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第一話 

 小さい頃から人の感情が見えた。


 それが他の人には見えなくて、自分だけに見えていると知ったのは小学三年生のときだった。


 本来なら見えるはずがないものが見える。 

 しかも人の本心の大元である感情だ。

 何をどう思っていると細かいところまでは分からないが、感情が分かればある程度分かる。

 つまり、人の心を読めると言っても差し支えない。


 一見便利な能力に思える、はじめはそう思っていた。

 

 見える範囲には常に他人の感情が視覚にはいる。

 好きな人だとか、興味がある人だとか、読みたい人だけを選択して感情が分かるならものすごい便利だ。


 しかし、実際はそうはいかない。 

 謂わば、人の本心である感情が見えてしまうのだ。

 

 それは、相手が自分のことをどう思っているかも分かってしまうわけで。

 

 例えば気になっている人がいて、勇気を出して話かけたりして。

 笑顔で受け答えしてて、結構いい感じじゃね? なんて思いは間違いだった。


 感情を覗いたら、嫌悪を示す眉をひそめる顔をしていた。


 普通に怖ッ! って思ったよなあれ。

 これは友人の話なのでかなり居た堪れない気持ちになった。

 優しいところが好きだったらしい。

 優しくて好きだった人が、実は自分のことが嫌いだったってわけだ。


 マジで世の中知らなくていいことってあるな。

 人の本心とか最たる例。

 ほんとかわいそうだし、グロすぎる。


 ちなみにその友人は卒業式直前に告白して普通にフラれていた。

 生理的に無理だったそうだ。

 式中ずっと泣いてて、卒業してみんなと別れるのが悲しいって勘違いされてて面白かったな。


 話が逸れた。

 人の感情が見えると、クラスにいるときなんかもっと地獄だ。

 

 中一での出来事だ。

 クラス名簿の席は生きて来た中で奇跡的にずっと一番前の席だった。

 が、いろいろな要因が重なって一番後ろになったことがある。

 そんときはとにかく地獄だった。


 俺には人の感情が見えるのだが、それは人の近くにフヨフヨ浮いている球体に表示される。

 嬉しかったら嬉しそうな顔に、怒っていたら怒ってる顔に、悲しんでいたら泣き顔、みたいな具合に。

 そうして感情を判断するのだ。


 ただこの球体結構でかくて、サッカーボールくらいの大きさがある。


 想像してみてほしい。

 俺を抜いて三十九人のクラスメイト+先生で四十人。

 つまり、後ろから見たら四十人分の感情が見えるわけで、それらが俺の視界を埋め尽くす。


 何にも見えやしない。

 黒板なんて見えるわけないからノートだって取れない。

 誰が誰だか判別不可能だ。

  

 まあそんなわけで人の感情を読めることにはメリットばっかじゃない。

 知らなくていい本心を知ってしまうし、物理的に何も見えなくなってしまうからな。


 これだけじゃないがこういうことがあり、俺はこの能力がいらないと思っている。

 早く消えてほしいと、そう思ってる。


 大前提として、人間は誰しも感情がある。

 そんなのは至極当然で、みんな知っている事実だ。

 の、はずだったのにそれがとある女のせいで大前提が崩されてしまった。



「タマ、大好きだよ?」


 この言葉と態度だけの女によって。

 


◇◇

 

 

 「……———を終わりにする。全員明日もちゃんと来いよー。あ、五十嵐お前は補習だから逃げんなよ」

「うわ〜! なんで〜!」


 放課後。

 ホームルームが終わり、担任の言葉を皮切りに続々とクラスメイトが教室から出ていく。

 お調子者の五十嵐だけは玄関ではなくて、先生に連れて行かれたようだが。


 ちなみに先生は『(^。^)』という感情で、

 五十嵐は『囧』感情だった。

 先生は”愉快”だと推察できるが、五十嵐の感情今のお前を表すのに的確すぎでしょ。

 

 そして、俺は一人で帰宅するために机上の荷物をカバンに詰め込んでいた。


 部活には入らず学校には残る予定はないので早く家に帰れる。

 家に帰ったらゲームでもやろうかなと考えていると、廊下からクラスを覗いている女の子を見かけた。


 誰かを探すように辺をキョロキョロを見回し、俺の姿を捉えるなりこちらに向かってきた。


 てくてく、と歩いてくるその姿は小動物を連想させる。

 また、歩くたびに綺麗に波打つ黒の長髪には小動物のような可愛らしさとは別に美しさを感じる程だ。


 見かけたことのない女の子だな。

 別のクラスの人だろうか。


 そういえば最近転校生が来たとか聞いたな。

 うちのクラスじゃなくて他のクラスだったけど。

 高校二年になって転校か、何か事情でもあったんだろうか。

 

 というかやけに整った顔立ちだな。

 めちゃくちゃかわいいじゃん。

 アイドルって言われても遜色ないくらいかわいいと思うんだけどこの転校生。

 そんな子が俺に何の用だ?


 ……ん、というかあれ?


「環状永太くんであってるよね?」

「あってる。それで何の用?」

 

 には、と笑いながら彼女は言った。


「そーだね、じゃあちょっとついてきてくれる?」


 なんだこの女の子は。

 用件を聞いたのについてこいとは返答になってないぞ。

 一体なんの用事なんだよ、というか何しに俺のとこに来たんだ。

 ついてこいって何するんだ。


 そう思ったところで、廊下から複数人の声が聞こえた。


「ちょーイケメンだよねやっぱ!」

「普段はクールだけど、笑うとフローラルなんだよね」

「ごめん、その例えはよく分かんない」

「ねえちょっと声大きいって!」

 

 話しかけてきた女の子、それと廊下から見守る複数人の女の子たち。

 そこから推察されるものとは。

 あー、これは告白か、と納得したところである違和感を感じた。


 普通なら人が告白する寸前の感情は『(//∇//)』や

 『((( '-' ))) 』のような”恥”か”緊張”に大体はなるはずだ。

 というか大前提として感情が必ずあるはずなのに。


 しかし、今目の前にいるこの女の感情は。


「今からわたしと屋上にいかない?」










( ˙-˙ )( ˙-˙ )( ˙-˙ )( ˙-˙ )( ˙-˙ )( ˙-˙ )( ˙-˙ )( ˙-˙ )

( ˙-˙ )( ˙-˙ )( ˙-˙ )( ˙-˙ )( ˙-˙ )( ˙-˙ )( ˙-˙ )( ˙-˙ )

( ˙-˙ )( ˙-˙ )( ˙-˙ )( ˙-˙ )( ˙-˙ )( ˙-˙ )( ˙-˙ )( ˙-˙ )

( ˙-˙ )( ˙-˙ )( ˙-˙ )( ˙-˙ )( ˙-˙ )( ˙-˙ )( ˙-˙ )( ˙-˙ )

( ˙-˙ )( ˙-˙ )( ˙-˙ )( ˙-˙ )( ˙-˙ )( ˙-˙ )( ˙-˙ )( ˙-˙ )

( ˙-˙ )( ˙-˙ )( ˙-˙ )( ˙-˙ )( ˙-˙ )( ˙-˙ )( ˙-˙ )( ˙-˙ )

( ˙-˙ )( ˙-˙ )( ˙-˙ )( ˙-˙ )( ˙-˙ )( ˙-˙ )( ˙-˙ )( ˙-˙ )


      



        『 

          ( ˙-˙ )

              』




 何で無感情を表すんだ?

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