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“それ” は劣化チートおじさん  作者: バンブー
成人編(気づき編)

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第172話 わだかまりよ

「ウチまでごちそうになって良いの? コハルちゃん?」

「いいのいいの! 食べていって良いから!」


 夜。

 ルドとシャルを無事送り、家に帰宅する頃には子供達が寝静まった夜となっていた。

 アンジュは元々夕食をここで取る予定だったが、ソマリに関してはスカウトギルドにしか戻る宛てがなくこの時間帯で女性神官を治安が良いと呼べない所へ放り込むのも良くないので、とりあえず俺達の家で夕食を取ることになった。

 テーブルに座ったソマリは、らしくないような俯き加減で話す。


「でも……何か申し訳ないかな。皆の楽しい時間を邪魔しちゃった訳だし」

「そうね。せっかくの坊や達との触れ合いの時間でまさか、頭の悪い馬鹿女達に殺されそうになるとは思ってなかったわ」


 彼女の横に座るアンジュが全く空気の読まない一言呟く。

 辺りが凍り付くかと思いきや、アンジュは続ける。


「でもまっ、話を聞くとソマリさんは悪くないわ! アタシがあのメイドに掴まれて居たところを体当たりして止めにきてくれたことは感謝しなくちゃね」


 と言いながらリーチの短い腕を伸ばし、ソマリの肩を軽く叩くアンジュ。

 それにソマリは顔が緩み頭を下げる。


「ありがとうございますアンジュさん。ウチは正直何も……」

「何言ってるのよ! アタシが首閉められてる所にバッ! と出てきてガッ! とアイツ掴んでダアアーッ! って二人で転がりながらシュババ! してガシッ! とこうね――」


 ジェスチャーを用いてソマリの戦いを語ってくれるアンジュ。

 コハルとソマリが小さい子供の話を聞くようにうんうんと相づちで返す構図となった。

 とりあえず、ソマリだけでもアンジュと和解できて良かったと思う。

 しばらくすると話が変わり、ソマリが聖職者である話になる。


「そう言えばソマリさんの聖印、サナエル教の僧侶なの? 珍しいわね」

「よく聖印がサナエル様のだってわかったねアンジュさん! 詳しいの?」

「こう見えても聖職者だけじゃなく冒険者は伊達に見てきていないからね。あと、身近にもサナエル教の聖徒がいるから」


 そう言うとアンジュがコハルを見る。

 その流れを察したソマリが驚いた様子でコハルを見る。


「え!? もしかしてコハルちゃん……」


 彼女の言葉に夕飯の準備を終えたコハルが頷く。


「皆と別れてイットと二人旅してる頃からだよ。イットがサナエル様からもらった天使の羽を使わないっていうから私勉強したんだ。一応サナエル教の正式な聖職者だよ!」


 その言葉にソマリは今まで見たことなかった程目を輝かせ、コハルの両手を握る。


「同士なの!? まさかコハルちゃんがサナエル教に入ってくれてたなんて夢にも思ってなかった!」

「えへへ……でも最初は、ソマリちゃんの活躍を見てて生理現象を押さえられるのは便利だよねって、よこしまな所から入ったんだけど聖職者の事とかサナエル様の事が知れて面白かったから続けられたよ! あと、やっぱり私バカだからソマリちゃん程の奇跡は未だに使えないけどね」

「そんな奇跡が使える数とかで偉くなるわけじゃないよ! それよりサナエル教の事に触れてくれただけでウチは嬉しい。今は世代交代してサナエル様が支える世界って認められたけど、未だ世界的には旧統治者の影響でガブリエル教がメジャーだからさ。一人でも信者が増えるのは嬉しいよ。何でも聞いてねコハルちゃん! ウチ、こう見えても旅を経て司祭階級になったんだよね!」


 水を得た魚のようにソマリは生き生きと語り出す。

 子供達が寝てる間に女性陣は話が盛り上がっていった。


「……ちょっとイット。どうしたのよ一人黙って」

「え? あ、ああ……ぼーっとしてただけだ」


 お茶を啜っていた俺にアンジュが話しかけてくる。

 本当は女性陣の話を聞き流しながら現実逃避をしていた。


「……」


 ルド達を断った。

 それは家族を守るために当然のことだった。



・僕達みたいな人間の為に作られたゲームの世界なんだよ



 だが、それと同時に俺は親友を見捨てたことになる。

 ……いや、すでにロイスと別れた時あの時から彼を見捨てて居たのかも知れない。

 このまま彼から逃げ続ければ、いずれ新たな転生者がサナエルから派遣され彼を撃退する。

 そういう流れにきっとなるはずだ。

 そうなるとロイスはきっと……


「イット?」


 コハルも気づき尋ねてくる。

 ダメだ。

 このままじゃ、せっかく友人達が集まったのに空気が悪くなる。


「すまない、ちょっと夜風に吹かれてくる」


 そう言って、間髪入れずに席を立ち外へ出る。


「え? ちょっとイットどこへ!」

「いつもの場所だから安心してくれ」


 そう言って俺はドアを閉めた。

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