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三章 15話 ヨガ

用語説明w

ルノー:魔族の男子でギア出身。冷静な性格で冷属性が得意


フォウル:肩乗りサイズの雷竜、ラーズの使役対象


「何なの、その顔?」


「いきなり何だよ?」


教室に入り、席に着くなりミィが言ってくる


「嬉しいのか困ったのか、はっきりしなさいよね」


「いろいろあったんだから仕方ないだろ」


中等部レフにぶん殴られて、フィーナやミィ、セフィ姉にかっこ悪い所を見られた

その直後に、港町でまさかのアトモスフィアの正体が判明


いいことと悪いことがまとめてやってきやがって、どんなテンションで過ごせばいいのか分からない


「ラーズ、鼻は大丈夫なの?」

フィーナが言う


「もう大丈夫。セフィ姉の回復魔法だからね」


鼻血が出た割に、もう痛みは無い

さすがセフィ姉だ


「私も回復魔法を覚える。怪我したら、ちゃんと治せるようになるから」


「怪我しないようにするのが先の気もするけどねー」


ミィが僕をチラッと見る

あぁ…、何も言えねぇ


「ラーズ、なんかいろいろあったらしいな。昨日も全然帰って来なかったし、何があったんだよ?」

ヤマトが言う


「だから何でもないって。セフィ姉の部活に入るための謎解きをしてたんだよ」


嘘はついていない

本当は、レフにやられて、何もできなくて、悔しくて…

情けなくて逃げ出しただけだけど



「ラーズ、聞いたぜ。中等部ともめたんだろ?」

ルノーが話に入ってくる


「もめたって言うか、一方的に絡まれたんだよ」


「俺たちも騎士学園の生徒だ。やっぱり舐められちゃダメだろ」


「向こうは中等部の、しかも三年だぞ? 勝てないって」


「力じゃ無理さ。だからさ、俺が知恵を貸してやるよ」


ルノー鞄からゴソゴソと小さな瓶を取り出す


「何それ?」


「エイダンが持ってた下剤だ。これを飲み物に混ぜて…」


「それなら女子が持っていった方がいいわね」


「お、ミィ、話が分かるな。後は腹痛が来たときにラーズが…」


「いや、とんでもない悪事に引き込むなよ!」



ガララ…


「お早う。今日も騎士を目指して頑張ろう」


タイミング良くラングドン先生が入って来て話が中断

今日の授業が始まった


あれ、ルノーってミィ寄りのイケイケ系だったの?



