第1話
大人気Vtuberアイドル事務所である「sugerプロダクション」訳して「シュガプロ」は約40人のVTuberタレントからなる今最も熱いアイドルグループだ。
その中でひと際目立っているのが所属タレントの中でもYoutube登録者数がダントツで多いVtuberが、17歳でデビューし「シュガプロ」の中では最も人気であるとされている「天乃キラ」である。
星型に編まれたハーフツインの明るい青と黄色の髪とエメラルドグリーンの目が特徴的で、いわゆる女子制服が主な衣装になっている。また「キラキラの心!!天まで届け!!天乃キラで~す!!」という挨拶が人気の要因の一つである。
デビューから半年で登録者100万人を超え、今ではVtuberの中で日本一を争うほどファンの数が多く「シュガプロ」の顔とまでいわれており、彼女の配信は雑談やゲーム実況、歌枠など幅広く、特に彼女の歌は多くのファンを虜にしている。
さらにVtuberでは初となる武道館ライブが決まっており、日本のファンでなく海外のファンまでもが注目し、日本一から世界一のVtuberになるといわれていた。あの出来事が起きるまでは……。
天乃キラはある日突然この世を去った。
「自殺らしいよ。」
「悲しいなぁ好きだったのに。」
「キラちゃぁぁぁぁぁぁん!!どうして!!」
などSNSでは悲しみの声が鳴りやまなかった。
天乃キラという人気Vtuberがいなくなったことで、「シュガプロ」は多くのファンを失い、日本のVtuberの中で初である武道館ライブの夢も塵と消えてしまった。
なぜ彼女は死を選んだのだろうか?
「姉が……自殺……?」
「天野晴さんでよろしいでしょうか?」という言葉と共に警察がわざわざ家にやってきて説明されても、俺は受け入れる事が出来なかった。受け入れられる訳が無かった。
「ウソ……ですよね?冗談やめてくださいよ……」
頭の整理が現実に追いついたとき、心の中にぽっかりと穴が開いたような気がした。
『なんでVtuberなんか始めたの?』
昔俺は姉にそう聞いたことがあった。
『うーん……歌、かなぁ』
『歌?』
『いろんな人に自分の歌で元気になってもらいたいからだよ。憧れてる人がいるんだ。歌でみんなを笑顔にして、楽しませて、キラキラしてる人。あの人になるために私は一生懸命活動するよ!!!』
…………そんな姉が自殺した。
「これが現場においてあった遺書です。どうぞ」
気付けば、一枚の紙が突き付けられていた。
俺は今にも爆発しそうな感情を抑えながら、遺書を受け取る。
そして…………開いた。
「────────」
……この姉の死には裏がある。遺書を見た瞬間それを確信した。
そして、俺はこの先の人生の明確な目的を手に入れた。
『姉を自殺に追いやったやつを殺す』
このためなら俺はどんな手段を使ってでも……成し遂げて見せる。
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