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二章 22話 大森林見学1

用語説明w

魔大戦:魔王と呼ばれる存在と人類の国との戦争。過去に幾度も起こっている


エイダン:エルフの男子、ギア出身

ワシリー:ドワーフの男子、ギア出身


学園島の港に、内地と島との定期船「人生の選択」が到着

僕たち初等部の二年生は、先生についていく形で次々と乗り込む


「行ってらっしゃい、みんな」


「行ってきます、セフィ姉!」

「お土産買ってくるね」


見送りに来てくれたセフィ姉

美しい金髪と優雅な所作が、他の生徒や港町の人達から注目の的になっている


「行ってきまーす!」

「行ってきます…」


ミィとヤマトの元気さが真逆だ

同じ言葉なのに全然違う意味に聞こえる


「何なのよ、ヤマト。久しぶりに島を出られるっていうのに」


僕たちが学園島を出られるのは、夏休みと島外学習などのイベントの時だけ

その特別な機会にも関わらず、ヤマトの顔が暗い


「ミィはいいよな…。もう、魔法が使えるんだから」


「あー…」


結局、この島外学習までに魔法が成功しなかったのはヤマトとサヘルとハユンの三人

でも、サヘルとハユンは不完全ながら発動に成功していて、まだ一度も発動できていないのはヤマトだけなのだ


大森林から戻ったら、すぐに試験期間となる

学科試験の勉強もしなければいけないし、試験期間内に魔法の発動も成功させなければならない

つまり、退学の恐怖が大きくなっている


「ヤマト、一回リセットしようよ。この旅行を楽しんでさ、戻ってから集中した方がいいって」


「そうだなぁ…。確かに、最近は毎日補習してもらってたからな」


「ヤマト、魔力の量は凄く増えてるし、もう少しだと思う。あまり心配しないで」

フィーナが言う


「そうなのか?」


「うん、本当だよ。考えすぎないで」


「ほらほら、そうと分かったら楽しむの! ここで悩んだって魔法はうまくならないんだから!」


ミィがうなだれているヤマトを甲板に押し出した


「わ、分かったよ…!」



すでに小さくなった学園島を見て、やっとヤマトもリセットスイッチが入ったようだ

海風の中、周りを見渡し始める


「ヤマト、見えて来たぞ」

エイダンが言う


「おらぁっ!」


「うわぁぁっ、押すなってヤマト!」


ブリトンのノヴァ―ル港に着くころには、いつものヤマトに戻っていて、エイダンやワシリー達と笑い合っていた


「…ヤマトって単純よね。よかったけど」

ミィがため息をつく


「心配してたんだ? ミィ、たまに気を使う時あるよね」


「たまにって何よ、失礼ね」


「ミィ姉、女子寮ではいつも心配してるんだよ? ヤマトの魔法とか、ラーズが喧嘩したときとか」


「ちょっ、フィーナ! 何でそういうこと言うの!?」


「…こずるいくせに、そういうのってずるいよな」


「な、何言ってるのよ!」


フィーナの不意打ちにミィが本気で動揺

うむ、これが萌えってやつだろうか




・・・・・・




ブリトンのノヴァ―ル港に到着

船を降り、待っていたバスに乗り込むと、懐かしい人との再会が待っていた


「皆さん、お久しぶりです! 去年の島外学習でもガイドをさせて頂きました、マイリ―です!」


ガイドのマイリ―さん

サイバネ手術を受けたサイボーグの女性だ


「はい、これを見て下さい!」


全員のPITに、一枚の画像が送られた

なんと、去年の島外学習の時にバスの前で撮った写真だった


「皆さん、一年で驚くほど成長していますね。え、私ですか? 女性は二十歳以降は年を取らなくなるんですねー」


マイリ―さんは、当たり前だが全く変化がない

そんなサイボーグジョークを聞きながら、僕たちのバスは大森林へと向かう



「はい、一年振りとなりますのでよく見て下さいね。あちらの海の上に見える巨大な船のような物は箱舟と呼ばれる環境操作用の施設で、台風や津波を弱めることができます。そして、反対側の空にまっすぐ伸びているのが軌道エレベーター。宇宙まで続いている高ーい塔です」


