。見て分かる通り、この部屋に出入り口はこの扉しかありません。自分を閉じ込めてしまったのです。」

鍵の指紋も取っている。

「もろそうな鍵だったので本官は扉に体当たりをして四十秒程、やっと扉が開いたのです。追い詰めた――そう思って乗り込んだら……」

ひったくり犯は息絶えていたのです、と若い巡査は身震いした。

「驚きました。扉の反対側で一人殺されたのですから。そして本官、急いで警視庁に連絡したのです」

まだ死体はあった。胸にナイフが刺さっている。これは即死だな、と僕は思った。すると、そのナイフの指紋も「科学捜査官」が取り始めた。

僕は訊いてみた。

「何故殺されたと分かったのですか?事故、自殺の可能性は」

ナイフに指紋が付いていなかったからです、と若い巡査は答えた。彼は、ひったくり犯は手袋をしていませんでした、とも言った。

「成る程、自殺ならナイフに指紋が残り、ましてや事故で胸にナイフが刺さるとは考えにくい。そういうことですね」

「その通りですよ」

邦月刑事は口を挟んだ。

「かばんの指紋は持ち主とひったくり犯のものだとわかったよ。ひったくり犯の指紋と鍵の指紋も一致、ナイフは指紋一つ付いていない」

「了解しました」

でも困ったなぁ、と僕は云った。ひったくり犯の身元は不明。完全な密室殺人。謎だらけ。死亡推定時刻は九分前だけど、しれしかはっきりしていない。

喜んで引き受けたのは馬鹿だったと、当たり前の後悔をした。


 その時、二階から叫び声がした。

「時限爆弾だ!」

――何だと!

「後三十秒だッ!逃げろ逃げろ!」

「邦月刑事!」と僕が呼んだ時には既に、彼女はびるぴぃから離れていた。逃げ足は速い。佐々木巡査、ひったくりの被害にあった婦人を連れて僕も逃げ出した。警察が全員びるぴぃから離れた直後、激しい音を立てながら廃ビルは粉々になった。

「怪我人は出ずに済んだみたいだ」

佐々木巡査の溜息。

だが、事件現場も死体も、滅茶苦茶になってしまった。まだ、捜査が始まったばかりだというのに。

「爆弾は……何処にあったんですか」

佐々木巡査と同じ交番の人が発見した様だった。

「びるぴぃ一階の事件現場の、上の部屋だ。佐々木が死体を発見した頃に犯人がスイッチを入れたんだろう。十分たったら爆発するように、ね。壁にしっかり取り付けてあったよ」

「二階に行けるんですか」

「ナァに云ってんだ。エレヴェーターは壊れてるが階段はあるに決まってらァ」

「はあそうですか」

大掛りな事をする犯人だ。びるぴぃを爆破したのは証拠隠滅の為か、それとも――。

不可能犯罪で足止めして、警察を殺すつもりだったのか。

所謂テロだ。

だから、佐々木巡査の目の前でひったくりをしたんだ。

「先入観はいけないよ」、と頭の中から声が聞こえる。あの探偵の声。

もう一度考え直した方が良さそうだ――、網州正有朱新米刑事は、そう思った。


 「さくさくさくさく」

かりんとうを噛み砕く邦月刑事。この場合、不機嫌なのである。

「証拠も何も残さくさくってないから、さくさく科学捜査官がさく出る幕じゃないね、さくさく」

さぼりたいだけだろう。

「証拠ならひとつ残ってますよ、ひったくられたかばん。早く調べてあの婦人に返してあげましょうよ。ずっと待ってもらっているんですから」

……睨まれた。コツン。かりんとうを投げつけられる。

消防車が来て十五分。何の手がかりもないまま、ぼおっと過ごしていた。消防車に、僕のやる気まで消されてしまったのか。否、ただの言い訳に過ぎない。僕だってさぼりたいのだ。しかし、喜んで引き受けたからにはなんとかせねば。犯人を、捕まえなければ。

