第181話 最後の切り札
何の素材かはわからないが、ここまで電気の接触を物ともしないと、対策がされているとしか思えない。
それに近接での攻撃方法がほぼブーツを使った蹴りで少し違和感も感じる。
磁力の力で拳銃を取られないように立ち回っているのか。
『対策はバッチリしてあるのさ』
激しく身体を回転するように足で攻撃し続けるベノムが言った。
『君、まだお姉さんを止めようとしてるだろ? どうして炎や混沌の魔法を使わない?』
「……」
『殺してしまうからか? 私を殺せてしまうとでも思っているのか?』
ベノムは俺が持っていたスタッフをマントで包み無理矢理引き寄せられる。
『それは慢心だぞイット』
「……ッ!?」
次瞬間、俺の眉間に銃口を突きつけられる。とっさに首を横へ傾けるとパンッ! っと躊躇無く発砲される。
耳の中から頭の中へキーンと衝撃が走る。頭痛と吐き気が込み上げ音が籠もって聞こえない。
至近距離の爆発音で聴覚をやられた。
耳から熱い物が滴る気がしたがそんなもの気にしている余裕はない。
『――……』
ベノムが何か言っているみたいだが、聞き取れない。
「うぐっ!?」
そのまま彼女は俺の脇腹へ蹴りを打ち込む。俺は足下がふらつきながらも必死でバランスをとろうとするが、更に発砲される。その瞬間、左太股に大きな衝撃が走る。
「があぁ!?」
足から血が噴き出し、熱く重い痛みが全身にかけていく。
それでも前を見ると、銃口はこちらを向いており俺は全力で横に飛ぶ。
「……っ!!」
横に飛ぶが避けきれず右腕に弾丸当たり反動でのけぞってしまう。
痛みを感じる暇も無く俺は床を滑りながらバックラーも回収し柱の裏に隠れた。
それでも安全では無い。
急いでバックラーを太股に当ての磁石を用いて弾丸を取り除く。
「うっ……」
傷を撫でるように弾丸を取り除く。
腕は貫通したらしく取り除く必要は無かった。
確かに俺は手加減していた。
未だにベノムを殺さないようにと考えながら動いていたが、殺そうとしてくる相手にそれは無茶なのかもしれない。
圧倒的な実力差がなければ出来ない。
「……実力差」
……やるしか無い。
もうお互い無傷で居られる状態ではない。そして長期戦は俺が先に倒れる。
なら、ベノムの手足を一二本犠牲にしてでも止めるしかない。
俺は取り出した回復薬を一気飲みし瓶を投げ捨てる。
瓶が弾で破裂したのを聞きつつ魔法を完成させ、その魔法元素を柱の陰から投げ込んだ。
「閃光爆弾!」
瞬間、ホーム中央で大きな光が広がった。
『――ッ!?』
聞こえ辛いが、ベノムの呻き声のような声が聞こえた。
空かさず俺は魔法を作り起動する。
「誘導拡散炎弾!」
手元の魔法元素が弾け、無数の炎の破片が柱を回り込むように弧を描きながらベノムを襲う。
彼女は交わしていくが、二つの弾が被弾。マントに火が移るが、彼女は即座に床で転がり消化してしまった。
だが、今ので少し時間を稼げた。
俺は前に出る。
「炎の吐息!」
魔法を展開し、今度は広域かつ持続力の高い炎の魔法を浴びせる。
『偉大なる祖よ。子らを守りたまえ』
耳は聞こえなくとも頭の中に響き渡るベノムの奇跡。声と共に彼女の周りに透明なガラスのドームを作り出す。
火炎放射は彼女を襲うが、ガラスの壁がそれを妨げる。
俺は間髪入れずに足を引きずりながら近づき魔法を展開。
「混沌螺旋撃!」
黒光りする円錐状のドリルを奇跡の壁へ突き立てる。
周囲の謎のエネルギーを回収しながらドリルが回転すると、ガラスが一気に砕け散る。
『……』
ベノムが無言で横に回避し、体制を崩したのを確認した。
「そこだ!!」
俺は拾っていた磁力バックラーを彼女に向けて投げ込む。
とっさに彼女は片手の銃を前に構える。それにバックラーは反応し、拳銃へ真っ直ぐぶつかり弾け飛ぶ。
『……ッチ』
聞こえる方の耳にベノム舌打ちが聞こえる。片手の拳銃を剥がす事が出来た。
だが、すぐに彼女のは腰から何かを取り出そうとしている。
彼女の行動に嫌な予感が抑えきれず、最終手段の準備を始める。
「氷壁!」
目の前に氷の壁を作り、魔法の準備をする。
ベノムは腰から新たな銃を取り出す。
名称はわからないが、先ほどの拳銃より大きく装填数の多そうなカートリッチが装着された銃。きっと、あれも魔改造された無限に弾を撃ち続ける物なのかもしれない。
だとしたらまずい……
『これはどうかな!』
ベノム言葉と共にダダダダッと火花と氷が砕け散っていく。
予想通りの連射性能の高い銃を振り回し、至る所へばらまくように彼女は撃ち続ける。俺は冷静に段取りを済ませていく。
「身体解析魔法!」
自身の身体の情報を開き操作し数字を大幅に変更していく。
なるだけ、自身の身体に負担をかけないように調整した値へ。
ガシャンッ――!!
っと、弾丸の雨に耐えきれなくなった氷が全て砕け散る。同時に調整を終え、俺は最後の言葉を告げた。
俺はまだ死ぬわけにはいかない。
切り札をここで切らせてもらう。
「身体の情報拡張!」




