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“それ” は劣化チートおじさん  作者: バンブー
青少年編(前編)

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第124話 見下せよ

 口を奪われたルドは引き剥がそうともがき苦しんでいる。

 彼女達の口元からは血が滴り落ちており、少年に舌を噛まれ血を流しているのが隙間から見られた。

 もしかして……血を吸われているのか。

 そう考えるなら間違いない、コイツが目的の吸血鬼だ。

 俺が認識した刹那、見上げていたロイスが宙を舞い剣を抜き放つ。


「ルドを放せええええええ!!」


 彼の激昂と共に吸血鬼少年の腕と首に閃光が走る。

 少年は表情を変えぬまま、腕と首がズレ落ち、力が弱まったのか少年に拘束されていたルドを解放した。

 口から血を垂らしながらガチャンと落下し重々しく着地するルド。

 彼女は口から血と唾を何度も吐き捨てる。


「ワタクシの……ワタクシのファーストキスが……キスが……」


 泣きそうな表情で咳き込む彼女。

 吸血鬼少年の腕と首も地面へ落ちるが、残りの胴体は宙に浮いたままだった。

 異様な光景に得たいの知れぬ恐怖を感じるが俺は皆に呼びかける。


「皆無事か! こっちに来い!」

「無事なわけないですわ! こんな痴態を晒されて! ワタクシの……」


 ルドが騒ぎ、シャルは武器を手に取り構えているだけで俺の声は聞こえていないようだ……って思ったがシャルはこちらを無言で睨んだだけだった。

 聞いているけれど聞いていないのだ。

 ロイスも頭に血が上っているのか構えを解かずに硬直する。

 かといって、俺達が敵の懐に入りに行くわけにはいかない。


 ――処女の血はやはり美味である。


 突然空間に言葉がこだます。

 案の定、倒してはいなかった宙に浮かぶ少年吸血鬼の身体が再生し、元の状態に戻った。その姿は俺達より明らかに色白で赤い目、白い長髪の美少年だった。

 彼は口を開く。


「血の贄を運びにここまでの足労をまずは感謝する。味見をしたがとても良質の血で我は満足だ。ただ……」


 シャル、そして距離の遠いソマリとコハルを睨み付ける。


「穢れ酒共、まあ非常食ぐらいにはなるだろうな。だが、そこの女の皮を被った魔物が一匹混ざっているのはどういうことだ?」


 明らかにコハルのことを指している。

 そして、やたらと怒りのような感情を表していた。


「我が城に女の形をした紛い物を……小汚い犬を人族は献上しに着たというのか? 我を愚弄するのも大概にしろ」

「……何言ってるかわからないけど、凄く私馬鹿にされてるよね!」


 コハルも闘志が湧き上がってきたみたいだ。吸血鬼少年は続ける。


「非常に腹立たしい、いつもなら苦しまずに殺してやっているが、貴様等家畜共の叫び声が聞きたくなった」


 奴の言葉にロイスは言葉を返す。


「何か勘違いしているみたいだけど、断末魔を上げるのはお前だ! 僕達は吸血鬼を討伐しに着た冒険者だ!」


 俺達の簡潔な自己紹介と共に彼は飛び上がり、剣を切り上げる。

 剣の軌道が吸血鬼少年の身体を貫通したと思えた。

 だが……


「え?」


 少年は目の前から消える。


「筋は良いが甘い」


 ロイスの背後から突然現れる少年。

 彼は膝蹴りをロイスに刺しにいく。


「ッ!」


 ロイスは宙で身体を捻り片手に装着したバックラーで受け止める吹き飛ばされ、石柱に激突し陥没、煙が舞い上がる。


「ロイス様!!」


 地面で叫ぶメイドのシャルがボウガンで微動だにしない浮かぶ少年を狙撃し続けるが、全く当たらない。

 冷静さを失っているにしても動かない的に当たらないのはおかしい。

 すると、少年はいつの間にか一本の矢を手に持っており、表情を変えずにシャルへと投げ返した。


「シャル! 後ろへ下がりなさい!」


 顔色の悪いルドが前に出て盾で防ぐ。

 少年はゆっくりと降り立ち、盾とボウガンを構えるルドとシャルに近づく。


「抵抗するだけ無駄だ。魔物の配下を連れて来ようが人族は我に勝てない」

「調子に乗るんじゃありませんわ、このドヘンタイ男。ボコボコにしてから謝罪させて内蔵を引き抜いてさし上げますわ!」

「生きの良い血袋だ。お前の血は美味だった。気に入った、早く男共と魔物を殺して舌鼓したいものだ」


 そう言いながら彼女等に手を伸ばす少年だが、その手に閃光が走る。

 またボトリと少年の片腕が落ち、ロイスが目の前に立つ。


「ふざけるのも大概にしろ。僕は君を許さない!」

「……今のでかすり傷程度か小僧。面白い、少しばかり人族より硬い訳か」

「当然だ! 僕は魔王を倒す勇者だ!」


 激昂するロイスは、何故かベラベラと自分の身分を明らかにしていく。

 恐らく頭に血が上って冷静さを失っている。少年は彼の言葉に、眉をひそめる。


「ほほう、勇者か。と言うことは、我を殺しに着たというのも些か本当のようだな」

「最初からそう言っている!」

「これは失敬をしてしまった。あまりにも弱いもので気づくことが出来なかった」


 薄らと笑みを浮かべ、今度は礼儀正しく頭を垂れる。

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