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一章 3話 休日


入校してからの数日間があっという間に過ぎた

今日は、やっと休校日


僕とフィーナが初等部の校舎の入口で待っていると、急に周囲がザワザワし始める


「お、おい、あれって…」

「すごい…きれい…」

「何で初等部なんかに?」


生徒達の注目を集めているのは、長く美しい金髪を束ねた中等部の上級生

名をセフィリアと言う


入学式の後に見た映像

たった一人でダンジョンに挑み、モンスターを倒していた天才


学業、戦闘、容姿と全てを極めた有名人だ



「ラーズ、フィーナ、お待たせ」


「セフィ姉!」

「やっと会えたね」


セフィリア・ドルグネル

ウルにある龍神皇国という国の貴族の令嬢だ


僕の家であるオーティル家はただの一般家庭だが、何代か前に貴族に嫁いだ女性がいるらしく、ドルグネル家とは遠い遠い親戚にあたるらしい


そのため、貴族の令嬢でありながら、僕とは小さいときに何度か遊んでくれていた

そのため、僕はセフィ姉と呼んでいる


有名なドルグネル流剣術・槍術でも有名な家柄で、セフィ姉自身も幼いころから習っている

そのためか、セフィ姉の実力は圧倒的…、らしい


ちなみに、フィーナが僕の住んでいた町にやって来たのもセフィ姉が連れて来たから

それで、僕もフィーナと仲良くなったんだ



「それじゃあ行きましょうか」


「うん!」「やった!」


今日はセフィ姉に学園の外、学園島の町を案内してもらう約束をしていた


本当はもっと早くセフィ姉と遊びたかったのだが、初等部と中等部は寮の場所が違うためなかなか会えなかった



「騎士学園島の町は大きく分けて二つ。一つは騎士学園がある学園町、つまりここね」


騎士学園の校舎の周りは、学園を維持するための施設が集まっている

畑の管理、倉庫、幻獣やモンスター、家畜などの牧場、武器や防具のメンテナンス工場などが多い


更に、騎士学園の他に七つの学校、島の研究施設などがあり、学園町は学園島の名の由来ともなった教育と研究のための町となっている



「そして、もう一つが港町。ブリトンの内地と行き来する船が着く学園島港よ」


「わー、大きな町だね!」


騎士学園は小高い丘の上にあるため、港への坂道を下って行くと港町の全景が良く見える


「港町には何があるの?」

フィーナが聞く


「何でもあるわよ。お菓子屋さん、ゲームセンター、本屋、お土産屋…。港町は観光地化していて、内地からの観光客も多いから」


「私、お菓子食べたい」


「いいわね、行きましょ? あ、でも、その前に…」


「どうしたの?」


セフィ姉が背中に持っていた長い袋を降ろす


「ラーズとフィーナにプレゼントを持って来たの」


「え、何?」


セフィ姉が、袋から一本の剣を取り出して僕に差し出す


「これは私が使っていた剣、ドラゴンブレイドよ」


「え…、これを僕に?」


「ええ、入学祝いに。ドラゴンキラーの特性を持つ霊剣の一種で、ドラゴンへのダメージが大きくなるわ」


「霊剣って…、霊的構造を持つ武器や防具って、凄く高くて貴重だって聞いたけど…」

フィーナがドラゴンブレイドを覗き込む


「そうね。でも、私はこの学園で双剣に武器を変えたから、ロングソードはあまり使わなくなったの。だから、ラーズに使ってもらえたらなって」


「う、うん。よく分からないけど、僕、セフィ姉がくれた剣だから大切にする!」


憧れのセフィ姉からのプレゼント

嬉しいいに決まってるじゃないかぁぁぁぁっ!


ひゃっほう!

大事にしよう!!



