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二章 36話 試験前日の出来事

用語説明w

ハビエル先生:魚人男性、初等部の学年主任の先生。厳しい指導で有名


進級試験はいよいよ明日

今日は午前中で授業が終わり、午後は試験準備のため校舎に立ち入り禁止


生徒は、最後の追い込みを行う



去年もそうだったが、校舎の教室が使えないため、生徒は図書館か寮の自分の居室でしか勉強が出来ない

すでに図書館は中・高等部の上級生で一杯のため、僕たち初等部は入れなかった


そこで、去年と同じくセフィ姉が声をかけてくれた

僕達は本校舎の地下にあるセフィ姉の部活、秘密基地のような神秘研究部の部室に連れて来てもらい、勉強を見てもらっている


困った時はセフィ姉ってことだ、本当にありがとうございます!


「さ、時間が無いから集中ね」


「はーい」


僕達は詰込み勉強を始める

これが正しい勉強法とは言わない

ただ、進級するために必要な手段ということは分かっている



「うぅ…」


ちなみに、ヤマトはさっきからひたすら魔力を練る瞑想を続けている

セフィ姉がヤマトの肩に手を置いて、アドバイスをしているのだ



「ほら、ヤマト。また集中が乱れて来たわ」


「はい…!」


「魔法の発動に必要なのは魔力の量と濃度。ヤマトに足りないのは魔力の濃度だけよ」


「…!」


セフィ姉が言うには、ヤマトの魔力量は魔法を発動するのに充分

それにもかかわらず魔法が発動しないのは、ヤマトが魔力の濃度を上げられないから


つまり、ヤマトの魔力制御がまだ未熟であり、ひたすら反復練習を繰り返しているのだ


「はい、そこで力を…、緩めちゃダメ、やり直し」

「いいわね、その調子。もう少しだけ付加をかけるから、負けずに杖に魔力を送り込んでみて」


「うおぉぉっ!?」


「ヤマト。力じゃなく、全身の魔力を手の先に集めるイメージよ」


ヤマトは変な声を出しながらも、ひたすら瞑想を繰り返している

セフィ姉の教え方には一切の妥協はない

そのため、ヤマトはずっと魔力に意識を注いでいる


本当は少しだけ休みたいんだろうなぁ…

セフィ姉、ストイックだから


そういう僕も、ヤマトに構っている余裕はない

試験範囲は膨大で、全然覚えられていない

少しでも多く覚え込まないと!



暫くして、そんな僕たちにセフィ姉が声をかける


「よし、頑張ったわね。少し休憩しましょう」


「ぶはぁぁぁっ」


その瞬間、ヤマトが床に大の字になる

汗だくで、まるで全力疾走をしてきたかのようだ



「ヤマト、大丈夫そう?」


「…も、もう少しの感覚がある」


「魔力の感覚があるなんて、凄い上達じゃない」

ミィが言う


「ヤマト、一緒に三年生になろうね」


「フィ、フィーナ…!」

フィーナの言葉に、ヤマトが感動している


分かる、分かるぞ

ヤマトは今、疲れすぎてバカになっている

だからこそ、ちょっとした事で感動してしまうのだ


それだけ頑張ったということだ

セフィ姉に絞られたとも言うけど



「はい、どうぞ」


「やったー!」

「頂きます!」

「おいしー…!」



セフィ姉が焼いてくれたスコーンと、入れたての紅茶

セフィ姉はお菓子まで焼けるのだ


「セフィ姉、ここでお菓子焼いたの?」


「神秘研究部の部室には、過去の先輩方が残していったものがあるから」


見ると、奥に小さいキッチンがあり、オーブンや小さい冷蔵庫などが置かれている


「確かに、この部室っていろいろなものがあるよね」


本棚や情報端末、家電にソファー

部室と言うよりも、本当に秘密基地みたいだ


「神秘研究部は、騎士学園創立時からあるレジェンド部の一つだからね」


「レジェンド部?」

「創立時って、この騎士学園って四千年前にできたんじゃなかった?」


「そんなことよりも、フィーナ、ミィ、ラーズは実技試験のおさらいをしておきましょう」


「え?」


セフィ姉は、部室の奥にあった丸まったシートを広げる

そこには魔法陣が描かれていた


そして、訓練用の魔導士の杖を渡してくる



「はい、私が持ってるから、このシートに魔法を発動させてみて」


「何、その魔法陣?」


「魔法が発動したかどうかを判定できる魔法陣よ。昔の先輩が、進級試験用に作ったものみたいね」


「えー、凄い」


昔の先輩たちも、僕と同じように進級試験で四苦八苦していたってことか



最初にフィーナが杖を持つ



ボボォォォッ!


「ピンポーン!」



魔法陣から小気味いい音が響く


「さすがフィーナ。ちゃんと火属性魔法として発動しているわね」


「あれが合格の音なのね」

次はミィが杖を持つ



バシャァァッ!


「ピンポーン!」



「やった!」

ミィが喜ぶ


水属性魔法だ

水流が杖から吹き出して、まるでホースみたいだった



「よし、次は僕だ」


「頑張って」

僕はミィから杖を受け取る


はっきり言って、自信はある

大森林で僕が生き抜いたのは、この風魔法があったから

ディノサウノロイドの隙を突けたからこそ、僕は喰われずに済んだんだ


集中、魔力を練る



ブオォォォッ!


