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“それ” は劣化チートおじさん  作者: バンブー
幼少期編

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第9話 性奴隷達よ

 檻の中にいる魔物の子達に挨拶をして周り、牢屋の鍵を開けながら奥へと進んでいく。俺が牢屋の中を巡回している時は、牢屋を開けて地下牢内を自由に魔物達が徘徊出来るようにしている。

 ずっと閉じ込められていては気が滅入ってしまうと思い、俺は城主に許可を取らず行っている。まあ、地下牢から出られない以上、滅入った気が回復する事はないのだが……

 あのオッサンが巡回してくる前に、皆がちゃんと戻っていれば問題ない。

 バレなきゃ問題ないし、魔物の子達も秘密にしてくれている。

 あわよくば、誰かが出口を見つけてくれるかもしれないと思って数年経ってしまった。


 ここには約20人以上の女の子達が収容されており、言葉が通じる子もいれば通じない子もいる。

 集められた目的は皆一緒だ。

 そういう目的で集められた以上、回避できない問題もある。

 魔物だけでなく、普通の人間と生殖することの出来る魔物の女の子達が多く、時々妊娠させられ子もいる。産んだ魔物の赤ん坊や卵は例のおっさん達に回収され、その子達の行方は……わからない。

 こんな非人道的な環境を何とかしたがっている者や諦め受け入れている者、精神が擦り切れ塞ぎ込んでしまっている者……性奴隷として捕らえられた子達の心情は様々だが、決して明るく振る舞える子はいない。


 牢を開けられるのだから逃げるのは簡単にように思えるかもしれないが、そう簡単でもなかった。

 ここに連れて来られた魔物達のほとんどが温厚な性格なのである。

 話を聞くと、どうやら外の世界には魔物を狩る冒険者という人間達が存在するらしい。

 彼女達はその冒険者達に家族や同種族を殺され、捕虜になった子達が大半だった。

 要は戦闘に向いていない子達が集まっている以上、外の甲冑を着込んだ兵達に敵うはずもない。

 逃げるなら、このか弱い20人以上の女の子達を隠しながら逃げ出す必要があるのだ。



 そんなことを考える者はいる。

 ラミアのマチルダだ。

 彼女達の認識の中心にマチルダがいた。

 この牢にいる皆を励まし、必ず脱出出来るチャンスがあると言い続けている。

 もう何年も彼女が言い続けている言葉ではあるが……

 中にはその言葉をもう信じていない者もいるのだが、信じられる物を作らないと精神が参ってしまう者もいるから続けているのだとマチルダは言っていた。

 マチルダはこの牢へ一番始めに連れて来られたらしい。

 彼女は魔法が得意で、ここの魔物達を全て逃がすことを考えていると教えてくれた。


「……」


 マチルダはどうやって逃がすつもりなのか。そもそもここから逃げ出せるのか。彼女はあんなにも魔法のことを詳しく知っているのだから一人で逃げられるのではないか?


「……」


 考えると、訳が分からなくなっていく。

 やはり、そもそもこの異世界のことについて知らないことが多すぎる。


解析魔法(アナライズ)……か」


 そろそろ潮時か?

 この魔法があればこの地下牢から逃げられるかもしれない。

 俺には一応使命が渡されている。

 この異世界にいる魔王を倒すという目的でここに呼ばれた。

 本当はこんな所に捕らわれている暇はないんだ。一刻も早く抜け出し魔王を倒し、《《彼と》》共に世界を救わなければ……


「……ここの皆を置いていくのか?」


 思わず自問自答していまう。

 早く使命を果たさなければいけないのは分かっている。

 だが……この地下牢にいる皆を置いて行きたいかと言われたら、絶対に行きたくない。

 皆魔物という人間ではない異形の姿。

 言葉が通じない者もいる。

 ここで皆が酷い扱いを受けているのは分かっている。

 こんな思いを彼女達に抱くのはおこがましいし、不謹慎であることも。

 それでも――


「俺は、ここの皆が好きみたいだ。置いてなんか……行けないよな」


 最悪な環境に辛い状況だ。

 今の自分では助けてあげられない無力さで心臓が押し潰されそうになる。

 でも、現実世界に居たときより、ずっと居心地が良かった。

 自分の居場所……とでも言うのか?

 経験がないので実感が湧かないが、たぶんそうだと思う。

 いや、思いたいという願望なのかもしれない。そんな思考をしている自分に、思わず笑いそうになる。


「マチルダが一人で逃げない理由……何となくわかった気がする」


 マチルダは俺一人で逃げなさいと言っていたが、そのお願いは聞けない。

 逃げるなら、皆で逃げてやる。

 俺もそろそろここから出る算段を考えなくては……







 奥の牢屋にたどり着く。

 だが、何かがおかしかった。


「あれ? 誰も入ってない?」


 ワーウルフが入れられたであろう牢に着いたはずなのだが、その牢から何者かがいる気配を感じない。

 麻袋と毛布が散らかり、それらしき人影が見当たらなかった。


「も、もしかして……」


 脱走したのか?

 牢の中へ入り、中を見渡す。

 隠れられる場所なんてほとんどない。

 申し訳程度に作られた小さい穴の便所の中か、散らかる毛布の中……妥当に毛布の中であろうとめくってみると――


「わおおおおおおおおん!!」

「うわああああああああ!?」


 中から茶色い毛玉の塊が飛んできた。 

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