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第2話

『俺が姉を自殺に追いやったやつを殺す 』

 とは言ったもののこれからどうやって突き止めようか。


 シュガプロ所属のVtuber、キラに関わったいろんな人物に接触できる方法…

 あぁ思いついた、まずこの方法を実行するにはあの人に会いに行く必要があるな。




 俺はある人物に会うためにその人物の家を訪ねた。キラと仲が良かった人物の一人だ。俺が住所を知らないはずもない。


「なんだ、弟クンじゃないか。何の用~?」


 赤い…というよりかは少し濃い緋色のような色をした長髪が、彼女の堕落した生活のせいか乱れているように見えた。丸い眼鏡をかけ、徹夜のせいか目にクマがある。

 服装は白いタンクトップに短パンで、彼女のあふれんばかりの胸が俺を誘惑してくる。



 がしかし俺にはやらなくてはいけない目的がある。


「あなたと話がしたい」


 彼女の目が真剣になるのがわかった。


「……中に入ってゆっくり話そ」



 彼女の名前は「坂月明日(さかづきあす)」イラストレーターだ。そう、この人はVtuberとしての天乃キラの親、初めてキラがデビューする前からキラに関わっていた人物だ。

 彼女自身も登録者50万人越えの人気の個人Vtuberとして活動している。主に配信では絵の描き方やゲーム実況などをしている。




「そこらへん資料転がってるけど適当にどけて座って~ちょっとお茶持ってくるね」


 彼女が飲み物を手に持ちながら訪ねてくる。


「それで?話って?」


「キラの死について、そして今後の俺の人生を懸けた復讐に手を貸してほしい」


「……随分と単刀直入だね」


 その前に……と彼女は頭を下げた


「まずはキラが自殺したのは我々大人の責任であり、弟ク…いや晴には申し訳ないと思っている」


 そう、彼女も大人としてキラに関わってきた人物として責任を感じていたみたいだ。

 だがそんなことは実際どうでもいいのだ。一体だれがキラを自殺に追い込んだのか俺は解き明かす必要がある。


「明日さん、頭をあげてください。今からキラの死についてと俺の今後についての話をするので、よく聞いてほしいです」


 明日さんが頷いたのを確認したあと、俺はキラが死んでから今までのことを話し始めた。


 遺書の文。キラの自殺……それには裏があるということ。


「そんなことが……。それが弟クンがさっき言ってた復讐っていうことね」


「はい。そしてキラを自殺に追いやったやつを探すために協力してください」


「どうやって見つけ出すんだ?そのキラを殺したやつを」


 彼女の言う通り、そのキラを殺したやつをどう探すか。それが問題だった。

 Vtuberのアイドル活動というのは様々な関係者から成り立っている。シュガプロ所属のVtuber、キラのマネージャー、ディレクターなど。

 キラが日本一のVtuberにまで上り詰めたのはその関係者たちのおかげであり、つまりはその道筋にキラを殺したやつの手がかりがある。

 キラが辿った道筋をたどり、キラの関係者に接触する。


 つまり────────


 ()()V()t()u()b()e()r()()()()


「Vtuberになるぅぅ???」


「はい。俺がVtuberになるために協力してください。キラの死の真相を探るために必要なんです」


「ん~単刀直入にいうとそれはできない。し、キミがVtuberになるのも止める」


 俺は正直この答えには驚かなかった。理由はある程度予想できているからだ。


「キラのあの件があったんだ、キミがVtuberになってキラと同じように自殺に追いこまれてしまったら?そう考えると同じ過ちを繰り返さないために、私は止めるよ。」


「そうですか……なら俺は一人でもやります」


「だからさせないって」


 いつも無気力な明日さんが珍しく真剣な顔をしていると感じた。


「あなただって悔しくないんですか?キラを生み出したイラストレーターじゃないですか」


「イラストレーターである前に大人だ」


 力の籠った眼差しは、もう覆らないものだと確信した。

 仕方ない、この人が協力してくれないのは正直痛いが邪魔してくるなら……


「帰らせてもらう。協力してくれないやつと話している暇はない」


 そう言いながら、床に散らばった資料を踏まないように立つ。


「……キミは」


「?」


「キラにはなれないよ」


「……分かってますよ、それくらい」


 明日さんの言葉を背中で聞き流しながら、その部屋から離れた。

 俺は別に姉のような人気者になりたい訳じゃない。皆を笑顔にしたい訳でもない。

 ただ…………姉を殺した首謀者を殺せればそれでいい。

 それでいいんだ。



「弟クンはVtuberになれないよ。私もキラを生み出した人間として責任感じてるからね。何としても止めて見せる……」




 埃っぽい匂いが充満した部屋に電気を付け、ベッドに座り込む。

 俺は一旦家に戻ることにした。もう遅い時間だし、他に行く場所も無かったからだ。


 スマホの通知がなった


「……またか」


『ご冥福をお祈りいたします』『気の毒に』『元気出して』はもう見飽きた。

 しかし────────画面に映ったのは、俺の想像とは全く違うものだった。


「晴くんにだけは話しておかなくちゃいけないことがあるの。キラちゃんのことについて』


「……」


 息を吞んで、通知の溜まったメッセージアプリを開く。


 この人なら──────キラの死の真相を知っているかもしれない。そう確信できた。



 神海(なるみ) セロ……。

 天乃キラと一番仲が良かった、シュガプロのVtuberだ。

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― 新着の感想 ―
[一言] 先が読みたくなる内容ですね。 どうなっていくのか期待してます。
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