初等部三年生の目標は特技(スキル)の習得

二年生の目標が魔法発動だったように、一つだけ特技(スキル)を習得すればいい


初等部で魔法と特技(スキル)を習得する理由は、中等部からの職業(クラス)の選択のためだ


パーティでの役割であるアタッカー、ディフェンダー、サポーターの三つの要素と適正を把握する


自分が得意な技能は何なのか

魔法と特技(スキル)のどちらが得意で、どうやって伸ばしていくのか

それを見極めるために、初等部の三年間でひたすら二つの技能を習得するのだ



「最初にやることは魔力の制御と同じだ。輪力を感じること、第八感のアンテナを伸ばすこと。そのためには瞑想だ」


僕たちは椅子に座って瞑想をする

体内の状態を、自分の感覚を自覚すること、マインドフルネス

ただ一つ、魔法と違うことは杖を握っていないことだ


「輪力の瞑想は、魔力と違って魔力伝導率の高い物質の力を借りることはできない。なぜなら、輪力は霊体と肉体の力に依存するからだ」



魔力とは、精神の力である精力(じんりょく)と霊体の力である霊力の合力

この精力(じんりょく)という力は物質にも影響を与えやすいという性質がある


例えば、長年大切にしてきた道具には持ち主の愛着が宿り、付喪神という疑似的な妖怪になることが有る

これは、その道具に精力(じんりょく)が蓄積していった結果だ


また、ある物体に宿った生物の記憶や感情などを読み込むサイキック能力、サイコメトリーなどの特殊技能もある

これも、物体に蓄積した精力(じんりょく)を読み取っている


この精力(じんりょく)と親和性の高い金属のことを精神感応金属などと呼び、サイキック能力者の装備品に利用したり、思念誘導兵器などが設計されている


話が脱線したが、精力(じんりょく)が使われた魔力もまた、特定の物質との相性が良く、魔導士の杖などに応用されているのだ


しかし、輪力には精力(じんりょく)の要素がなく、生物の霊体と肉体の生体反応から生み出されている

よって、輪力の感覚には、生物の体を利用する他には方法が無いのだ



「…」


僕たちは、一生懸命に体と対話を試みている



七つあるチャクラの内、最初の第一のチャクラ、尾てい骨にあるムーラダーラに感覚を集中

チャクラ、つまり流れる輪力を感じ取る


「杖などの道具を使えない輪力は、魔力よりも知覚が難しい。だからこそ、初等部一年生と二年生の二年間をたっぷりと使って、先に魔力の知覚方法を学んだんだ」


ラングドン先生が言う



心なしか、身体がポカポカとして来たような気がする

尾てい骨…、お尻の辺りがムズムズする


これが輪力の感覚だったらいいんだけど…


「君達は、瞑想による魔力の知覚方法がすでに分かっている。次は、同じように輪力を感じ取ればいい」


魔法の習得を先に学んだ理由

それは、杖という魔力のブースト装置を使うことで、習得の難易度を下げることができるから

今度は、その習得方法、つまり瞑想を使って輪力の感覚を知覚すればいいというわけだ


って、いやいや!

そんな簡単に行くわけないって!

さすがに分かるよ!



「ヤマトはさすがだ。しっかりと輪力が練れている。そして、その輪力を移動することもできるようだね」


「はい」


「移動できるのは腕か。足にも移動させられるかい?」


「いえ、そこまでは…」


「よし、ヤマトは一歩進んでしまおう。輪力を足に移動させられるか試してみなさい」



おぉ…

魔法の時のフィーナやラシドみたいに、ヤマトは訓練内容を進めてしまった

あんなに魔法で苦戦していたのに


気が付くと、他の三組のみんなもヤマトを見ている

入学前から特技(スキル)を使えるというのは伊達じゃない


ラシドやフィーナも驚いている

二人は魔法が得意だが、まだ特技(スキル)にはピンと来ていないようだ



「ワシリーやハユンも特技(スキル)の方が得意そうだね。輪力の感覚があるかい?」


「これかなっていうのは」

「魔力とは違う感じの流れを感じます」


他にも、どちらかというと魔法が苦手だったクラスメイトが輪力が得意だったりする

この個性が職業(クラス)、つまり戦い方のスタイルに反映される

そして、得意なことを伸ばし、不得意をカバーするためにパーティを組むというわけだ


「前衛の騎士の使う特技(スキル)は、身体能力を上げることでモンスターにも負けない力を得ることができる。単純に身体能力を上げられることは、戦闘においては有利になるし、受けたダメージを減らすことにもなる」


身体能力を上げる

その方法は、特技(スキル)と補助魔法だ


特技(スキル)で自己強化し、強化魔法(バフ)で補強した前衛は、人間でありながらモンスターを越える力を発揮する

同様に、身体能力を強化したモンスターは凶悪であり、特に強化系(バフ)特技(スキル)を使うモンスターは多い



特技(スキル)は魔法に負けない技能だ。知識を得ること、そして制御することは騎士に必須。さぁ、瞑想に戻ろう」


ラングドン先生の言葉で、僕たちはまた座る


「よし、それじゃあ、少し気分を変えてみよう。ヨガと言って、輪力を感じさせる体操のような鍛錬方法があるんだ」


そう言うと、ラングドン先生がマットのような物を配る

通称ヨガマットと呼ばれるそれを広げて、僕たちは裸足で上に乗る


「片足で立ち、手を合わせて…」


「うわっ…!?」


「胡坐をかくように座って、両足の足の裏を突ける…」


「難しいよ!」


不思議な体勢を取りながらの瞑想

だが、ダイナミックな動きはバランスを意識し、より体内に意識が向く


僕たちは新しい刺激を受けながら瞑想を行う

地味な瞑想の反復、これが技能習得への近道だ




・・・・・・




放課後


僕は本校舎の方に一人で向かう


「さ、フォウル。協力してくれよ」


「ガウ…」


僕たちは森の中を歩く



秋も深まり、冬は間もなく

日が落ちるのも早くなった


夕暮れまでの少しの時間

僕はフォウルを背中のリュックに乗せる


こうして歩いていると、まるで大森林に戻ったかのようだ


「グルル…」


だが、あの時のような緊張感がフォウルにはない

それが伝わってくる


「お前、寝てるんじゃないだろうな!?」


「ガウ」


「…本当かよ?」


「ガァッ!」


「痛ぇー!」


僕たちは、暗くなるまで歩きまわったのだった



ムーラダーラ 三章 8話 チャクラ

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