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プロローグ
目が覚めた瞬間、喉の奥が焼けるみたいに熱かった。
四月の朝だというのに、Tシャツの下着までじっとりと汗で濡れている。窓の外は薄曇りで、春らしい柔らかい光が差し込んでいるのに、胸の奥だけがやけに冷えていた。
また、あの夢だ。
河原だったと思う。
水の匂いがした。湿った石と、少しだけ錆びた鉄の匂い。遠くで風に煽られた水面が揺れて、さざ波の音だけがやけに鮮明だった。
その向こうに、少女が立っている。
制服の裾が風で揺れていた。長い髪が顔にかかっていて、はっきりとは見えない。それでも、なぜか知っている気がする。
少女は何かを言っている。
口は動いているのに、声が届かない。
風が全部さらっていく。
俺は必死に何かを言おうとする。でも喉が詰まって、言葉が出ない。
ただ、涙だけが勝手に溢れていた。
少女は、ほんの少しだけ笑う。
それから、振り返る。
伸ばした手は、空を掴むだけだった。
――待て。
声にならない叫び。
目が覚める。
天井が見える。
鼓動がうるさい。
ここ最近、何度も同じ夢を見る。
見知らぬはずの少女に、何もできずに別れを告げられる夢。
なのに、目が覚めるたびに思う。
俺はあの子を、知っている。




