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“それ” は劣化チートおじさん  作者: バンブー
青少年編(後編)

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第154話 蛮族達よ

 コハルに突き飛ばされ、俺は体勢を崩しながら倒れる。

 そのおかげで2匹の狼が向ける刃を避けることができた。

 すかさず俺は魔法元素を出し指ではじく。


氷柱(アイス・ピラー)!」


 1本の大きな氷の塊を生成し剣を咥えた狼1匹を突き上げる。

 キャンという叫びとともに狼は吹っ飛び雪の上へ転がり倒れる。俺は足底がスパイクブーツで斜めになった氷の柱へ昇り雪の中から抜け出す。

 雪は降るが、視界良好。

 すると視界に写る雪の中から見知らぬ半裸の少女が上半身だけを出していた。手には弓と矢を持ち、既に弦を弾いていた。


「マズイッ!」


 姿勢を低くしバックラーを構え魔法生成。


氷付加(アイス・エンチャント)!」


 即座に足下の氷からバックラーへと氷が伸ばされ、縦長の前方が見える透明の大盾が完成し飛んできた矢を弾くことができた。

 だがそれもつかの間だった。


「ウラアアアアア!!」


 雪の中から先ほどの斧を咥えた狼が、氷の上に立つ俺へと飛びかかってきた。

 咥えていた斧をこちらに投げ込み氷の盾上部に刺さる。

 そのまま狼はこちらへ向かい、形態を変化させると身なりがボロボロの少年の姿へと変貌する。


「シャウラアアアアアア!!」


 狼少年は空中で身を捻り、身体を軸にした回転蹴りを盾へ切り込んだ斧に放った。


「はっ!?」


 その人外離れした身体能力に俺は思わず声を上げる。それと同時に氷の盾が削り取られて砕け散った。

 氷の破片が宙で飛び散る中、少年の動きを庇いながら捉える。

 狼少年は氷とともにはじけ飛んだはずの斧を手に掴み空中で新たに構え直し、二度目の刃は()()()()でこちらの胸に向かってくる。

 こちらを完全に捉えたのを確信したように、俺と目の合った狼少年はニヒルな笑みを浮かべる。

 だが、彼はこちらに集中するあまり視界が狭まったようだ。


「やめなさいッ!!」


 更に雪の中から獣状態に変異したコハルが垂直に飛び出し狼少年の顎に向かって小さな額をぶつける。


「グガッ!?」


 不意を突かれた狼少年は直撃し宙で回転する。コハルは人間の姿へ変わり、お得意の蹴り技を繰り出す。狼少年も斧で防ぎ空中で交戦する。

 あとは彼女に任せ、俺も弓矢を放ったワーウルフの少女を制圧しなければ。


風流変動ウィンド・ミサイル・プロテクション!」


 風の魔法で自身の周囲に風の防御壁を作り弓矢への対策を図る。

 出てきたところを魔法で仕留めたいところだが幾分殺傷力が高くなってしまう。何とか今確認できている3体のワーウルフの無力化を計りたい。

 思考を巡らせながら魔法元素(キューブ)を取り出し構えていたとき。


「ウォオオオオオン!!」


 雄たけびとともに足下の雪から、見知らぬ図体が大きい狼男が現れ、氷の柱の根元に剣を振るう。ガラスが砕けたような音とともに、氷が叩き壊され俺の足下が傾き始めた。


「おっと!」


 足下が傾き出す。

 腰に差していたスタッフを引き抜き魔法元素の用意を行い周囲を伺う。

 すると何かが飛んできた気配を感じ、身体を捻りながら振り向くと、眼前に矢が向かってくるが風の力で軌道がそれ、あさっての方向へ通り過ぎていく。矢の飛んできた先には弓を持った狼少女がいた。


風付加ウィンド・エンチャント!」


 落ちながらスタッフに風の付加をかける。

 スタッフを俺の振るうと、空気の爆発が起こり俺の身体が落ちる軌道を変え、弾丸のように少女へと向かう。


「!?」


 少女は目を丸くして急接近する俺と目が合う。俺は片手を伸ばし少女を掴むと同時に地面の雪と激突。

 雪と氷は大きく舞い、2人で転がりながら制止する。

 すかさず俺は寝転ぶ狼少女の片腕を掴み上げ腕を後ろに回させ押し倒す。


「っく!!」


 組み伏せられた少女は背中向きだがこちらを睨む。

 《《人間の姿では》》人体の構造上関節を外さなければ抜け出すことはできない姿勢。

 だからこそ、次に彼女が何をするのか予想できる。

 俺は懐から液体入りの栓を閉めた瓶を取り出し彼女の眼前に見せつけた。


「変身するなよ! これは解眠薬アンチスリープ・ポーションだ! 変身すれば瓶を割る! お前等の鼻は使い物にならなくなる!」


 瓶を握った手の親指でポンと栓を開ける。俺にはまだ臭いが来ないのだが開けた瞬間狼少女の顔色が悪くなっていき、


「ウッ!?」


 その場で吐く。

 氷の柱を叩き切った狼男は、少女を助けようと狼の姿になり剣を咥え近づいてくるが、途中でポロリと咥えた剣を落として硬直した。目をこらすと、瞳を開き耐えているように身体を震わせている。

 やはりコハルと同じく、獣の姿になると嗅覚が敏感になるのだろう。

 これ以上苦しめる訳にはいかないので、瓶の栓を閉じ交渉に入る。


「聞いてくれ、これ以上の争いは止めよう! 仲間が傷つくだけだ!」

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