「ピンポーン!」



「よっし!」


僕の風属性魔法も成功

突風が噴き出して、セフィ姉の持つ魔法陣のシートを揺らした


「三人とも実技試験は大丈夫ね。ミィとラーズは学科試験の勉強に集中しなさい」


「はーい」

「…」


やっていなかった自分が悪いのだが、試験範囲はまだまだ終わらない



「さ、ヤマトの番よ」


「は、はい…」


ヤマトは、セフィ姉に言われて自信無さげに杖を持つ



集中、ヤマトが魔力を練っているのが分かる

魔力が属性と言う法則を得て変化を起こす


そして、魔法として発動…



コンッ…


「ブッブーーーッ!」


「…」



小さな小石のような物が杖から飛び出し、魔法陣に当たって跳ね返る

魔法陣からは無情な音が響き渡った


「ヤマト、魔法は発動しているわ」


「セ、セフィリアさん、でも…」

ヤマトが泣きそうな顔になる


「ちゃんと魔力が物質化している。定義的には土属性魔法よ。後は、魔力の濃度を上げるだけ。焦らずに続ければ大丈夫」


「はい…」


「ヤマト、僕達も付き合うよ」

「ほらほら、泣きそうになってないで」

「一緒に進級しよ!」


「お、お前ら…!」


僕達はヤマトを励ましながら、試験に向けて最後の追い込みに入った




・・・・・・




その後は、各自の部屋で試験勉強

だが、一人だと集中ってのは続かないもんだ


「ラーズ、気分転換しようぜ」


「あー、それならちょっと付き合ってよ」


ヤマトが僕の部屋にやって来た

ちょうど、僕も気分転換したかったところだ


これを世間では逃避と言う

やかましいわ!



「どこに行くんだ?」


「ちょっと実験だよ」


「実験?」


「僕が大森林のキャンプから持って帰って来たリュックの底に、変な粘土みたいなものがあったんだ」


森の牙のキャンプから持って来たリュックサック

その底にあった、レンガのような形の柔らかい粘土のようなもの


騎士学園に戻って来てから気が付いたが、この粘土には図入りの説明書が付いていた

図から、付属する棒を粘土に差し込んで使うことは分かるが、何が起こるかがよく分からない



「それ、デンジャーって書いてないか?」


「そうなんだ。だから、何なのか気になるんだよ」


「ただの粘土が危険って、意味が分からねーな」



僕たちは何が起きても大丈夫なように、清掃工場の隣の空き地にやって来た

前に、セフィ姉と魔法のじゅうたんの切れ端で魔力制御の訓練をした所だ


「この粘土に、この細いのを刺せばいいんだな」


「うん。その後、二分後に何かが起こるってさ」


僕たちは、空き地の真ん中に粘土を置き、尖った棒を刺す

デンジャーの表記が怖いので、僕達は用心して粘土から距離を取る


何が起こるんだろう

実はマジックアイテムで、変な魔法でも発動するのだろうか?


「そろそろ二分だ」


「おう」


僕たちが見守っていると…




ドッバァァッッッン!!!!



「うおっ!?」

「…っ!?」



衝撃波で砂埃が巻き散らされる



耳をつんざく轟音




…突然、さっきの粘土が爆発した





………






……











学園町の消防団が出動し、煙を上げている粘土があった場所を取り囲む


清掃工場の職員の人達は念のために避難


町は大騒ぎになった



「こ、こ、このバカ者が! いったい何をやらかしたんだ!?」


飛んできたハビエル先生に怒鳴られる


「いえ、その…。これを説明書通りに使ってみただけで…」


「まぁまぁ、ハビエル先生。落ち着いて」


ラングドン先生が、なだめながら説明書を受取る



「…ラーズ。その粘土、まだ持っているのかい?」

しかし、説明書を読んだラングドン先生の眉間にしわが出来た


「いえ、一つだけでした。あの、あれって結局何だったんですか?」


「恐らくだが、C4だ」


「C4?」


僕とヤマトは顔を見合わせる

何それ、暗号?


そんな僕たちに、ラングドン先生が教えれくれる


「C4と言うのは、軍用のプラスチック爆弾だ。刺したという尖ったものが信管だったんだろう。…下手すると死んでいる、怪我がなくてよかった」


「え…!?」


ば、爆弾だって!?

あの粘土みたいなのが!



「他に、大森林のキャンプから持って来た物はないね?」


「えーと…、後はこのパイナップルみたいな物くらいしか…」


僕が濃い緑色の手持ちサイズの置物をリュックサックから取り出すと…


「わ、渡しなさい! ラーズ、森の牙から持って帰って来た物は勝手に触っちゃダメだ。分かったね?」


「は、はい、ごめんなさい!」



その後、僕とヤマトは先生と一緒に町の人達に謝りに行き、学園長室に説明に行き、丸一日試験勉強が出来なかったのは言うまでもない




清掃工場 一章 28話 試験対策

リュックサックの中身 二章 30話 大森林七日目



次話で二章終わりです!


めでたく陽性でした…

四日間、倦怠感が続きましたが一気に症状が消えました

皆様も健康にはお気をつけ下さいませ

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― 新着の感想 ―
[良い点] たまに無鉄砲なとこが怖いなw デンジャー表記が無かったらどうなってたことか [一言] 毎回楽しく読ませてもらってます ご自愛ください
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