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二章 18話 成功

用語説明w

ルノー:魔族の男子、ギア出身

サエ:ノーマンの女子、黒髪でギア出身。除霊術を使える


魔法とは、魔力というエネルギーを使って超常現象を引き起こす術

現在の魔法科学文明の根幹をなす技術の一つであり、生体脳を使った魔法使いという技術者はそれだけ重宝される


魔法を使える魔法使いは、闘氣(オーラ)を使えなければなれない騎士という存在よりも多い

魔力を様々なエネルギーや物質に変換、又は自然界の物質に作用させる魔法は、汎用性が高く様々な分野で活躍のできる技術だ


学園島のマリアージュ高等学校も魔法という技術を学ぶことができる専門高等学校

魔法使いは専門職であり、通常、魔法を学び始めるのは十八歳以上の専門学校や大学生からが一般的

高校生が魔法を学ぶというのは年齢的に早い方で、マリアージュ高等学校は魔法のスペシャリストの養成機関ということになる


にもかかわらず、騎士学園では初等部二年生、十一歳で魔法を習得する

これは、世間一般からしたら有り得ないような早さだ


そのため、初等部二年生から三年生に上がるまでに進級できない生徒が出てしまうことも有り得る

そうならないように、先生たちもそれぞれの生徒と対策を練るのだ



僕たちは、進級試験に向けてぞれぞれが取り組んでいる


授業後の補習には、ヤマトの他にサヘル、ワシリー、ハユンが出席するようになった

季節は春を過ぎ、そろそろ魔法発動に向けて魔力制御を完成させなければいけない時期となった


「はい、おはよう」

ラングドン先生が教壇に立つ


「聞きなさい。みんなも分かっている通り、進級試験が近づいて来ている。そろそろ授業内容は実技の訓練が増えてくるから、勉強の方は自分たちで進めておくように」


「あー…」

生徒達のため息


実技の魔法発動も大事だが、筆記試験も大事

勉強もしなければならない


もっとも、授業でやった場所をしっかり復習しておけば、初等部の試験なら点は取れる



「もう少ししたら初等部の島外学習だ。それが終われば、去年と同じように、進級試験まであっという間。島外学習までに勉強と魔法の発動を終わらせられるのが理想だ」


「はい…」


初等部の島外学習は、最初に一年生、次に二年生、三年生が順番に出発する


僕たち二年生は、ギアの魔力スポットであり、モンスターがひしめく秘境、大森林への見学だ

その奥地には、人類との関わりを拒み、かつ、人類が手を出せないほどの存在が複数存在するとか


いや、怖過ぎでしょ!?

何なの、秘境って!



「君達は今まで瞑想を続けて来た。そろそろ、魔法の発動を意識してもいい頃だ」

ラングドン先生が言う


他のクラスでは、すでに何人かが魔法の発動に成功した

しかし、三組ではまだゼロ


ラングドン先生は焦らずに、今までずっと瞑想を続けさせていたのだ



「よし、それでは、また瞑想から始めよう。でも、その前に、ルノー、ラーズ、サエ」


「 「 「はい?」 」 」


呼ばれた僕たち三人は、慌てて返事をする



「君たち三人は僕の所に。ここで瞑想を始めなさい」


「はい」


急に何だろう?

僕たちは、三人で教壇の前で座る


そして、杖を床に突いた状態で瞑想に入る


「静かに、まずは体の状態を感じる。魔力への意識はその後だ」


ラングドン先生の声で、僕たちは静かに集中していく



呼吸


鼓動


体の傾き


僕の体は、少しだって止まっていられない


体の中のどこかが動き続けている



「よし、体の全体から魔力を集めてこよう。少しずつ、少しずつ、手の先へとかき集める」


希薄な流れを身体の末端から集める


魔力の流れが集まれば、それだけ感覚が強くなる


強くなった流れを両腕へ、そして、手の先へ



「何度も魔力をかき集める。全身から集めた魔力の強さは、今までの比ではないはずだ」


分かる


先生の言葉の意味が分かる


全身から絞り出した魔力は、重なり、量を増やし、濃くなっていく


その魔力は、もはや流れではなく重い塊


ゼリーのようになった魔力の感覚を、手の先から杖へと押し出していく



「杖の中まで感覚を通し、魔力を込める」


押し出した、今までにない濃く、重い魔力


杖の中で、ゆっくりと、確実に回す


捻じり、こねて、流れを作る



「よし、いいぞ。最後の工程だ、その魔力は杖の中のどこに集めればいいかな?」


杖の中では、ゆっくりと魔力が動き、流れている


どこに…?


杖の中…集める…?



「…っ!?」


その時、僕は唐突に理解した


魔力とはどうあるべきかを


魔力とは、一定の量と濃さを持った時に魔法として発動する



今、僕の杖の中には魔力が詰まっている


その魔力を…、杖の中の更に一点に集めていくんだ!



