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“それ” は劣化チートおじさん  作者: バンブー
幼少期編

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第24話 反逆の狼煙よ

 皆を牢屋の天井へ逃がす事は出来ない。

 ケンタウロスやアラクネなど多脚型の魔物が大きさ的に侵入できないからだ。

 ならどうするのか、というと簡単な話で正面から出れば良い。

 その為にも、まず地下牢の出入り口を警備している兵士を倒す必要がある。

 俺が天井から下を覗くと兵士が二人配置されて居た。


解析魔法(アナライズ)!」


 構造解析を行い、同じように天井を崩落させた。


「「う、うわああああああ!?」」


 二人の兵士が下敷きとなり、それと同時に俺とコハル、そしてベノムが飛び降り出入り口の鍵を開けた。辺りは崩落で起きた煙で、視界が悪くなっていた。


「な、なんだ!?」

「いったいどうした!?」


 異変に気付いた兵士達が恐る恐る近づいてくるがそれも罠だった。


「いくぞみんな!」


 煙に紛れ、通路を塞ぐように魔法を扱える魔物を出入り口の手前に忍ばせ遮蔽を取らせる。徐々に視界が晴れてくると兵士達もようやく現状を理解し始めた。


「だ、脱走だ! ぞ、増援を――」

雷壁サンダー・ウォール!」


 俺は先ほどマチルダが使っていた魔法を唱えた。そうすると、青い稲妻が走り蜘蛛の巣のように電気が埋め尽くす。


「ま、魔法!?」

「ぎゃああああああ!!」


 逃げ遅れた兵士に直撃し、そのまま気を失う。尚も稲妻は通路沿いに済んでいく。


「さすがね。本当にイットは勇者の力が宿っているみたい。私が少し呪文を教えただけですぐに使えるなんて」

「う、うん、ありがとう」


 横にいたアラクネが褒めてくれた。

 そう、先ほどこのアラクネなど魔法適正を持った魔物達に魔法の基礎をすぐに叩き込まれた。

 仕組みは簡単で魔法元素(キューブ)という名の六面立体パズルを完成させ、その完成速度に応じて火力や魔法の形状が特殊な物を生む。

 火や雷などの魔法属性は完成させた面の色で決まり、魔法の形状は適当な英単語を叫べばその言葉を模した形状に変化する。

 ただ、形状を変える単語は大昔の研究によって確立されているらしく、強い形状を生み出す単語はほぼ決まっているそうだ。これを全て覚えるのは、この場では無理だ。即興で教えてもらった物を使うしかない。

 因みに、マチルダが俺に教えた「小さな火花(リトル・スパーク)」は、逆に力をセーブし殺傷能力を押さえて発現させる魔法だったそうだ。


「もう一発だ! 氷矢弾(アイス・アロー)!」


 俺は数秒で魔法を構築させ、今度は矢の形状に圧縮した氷を投げ込んだ。

 氷に含まれる水分は稲妻を飲み込み、鋭い速度で逃げる兵士へ向かってき。


「グッ!? ぎゃああああ!!」


 突き刺さり、感電させた。

 この魔法構成速度が俺の魔法適正の骨頂でもだった。

 この魔法体系の極めつけは、魔法元素(キューブ)……六面立体パズルを完成させ発動させる。

 そして、完成とは()()()()()()()()()()()という仕様だ。

 俺は六面を完成させるのに20秒弱掛かる。普通の人より早いと思っているが、はっきり言って生死のかかった戦いでの20秒でも遅い。

 一面であれば、ちゃんと計ったことはないが数秒で完成させられる。

 その分魔法としては強くないようだが、人を倒す程度の威力はある。

 魔法を放ってすぐ、俺は入れ口の左右を確認し指示を出す。


「残り右に一人! 左に二人だ!」

雷弾(サンダー・ブラスト)!」

炎弾(ファイア・ブラスト)!」

風弾(ウィンド・ブラスト)!」


 俺の声に続いて、隠れていた魔物達が魔法を打ち込み牽制していった。


「うっしゃ! それじゃあ一暴れしてくるぜ!」

「気を付けていくぞ。危なくなったら退くことを忘れるな」


 ミノタウロスとケンタウロス等、肉体的に優位に立てる魔物は兵士から奪った剣と盾、そして後ろからボウガンの支援を受けながら安全圏を広げていく。

 様子を見てベノムはハーピーとサキュバスに指示を出す。


『今だ! 君達にだいたい掛かっているからよろしく!』

「久しぶりの空だ! 飛び方ちゃんと覚えてるかな?」

「うふ、さあ今夜は一番激しくなるわね」


 窓から二体は飛び降りていく。

 ハーピーは窓から黄色い月に向かって飛び立ち館の周りを滑空する。そして、歌を歌い始める。

 綺麗な声が響き渡るが、まともに耳を傾けていると眠気が襲い掛かってくる。

 ハーピーの歌声は呪歌と言われる精神を操る効果があるそうで、まともに聞いてしまう者、この状況では屋外にいる者達は強い睡魔に襲われ強制的に眠らされるのだ。

 一緒に飛んだサキュバスには、かなり高度な魔法が使えた。

 元々精神汚染への対抗が強いが、更に抵抗を上げる付加魔法(エンチャント)をかけ、ハーピーの護衛を任せたのだ。


『これで外からの増援を押さえられる。あとはこの館の中にいる分を倒すよ! よし、魔物には顔を見られても良いし、私も少し本気を出しちゃおうかな!』


 ベノムはマスクを外し、懐から何かを取り出した。


「え?」


 取り出したのは明らかに異質な物だった。


「け、拳銃!?」

「お! 知ってるね君。やっぱり異世界から来たって話は本当みたいだ」

「い、いや、なんか随分世界観に合ってない物が……相手、ボウガンとか使っていたのに」

「ああ……これは歴代勇者の遺物さ、魔法で弾が自動生成されるようになっているらしいから弾が無限に発射できる」

「な、なんだそれ!? そんな近代兵器反則だろ! それに歴代の勇者って――」

「そうさ、この反則みたいな代物も()()()って能力で作ったらしいよ。コイツはこの世にあってはならないからこそ、私が勇者を殺して奪い取ったんだ。こんな物、国のお偉いさんが見つけたらどうなるか分かるだろ?」


 マスクを外したベノムは悪戯な笑みでウィンクする。

 そのまま懐からもう一丁ハンドガンを取りだし、合計二丁の拳銃を両手で構えた。


「少しは自分の立場が分かったみいたいだね。その目に焼き付けておきな、これが君達勇者が持ってきた慢心と悪意の残骸さ!」


 ベノムは一気に駆け出す。

 ミノタウロスが相手している兵士達に考えているようには思えない程、彼女は乱射し続ける。火薬が弾ける音と焦げ臭さが辺りに広がっていく。


「なっ!?」

「ぐおっ!?」


 兵士達は血を吹き、次々倒れていく。

 黒い影から産まれる鉄の塊が、命を奪っていった。


「す、凄い……本当に何なんだ、あのエルフは……」

「逃げられる! 私達本当に逃げられるんだ!」

「いけいけ! 殺せー! 全員殺しちゃえ!」


 魔物達から歓声が上がる。

 彼女の常軌を逸した強さ希望が湧いているのだ。だが、俺だけはベノムの様子を見てそんな気が起こらなかった。

 彼女は、間違いなく俺に……いや、勇者に対して憎悪を抱いていた。

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