「御苦労様です」

「お早う」

背後から聞こえてきたのは、まぎれも無く舟堵痲山探偵事務所の山田太郎探偵の「挨拶」だった。

「ペルセウスくん、今日も元気にやってるね」

「なんか出てきましたね」

山田さんは目を擦って、云った。

「神張警部に頼まれてしまってね。僕なんか、フナジューとドバゴンに、調査に置いて行かれてね、暇だったから良かったのさ」

フナジューさんとドバゴンさんは、その探偵事務所の第一、第二探偵で、山田さんは第三探偵なのである。つまり、暇なことが多い。僕はペルセウスと呼ばれている。

「事件のことは聞いたけど、よく解らないね。犯人は予めびるぴぃの部屋に潜んでいて、ひったくり犯を待ち構えていたとは考えにくい」

山田さんはこういう時こそ生き生きしてくるのだ。

「犯人は如何にして短時間で密室に忍び込み殺害し、そこから脱出したか」

「謎ですよねぇ」

「何が謎だ。自分の頭で考えてみなされ」

「でも密室は完璧でした」

其処だッ、と山田探偵は鋭く叫んだ。

「その前提の裏は取ったのかい?」

「いえ……死体発見者の話によると、です。あ、まさか」

「そもそも密室なんてなかった。全部嘘だったらどうする」

「無理があるんじゃないですか、その推理」

「それは君の調査次第で解るだろう」

山田探偵はそう云うと、かりんとうを貰いに行った。


 もし佐々木巡査が犯人なら、おかしな点は二つ。彼がひったくりの現場に立ち合ったのは偶然、ひったくりが起きたのも偶然である。それに、動機は無い。

否、そうは謂えないのでは。

隠れた動機があるやも知れぬ。ひったくりが起きたのは偶然だとしても、佐々木巡査は「ひったくり犯をひったくり前からつけていた」可能性は無きにしもあらず。

これは……訊くのが妥当だ。本人ではなく、あの婦人に。


「まだお名前も訊いていませんでしたね」

僕が話しかけると、その婦人は縮こまって愛想笑いを浮かべた。

「私は天野圭子です。……」

「…………」

「……あのー」

「は、はい」

「私のかばん……できれば早く返して欲しいのですが」

「嗚呼、すみません。まだ、許可が出ていません。……で、ひったくりの時の状況、聞かせてください。特に、佐々木巡査の言動について」

「あのおまわりさんの?いいですよ。今日私、ここの近くに用事があって、駅へ帰る途中でした」

「用事とはなんですか」

「陶芸の教室に行っていたんです。その帰り、財布を出した途端かばんを掴まれまして、もぎ取る様にひったくられたのです」

「財布を出した?」

わざわざそんな事を。

「切符を買うために。駅前だったので」

筋は通っている。

「佐々木巡査は偶然その場を目撃しました」

此処だ。

「偶然と言い切れますかね」

「言い切れます」

え? えええ。

「丁度パトロールの流れで目撃したのです。私が少し遅く陶芸教室を出ていたら目撃できなかったでしょう。ひったくりに遭ったのも偶然です」

「分かりました。続きをお願いします」

「続きと云っても……私もそのおまわりさんを追いかけて、びるぴぃの前で待っていました」

「びるぴぃの中には入っていないのですね」

「はい、そうです」

天野婦人は聞いた事に忠実に答えてくれた。

「あ、後、他に目撃者の人が居たら……」

婦人は暫く考えてから、

「おまわりさんがひったくり犯を追っているところを見た人なら居ますよ。ここから近い古本屋のご主人が」

「え、本当に居るんですか!えーと、その古本屋の場所、ちょっと簡単に地図を描いてくれますか」

いいですけど、と僕のさし出した警察手帳に、天野婦人は地図を描き出した。

「ここです、分かりますか?」

「充分です、有難うございます」

僕は現場を飛び出しながら、

「邦月刑事!ひったくられたかばん、調べておいて下さいよ!」

気のせいだろうか、その時誰かの視線を感じた気がした。

それでも、かりんとうの音は、確かに聞こえていた。


 『瀬田古本屋』。看板が見えてきた。

「失礼します。警察です」

ご主人が顔を出した。

「如何したのかね。あのびるぴぃの事件についての聞き込みか。ひったくりが殺されたって、一体何が起こったのか知りたいよ」

背の低い小父さんである。

「殺人事件の方ではなく、ひったくりの方について、です。あなたが見ていたという情報がありましてね」