マイリ―さんが、去年と同じようにガイドを始める


「皆さんは、世界拡張と言う言葉を聞いたことが有りますか?」


しかし、今回は行き先が違う

マイリ―さんのガイドは大森林の説明と移っていく


「世界拡張とは、二つの意味で世界を広げようとする試みですねー」



世界拡張

科学拡張と魔法拡張の二つの手法で世界を拡張しようとする考え方だ


科学拡張とは、主に科学理論を利用する拡張方法


海の中や深海に居住区を作ったり、エネルギー採掘用の施設を建設する海洋開発

宇宙へと進出し、ウルとギアの二つの衛星に拠点を建設したり宇宙ステーションを建造したりする宇宙開発などがある

その最たるものとして、太陽系第五惑星の衛星の一つに進出した宇宙拠点ストラデ=イバリがある


そして、魔法拡張とは、魔導法学の理論によって世界を拡張する方法


具体的には、空間属性や霊属性、氣属性を使って次元を超える拡張だ

このペアの次元から半歩ずれれば幽界、更にずれていけば天界や魔界と呼ばれる世界へと行きつく

そこは超高次元生命体が存在する世界であり、そこから知識や力を持って帰っることに成功した例も僅かに存在する


また、人類は次元を越えてイグドラシルと呼ばれる異世界と邂逅しており、すでに交易も行われている



「科学拡張と魔法拡張、この二つを合わせて世界拡張と呼ぶんですねー。では、今から皆さんが向かっている大森林と、この世界拡張にどんな関係があるのか?」


マイリ―さんが僕たちを見回す

もちろん、理由は全然分からない



「………その答えは、人類に残されたペアの未開の領域は秘境と呼ばれる地域だから。そして、秘境とは人類が手を出せない領域でもあります。つまり、私たちがこれ以上にペアでの生息圏を広げるためには、宇宙や別次元に世界を拡張するしか方法が無いということです」


マイリ―さんは、たっぷりと間をとって続ける



「大森林は他の地域よりも魔素濃度の高い、秘境と呼ばれる環境です。多くのモンスターが生息し、更に、奥地にはとんでもない存在がいると言われています」


マイリ―さんの声色と雰囲気に、生徒達の表情が強張る


「なんと、その存在とはSランクともSSランクとも言われています」


Sランクとは、人類が誇る最強兵器、宇宙戦艦クラスの戦闘力を持つ存在

SSランクとは、あの伝説の神らしきものの存在のランクだ


そんな存在が大森林の奥地にいるだと!?

怖いんだけど!



「過去に存在が確認されているものでは、静かなる巨人、名もなき魔人、朧げなる精霊王、深淵なる(うろ)、瑠璃色の古龍…など。これらが、もし一匹でも大森林を出てくれば、人類との総力を上げた世界大戦、新たなる魔大戦の始まりになると言われています」


「…っ!?」


「しかも、そんな存在が闊歩する秘境は、なんと大森林だけではありません。ウルとギアを合わせて十か所以上が確認されていて、それぞれが広大な面積を有しているのです」


絶望的な話をしながら、マイリ―さんはにっこりと微笑む


「皆さんには大森林の空気に触れてもらい、この星が人間のものだけではないこと、人類として驕ってはいけないことを勉強してもらいたいと思います」


「あ、見えて来た!」

リマが言う


前方に広大な森林が見えて来ていた



「はい、間もなく到着ですね! これから行くのは、大森林の入口領域と呼ばれる場所。大森林と言う秘境と人類の生息圏の境目の場所であり、大森林の一番浅い領域となります」

マイリ―さんが言う


「ただし、大森林は人類の版図ではありません。どんなモンスターが現れるか分かりませんから、離れないで下さいね!」



僕たちは、秘境という人類の支配が及んでいない地域に初めて足を踏み入れる


皆が、緊張した顔になっていた



マイリ―さん 一章 25話 島外学習1

ストラデ=イバリ 一章 25話 島外学習1



大森林編、始まりです

誤字報告、いつもありがとうございます!

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