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Another story
彼は何を思ったのか。
「これかぁ…」
彼女は空の試験管を咥える。
これから起こる様々な悲劇を知ってか知らずか。
この時、彼女はまだ確かに"正常な人間"であった。
それを可哀想だと思うと同時に、自分の好奇心や探究心を抑えられないでいた。
「んんっ!」
驚くような微かな声を最後に、彼女の普通の生活は、終わった。
僕が、終わらせた。
『君でしょ』
意識だけになった彼女が語りかけてくる。
『試験管咥えてると思ったら入口と出口のホースなんだもん。びっくりしたよ』
『ほんと君って気配消すのが上手いよね』
彼女は人の悪口を言わない人だった。
会社で嫌なことがあった時も、そうだった。
どんなひどい、喧嘩をした時も、そうだった。
人を貶さず、ポジティブな、人だった。
こんな、自分を、受け入れて、くれた。
なのに。
自分はその人の輝かしい未来を、
「奪ったんだ…」