「うんうん、見ていたよ。ひったくり犯を交番の巡査が追いかけていたね。またその後ろをかばん盗られた女の人が追っかけていてね、何事かと思ったよ」

「気づいた事とか、ありますか?」

「いんや、無いねぇ」

手がかり無し、か。

「でもね、」意味有り気にご主人はにやりとした。「あのびるぴぃ、お化けが出るんだよ」

「は?今何と」

「お化けだってさ。十三年前、びるぴぃで不可解な殺人事件が起きたんだよ。まぁ、マンガ家が解決したらしいけど」

斎藤計のことだろう。神張警部が云っていた。フナジューさんに「探偵」の入れ知恵をしたのが彼である。現在は行方不明だが。

「その被害者のお化けが出るんだよ。真夜中に『人がいる気配がした』と云う奴、沢山いるんだ」

「それは噂では済みませんね」

「ま、古本屋だから噂以上のモノが集まってくるんだよ」

理由になっていない。

「それでね、俺も気になったから行ったのさ、びるぴぃに」

「……物好きですね」

正直僕には、そんな勇気は無い。

「そしたら……本当に出たんだよ」

声色を低くして、瀬田のご主人は続けた。

「自縛霊だな、あれは。びるぴぃが奇妙な音を出して揺れていたのさ」

「ええーッ!本当にですか」

「だからさっき云ったろ、本当にって。ポルターガイストだよ絶対」

風が出てきた。寒気が僕を襲う。

「――役に立つ情報、有難うございました」

それだけ云うと、僕は急いで瀬田古本屋を後にした。

ご主人は役に立ったのかなぁと首を傾げていた。


 現場では山田探偵がかりんとうを食べていた。

「さくさく、ごくん。お、ペルセウスくんお帰り。何か進んだ?」

「犯人が解りました。単なる想像ですが」

すると、かりんとうの持ち主が云う。

「証拠が無いと駄目じゃない」

「邦月刑事こそかばん、如何だったんですか」

「極普通のかばんね。財布、iPod、携帯電話、Suica、本、等々、最低限の物だけ」

証拠は……揃った。

僕は大きく息を吸い、大声で云った。


「これから謎解きを始めます」


「えー出番盗られたッ!」

山田探偵より先に謎を解いたのだから当然だ。

「地元の住民によると、びるぴぃにはお化けが出るそうです。ポルターガイストが」

「ポルターガイスト……ですか?」

佐々木巡査が裏返った声で訊く。

「科学的じゃないね、正有朱くん」

「邦月刑事はかりんとうでも食べていて下さい! 口を挟まないで!」

「さくさくさくさく」

「そのポルターガイストの正体は、びるぴぃの工事でした」

「でも、びるぴぃは廃ビルです。工事するなど……」

「犯人は今回の事件の為に、びるぴぃの一部を造り替えた。舞台は決まっていたのです。動機は多分ですが、警察に対するテロでしょう。不可能犯罪を行い、警察を足止めし、爆発に巻き込もうとしていた。それと同時に、びるぴぃの『トリック』も壊して消した」

待ちかねた山田さんが云った。

「その『トリック』とは何だ!」

「びるぴぃの一室をエレヴェーターにしたんですよ」

「何ぃ!それなら犯人は」

「ひったくり犯と――天野婦人です」

天野婦人はびくりとして、此方を窺った。

「順序立てて説明してくれ。何が何やら……」

なあ、と山田探偵は佐々木巡査に同意を求めた。

「勿論です。先ず、佐々木巡査の目の前で、二人はひったくりを演じました。佐々木巡査は思惑通りひったくり犯を追い、びるぴぃに犯人は逃げ込みます」

「びるぴぃの一室に、ひったくり犯を追い詰めましたが――そこで殺されてしまった」

「佐々木巡査、あなたが発見した死体はひったくり犯ではありません。きっと、ひったくり犯と天野婦人に殺された、本当の被害者です」

まん丸の彼の目ン玉は、よりまん丸となった。

「本官、ひったくり犯の顔は確かに見ていましたよ。死体の顔と同じでした。今は残って無いですけど」

「変装――の可能性だってありますよ」

佐々木巡査は黙ってしまった。山田探偵はそう云う事か、と頷く。

「それで『エレヴェーター』ね。ひったくり犯が閉じこもった部屋はそのまま上にあがり、二階から逃げた訳だ。死体を目の当たりにして混乱している君に見つからずに逃げる事はそう難しくない」

僕はその意見に付け足した。

「上の部屋が上がると同時に、下の部屋も上がってくる。扉の向こうで起きている事など、佐々木巡査には解りっこ無いですから。巡査が扉を破る前に、部屋の移動は済んでしまった。更に、びるぴぃを爆発させたので証拠は残りません。これが事件の真相且つ全貌です」

