卵と鶏 どっちが先?
「なあ」
休み時間に坂田が声をかけてくる。
「ん? くだらない事だったらぶん殴るぞ」
勿論くだらないことであったとしてもそんなことをするつもりはない。
「卵と鶏ってさ、どっちが先なんだろうな?」
「そんなの卵に決まってるじゃん」
即答してやる。案の定くだらない事だった。
「なんで決まってるんだよ。わかんないじゃん」
これは参った。
坂田は常日頃からくだらないことをいう事で有名ではあるのだが、物わかりは良かったはずだ。それが今日の坂田はどうであろう。こんな当たり前のことすらも理解する事が出来ない。
しょうがない。小学生、いや赤ん坊でもわかるように説明してやる事にしよう。
「落ち着け坂田。頭を冷やすんだ。鶏は卵から生まれるだろうが。だから卵の方が先になくちゃ論理的におかしいだろうが」
これでいいだろう。
「だから何でだよ」
坂田はまだ反抗する。もしかして反抗期なのだろうか。
「その卵は誰が産んだんだよ」
またまたくだらないことを言う。まったく。今日の坂田は困ったものだ。
「そんなん鶏に決まってんだろうが。卵は鶏が産むもんだよ。大丈夫か、坂田?」
正直ちょっと今日の坂田は心配だ。
「じゃあ鶏の方が先ってこと?」
いやはや。これには参った。
「なんでだよ。鶏は卵から生まれたヒヨコが成長した姿だろうが」
「だからその卵は誰が産んだんだよ」
「鶏だよ」
「で、鶏ってのは?」
「卵から生まれたヒヨコが成長した姿だよ」
「で、その卵は?」
「鶏が産んだんだ…………あり?」
「ようやく理解した?」
坂田がにやにやしながら顔を覗き込んでくる。
「どっちが先なんだ? 分からねぇ!」
「それを聞いてたんじゃん」
坂田のにやにやが止まらない。
「まじだ。全然気が付かなかった……」
全然気が付かなかった。なんだこの感覚は。すごいもやもやするけど、なんかそれと同時に凄く爽快になった気がする。
「うわ~まじだよ。全然気が付かなかったよ。あれだあれ。なんだっけ? こう本当は凄く単純な事なのに実際に誰かにやられるまで分からないやつ」
なんていうんだっけ? これを思い出せないのももやもやする。
「ん? もしかしてコロンブスの卵の事か?」
今まで頭の上にかかっていたもやもやが春一番に吹き飛ばされた。
「ああ! それそれ! そうそう、コロンブスの――――!?」
「――――やっぱ、卵が先じゃん!」
コロンブスの卵って、育てたらコロンブスが生まれてくるんですかね?
誰か実際に育てたことがある方は、是非ご連絡ください。