僕は、自分の発見に興奮する


杖の中に詰め込まれ、杖の中いっぱいに広がった魔力の塊


その魔力を、杖の先端に集める



魔力の濃度が上がっていくのが分かる


僕の魔力を感じる感覚…、第八感で強く感じる


杖の先端、その中の更に一点にできる限り圧縮し、押し込んでいく



「よし、充分だ。その魔力を維持したまま、目を開けなさい」


「…」「…」「…っ!」



僕とルノーとサエが目を開ける


全員が、杖を持ったままプルプルと腕が震えている

魔力を必死に杖の先に圧縮し続けているからだ



「よし、サエ。僕に向って魔法を発動してみなさい。やり方は分かるはずだ」


「は、はい…」


そう言うと、サエがラングドン先生に杖を向ける



パァァ……


「あっ…」



暖かい光が、サエの杖に灯る

しかし、その光はすぐに消えてしまった


「惜しかった。サエは聖属性の魔法だね」


「…」

サエが残念そうに俯く



「よし、次はラーズだ。撃ちなさい」


「はい!」



助かった

もう、魔力の維持が出来なくなりそうだった

この状態の魔力を維持するのって、こんなにきついんだな!



僕は杖をラングドン先生に向ける


そして、魔力を一気に圧縮


すると、魔力が急激に変化、勝手に()()()()()()()()()()()



ヒュオォォォォッ……


「…っ!?」



杖の周りの空気が、ラングドン先生に向って吹き抜けていく


魔力が消費される、引っ張られる感覚


今まで杖の中にあった、密度の高い魔力が消費されたことが分かった



「おめでとう、ラーズ。今のは、風属性の投射魔法の一種。…成功だ」


「え…」



ラングドン先生が微笑むと、次はルノーに顔を向ける


「さ、ルノー。君の番だ」


「はい」



ルノーが杖を先生に向ける

すると、すぐに杖の先が白く光った


ルノーは魔力の維持が限界だったようで、すぐに魔法を発動させた



シュゥゥ……


「くそっ…」



しかし、その光はすぐに消えてしまう

杖の先に、薄く白い霜がこびりついていた



「ルノーは冷属性魔法だね。少し待たせ過ぎたようだ、惜しかった」


そう言うと、ラングドン先生が僕たちを見回す


「成功はラーズだけだったが、サエもルノーも、もう一度やれば魔法の発動には成功するだろう。…でも、今日の魔法発動はこれで終わりだ」


「え…」


「君達は、魔法発動に必要な分の魔力を消費している。一日に二回も魔法を発動したら、魔力欠乏の症状が出てしまう可能性がある」


「欠乏…」

「…」


サエとルノーが残念そうに頷く


「焦る必要はない。発動直前まで行ったということは、第八感がしっかりと磨かれているということだからね」


「ラーズ、ずるいな、お前だけ」


「本当よ、いいなぁ」


「いや、うん、なんかごめん…」


ルノーとサエに口を尖らせられる


僕の魔法は間違いなく発動した

それが分かるし、だからこそ興奮している


僕たち三人の成功を前に、三組の皆の意識も変わった

やはりクラスメイトの成功は大きい


僕たちは、再び瞑想の訓練に戻ったのだった




・・・・・・




「ラーズ、やったわね」


「凄いよなー」


教室を出る時、ミィとヤマトに声をかけられる


「うん、なんか、とりあえずは…」


僕は、はっきり言って得意になっている

でも、ミィと、特にヤマトはまだ魔法発動に成功していない


変なプレッシャーを与えたくないし、焦らせたくない

自慢もしたくないから黙っている



教室には、まだ魔法の発動に成功していない生徒達が残る

そして、補修として瞑想の訓練を行うのだ


成功した僕やもうすぐのサエとルノー、すでに魔法が使えるフィーナ、ラシドは先に寮に戻る



「ラーズ、今日はどこか行くの?」

フィーナが帰る支度を終える


「僕はセフィ姉の所に行ってくるよ」


「セフィ姉?」


「うん、魔法が成功したって言いたいからね」


「それじゃあ、私も行く」


「えー?」


「何よ、いいでしょ」



僕たちは、桑の木の所で待ち合わせているセフィ姉の所に向う

今日も、セフィ姉と秘密の訓練をする約束をしていたからだ


魔法は成功した

次は剣を使えるようになる


そうすれば、セフィ姉みたいな魔法剣士になれる


今日の素振りはめちゃくちゃ頑張れる、そんな気がした


マリアージュ高等学校 二章 1話 新学期

魔法習得の年齢 一章 35話 終業式

セフィ姉との訓練 二章 15話 セフィ姉との時間

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