「さくさく」

「……邦月刑事、何か云いたそうですね」

「あたしの視た死体は、死亡推定時刻が九分前とは思えなかったからさ。実際はそれより前だったのね。解決、解決」

「それだけですか。……皆さん、理解して戴けたでしょうか、今のところまで」

山田探偵は大掛かりな事をする犯人だよな、其処までする必要は有るのかねぇとぼやいた。しかし天野婦人はいい加減な、と云った。

「今の解説、ただの仮説に過ぎないと思いますが、私が犯人扱いされるのは如何してですか!ただかばんを盗られただけで――」

「これから説明しますから。証拠品を交えながら」

一瞬の静寂。

「僕がこのトリックに思い当たった理由は『爆弾の位置』でした」

「爆弾って十分仕掛けの時限爆弾か」

佐々木巡査の同僚は、冷や冷やしたよと汗を拭った。暑いからだと思う。

「時限爆弾なら、スイッチを入れなきゃなりません。爆弾は二階で見つかった、この事からトリックに確信が持てたのです」

「ペルセウス、探偵になったら?」

「煩騒いですね、山田タンてゐ」

「その態度は何だ貴様ッ!」

「わざとらしく云わないで下さい。次に、今残っている唯一の証拠品から、天野婦人、あなたが犯人の共犯だと立証します!」

目を背ける婦人。明らかに動揺している。

「唯一の証拠品って、ひったくられたかばん?指紋は別に……」

「指紋じゃありません。『順序立て』ていきますよ。ひったくられたかばんと、今此処にあるかばんは別物です」

「え、何でですか。本官、変わりないと思いますが」

「『エレヴェーター』を思い出して下さい。『上の部屋』のひったくり犯はかばんを持っている。『下の部屋』にも死体と一緒に同じ『死体の指紋付きの』かばんが置いてあった。中身は、少し異なる部分があったようですが」

「確かに、二つ無いと矛盾しますね。それなら、認めるしかないや。あ、だから天野婦人も共犯と云っているんですね」

唇を噛んでいる天野婦人。耐えている様に見えた。僕はそれを解き放つのだ。

「まだ罪を認めませんか。それならまた一つ矛盾を指摘しましょう。あなたは、駅前で財布を出した理由を『切符を買うため』と云いましたね」

「……はい」

僕は婦人にこれを見せながら云う。

「Suica、このかばんに入っているじゃないですか」

「!」

よし!

「今このかばんにはSuicaが入っていますが、あなたが財布を出したそのかばんには入っていなかった。そうですね?違うかばんだったのですから」

Suicaにはアマノケイコと表記されていた。しかし、まだ逃げ道を探しているようだ。

「更に云うと、あなたがびるぴぃの前に居たのなら、入り口でひったくり犯とがっちあわなければおかしい。何も見ていないと嘘をつくのは如何してですか。――自分が犯人だと云っている様なものですよ」

やっと天野婦人は、くずれた。何もかも。

「そうです……私が犯人です」

「よし、かりんとうの君、手錠だ」

山田さんに調子が戻ってきた。何故だろう。

「ほら、自分もやればできるだろう?」

山田さんが訊いてくる。そうだったのか。

山田さんはさぼっていた訳ではない。

僕に。

僕にヒントとチャンスを与えてくれたのだ。

今更ながら気づいた。しっかり働いているじゃないか。


かりんとうを食べながら、山田探偵は去っていった。


 天野婦人によれば、ひったくり犯の正体は夫、天野昌介だと云う。

「私は、警察に恨みがあった。弁護士の夫に傷を付けた、その担当の刑事を――殺したのです」

泣きながら婦人は云った。……復讐か。

しかし、その後信じられない言葉が続いた。

「警察を殺すためなら犯罪計画を立ててくれる組織があるのです。夫はそこの人と契約して……今回の事件に至りました。私も、手伝ってしまって……」

「なんてこった、絶対その組織を捕まえますから。宝月刑事、天野昌介の指名手配、お願いします」

自称科学捜査官は、はいはい、と二つ返事をして、

「かりんとうあげる。糖分足りないでしょ」

と僕の口に茶色い物体を押し込んだ。


ところが一日も経たない内に、天野昌介は死体で見つかった。

彼はその組織に使われただけだったのだ。

使い終わったから、後始末されたのだ。

本当にその刑事を殺したかったのは――その組織だったのだろうな。


でもこの件はこれで、解決したのは確かなことである。

解決――否、一つの事件を終わらしたのは、僕であることに間違いない。(了)


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