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“それ” は劣化チートおじさん  作者: バンブー
少年期編

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第52話 三代目魔王よ

「ガンテツ、アンタ可愛い孫娘に話してなかったのかい? コイツの親がとんでもない過ちを犯したことをさ」

「黙れ」

「この勇者が作った……いや、その時にはすでに勇者ではなく、魔王になっていたバカの話をさ」

「黙れと言っているだろ!」

「いいや、この子に自分の立場を分からせなければならないよ。君の親は魔王にそそのかされこの悪魔の武器を作り、世界を終焉に導く手前まで追い込んだんだ。だが、作成法を無理矢理消し去るやり方で自分の尻拭いをしたついでに逃げられちゃったけどね」

「……どういうこと。ベノム、本当にアンタはお父さんのことを知ってるの?」

「ああ、知ってるとも。奴の死に顔をこの目で見たからね」

「アンジュ、耳を貸すでない!」


 ガンテツはアンジュを下がらせる。だが、彼女は逆に抵抗した。


「お爺ちゃん止めて! アタシはお父さんのことが聞きたい!」

「アンジュ……」

「アタシは、今まで考えないようにしてたけど、ずっと知りたかったの! 事故で死んじゃった理由も! どんな人だったのかも! 全部知りたかったのよ!」


 アワアワするコハルを尻目に俺はベノムを窺う。ガスマスクで表情は見えないが、声の調子から、ほくそ笑んでいるが何となく想像つく。ベノムは続けた。


「アンジュ、君の父さんは自殺したんだよ」

「……え」

「拳銃と言われるこの武器を三代目魔王の知識を用いて、君の父さんと母さんは協力して作ってしまったんだよ。好奇心に負けてしまってね。そうだよねガンテツ!」

「……」

「その後、魔王軍は銃器を用いて人族へ報復した。多くの銃器は人々の命を奪い取っていったが、我々スカウトギルドと不本意ながら四代目勇者の助力によって拳銃の情報を広めることなく早期沈静化に成功したのさ」

「う、嘘よ! お父さんが自殺したなんて! だって死ぬ理由が――」

「十分にあるでしょ? 戦いが終わり、銃に関する情報が国々に広まりでもしたら、国家間のバランスが崩れるのは容易に想像出来る。情報を徹底的に削除しなければならないことも、君のお父さんは理解していたんじゃないのかい? 真意までは分からないけど」

「まさか……そんな……お父さんが……」


 アンジュはその場で崩れ落ちる。

 呆然とするようにしゃがみ込んでしまった。無慈悲にベノムは続けた。


「その後、どこから情報が漏れたのかこの国の奴等はアンタ等家族に狙いを定めた。内容はまさに拳銃の制作法を聞き出す為さ。ガンテツに、アンジュの母親を城に呼び出し、調査という名の尋問を行っていた。そうだよねガンテツ」

「……」

「さっきから黙ってないで、何とか言ってみなよ。アンジュの母親も酷い拷問を受けていただろ? それをアンタは横で見ていたんだ。全くこの国も腐っているよね。特に酷いのは拷問方法を知らないド素人の兵士達にやらせていた所だねぇ。奴ら加減のやり方がわかってないから、彼女も自殺に追い込んじゃってんだから――」

「……もう止めんか」


 静かにガンテツは呟く。

 それ聞いたベノムは言葉を止めた。

 しばらくの静寂の後溜め息を吐くベノム。


「とりあえず、分かったかいアンジュ? 私等スカウトギルドはこの国にアンタ等の店や人権ごと売却される前に買い取ったのさ。それでいて従来通りの経営もさせてやっていた。あのままそこの頭の固い爺さんがスカウトギルドを拒んでいたら次は君に魔の手が掛かっていたかもしれない。これ以上の温情はないと思うんだよね」

「……」

「しかし、私等にも限度がある。現状の継続をさせるには金が足りない。そこで私等はこの店自体を変え勇者の痕跡を隠そうと思っているのさ。もちろん君達は私等の配下についてもらうよ。身の安全も保証する。どうだい? 悪い提案じゃないだろ?」


 言い終わるとベノムが立ち去ろうとした。


「ベノム!!」


 俺はとっさに大きな声を上げた。

 気持ちの整理が付いていないが、ここで彼女を止めないといけないと思った。

 ベノムもこちらを振り向いた。


「頼むベノム! せめて時間をくれ!」

「時間をくれってどうする気だい? だって君は再建は無理だと思ったんだろ?」

「いろいろ覚えることで精一杯だったんだ! これから売り上げを向上させることに努めるつもりだ!」

「……ほー、本当にやれるのかい?」


 前世で上司や上の奴等に死ぬほど聞かれたこの言葉。今も変わらず俺は奥歯を噛みしめ縦に頷く。


「やるしかないだろ。ガンテツさん達の……アンジュの両親が残した店を潰したくない」

「イット……」


 アンジュは弱々しく呟く。

 反比例して、ベノムは笑った。


「ハハハ! そう来なくっちゃ! ようやくあの時みたいな本気の目になって来たじゃないか! お姉さんは嬉しいよ!」


 楽しんでいるかのようにベノムは指を2本立てた。


「そしたら、二ヶ月待ってあげるよ。その間に向上する兆しを見せてくれ」

「二ヶ月……再建するには新しいシステムを導入して広告も必要だ。お客さんに根付くかも改善しながらになるから二ヶ月じゃ足りない。ほとんど一発勝負だ。せめて三ヶ月――」

「いいや、二ヶ月だ。それ以上は待てないよ!」


 ベノムは俺の肩を叩き小声で呟く。


「お膳立ては終わりだ。次は君の勇者としての技量、見せてもらおうか。イット」


 そう言うとベノムは店から出て行った。

 全くもって質の悪いお膳立てだと思う。

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