「よかった、喜んでくれて。次はフィーナね」


「え、私にもあるの?」


「もちろんよ。フィーナはまだ体が小さいから、武器よりもこれがいいかなって」

セフィ姉が小さなお花を取り出した


「わ、かわいい。これって…、髪飾り?」


「そうなの。これはハオマの花といって、かわいいだけじゃなくピンチの時に持ち主を守ってくれる効果があるわ」


「へー、凄いね」


「さ、つけてあげる」


セフィ姉がフィーナの髪にハオマの花をつける

漆黒のフィーナの髪に、黄色いお花が咲いてみたいで目を引く


「ラーズ、どう?」

フィーナが僕を見る


「うん、かわいい。よかったな、フィーナ」


「うん!」


フィーナも、セフィ姉相手に人見知りは無い

幼馴染の特権だ


「さ、おしゃれもしたし、港町でおいしい物でも食べましょうか」

セフィ姉が言う


僕たちは、港町に向う坂道を降りて行く


すれ違う学生や街の人が、みんなセフィ姉を振り返ってチラチラと見ている

男も女もだ


だってセフィ姉、綺麗だもんな

陶器のようなきれいな肌、彫刻のように整った顔、輝く金髪


そして、セフィ姉の真っ青な瞳

セフィ姉の瞳は、左右で少しだけ青色の濃さが違う

セフィ姉の右目は「龍眼」と呼ばれるちょっと変わった眼なのだ


別に特別な効果があるわけではないのだが、超絶美人であるセフィ姉の龍眼は妖艶さのアクセントになって、その魅力を引き上げている


ちなみに、僕の目も青色で左右の濃さが違う

僕の左目は「竜眼」と呼ばれる色で、セフィ姉の色とはまたちょっと違う

セフィ姉とおそろいみたいで、僕の誰にも言えないちょっとした自慢だったりする



「あ、ラーズ、フィーナ。いい所に…」


不意に、セフィ姉が足を止める


「どうしたの、セフィ姉?」


僕がセフィ姉を見上げると、フィーナが横を見る


「…何かいる?」


「ええ、ラーズとフィーナの初モンスターハント、やっちゃいましょうか」


「えっ!?」 「ハント!?」


驚く僕とフィーナを連れて、セフィ姉が道を逸れて行く


「この学園島には、訓練のために島の外からモンスターを連れて来たりしているの」


「連れて来てるって、危なくないの?」


「安全管理は先生や常駐している騎士の人たちがやってくれてるから大丈夫なんだけど。たまに、ね…」


セフィ姉が見る先には、ゆっくりと動く人がいた



「あ…あぁ……ぅあぁぁ………」


「あの人、何か言ってる…?」

フィーナが、怯えながら固まる


僕たちがゆっくりと近づくと…


「ひっ…」「きゃあぁぁぁぁぁっ!?」



振り向いたその人は、体が朽ち、半分骸骨になっていた


「あれは低位のアンデッド、ゾンビ。霊力が弱すぎて、結界を越えちゃったみたいね。その分、意思も攻撃性も無さそうだけど」

セフィ姉が落ち着いて言う


「え、ゾンビって、昼間から…!?」


「でも、放っておくと、魔属性の魔力を取り込んでゆっくりと活性化していく。そして、ブラックゾンビやグールにレベルアップしていっちゃうわ」


「ど、ど、どうするの…?」

フィーナが顔をしかめる


ここまで近づくと、腐った臭いが鼻をつく



「ほら、二人でやってみなさい。初等部の一年生でモンスターハントなんて、普通はできないのよ?」


セフィ姉が笑顔で言いながら、フィーナに訓練用の魔導師の杖を渡した


「…」「…」


僕とフィーナは顔を見合わせる

そして、意を決して僕が前に出る


剣士の僕が前衛、魔導師のフィーナが後衛

オーソドックスな隊列だ



「うあぅぁっ…!」


「うわぁぁぁぁっ!?」

「キャーッ! キャーッ!」


突然大きい声を出したゾンビに、僕とフィーナは全力で叫ぶ


「ラーズ、大丈夫だからドラゴンブレイドで斬ってみなさい。霊的構造を持つ霊剣なら、意外とダメージが通るから」


「セ、セフィ姉の剣が汚れちゃうよ!」

「く、臭い…、臭い臭いー!」


そんな僕たちを眺めるゾンビ


「ぁうぁうあー……!」


「ぎゃあぁぁぁぁっ!」

「イヤー! キャーッ!」


また大声を出すゾンビ

お前、まさか楽しんでないだろうな!?



「ふぅ…」


ボシューーーー!



そんな僕たちを見て、セフィ姉が白い光を発する

焼き尽くされるゾンビ


聖属性の投射魔法だ、凄い!



「ま、最初だからしょうがないわね。ラーズ、怖がっててもずっとフィーナを守ってたのは偉かったわ。フィーナも逃げなかったし」


「う、うん…」「怖かった…。ごめんなさい、セフィ姉」


「いいのよ、ゆっくりできるようになれば。さ、甘いもの食べに行きましょ?」


「うん!」「僕、ゲームセンター行きたい!」



なんやかんやで、僕たちは休日を満喫したのだった




セフィ姉 序章 1話 上級生の戦い

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