一章 35話 終業式
用語説明w
ミィ:魚人の女子、社交性があり、人見知りのフィーナともすぐに仲良くなった
ヤマト:獣人の男子で、体力があり身体も大きい。魔法が不得意だが、特技が使えるらしい
フィーナ:ノーマンの女子、黒髪で赤目、ウルのクレハナの王族。二年飛び級のため体が小さく体力はないが、魔法の素養がある
「はい、みんなお疲れ様」
「やったー!」
「セフィリアさん、ありがとう!」
セフィ姉が、進級祝いにたこ焼きをご馳走してくれた
「いやー、今年のセフィリアちゃんの試合も凄かったねぇ!」
「スカウトたちも興奮してたんだよ?」
たこ焼き屋、こなもん万歳のおじちゃんとおばちゃんが、僕たちの所に来て話している
商売しなくていいの?
間もなく夏休み
かなり暑くなっており、たこ焼きがあまり売れないのかもしれない
その分、店ではちゃっかりと「氷」の旗を立てていて、かき氷を売り出しているのだけど
「スカウトって何ですか?」
「騎士学園の卒業生は、全員がBランクなわけだろ? 各国の騎士団が有望な生徒をスカウトしに来るのさ」
「うちの卒業生は即戦力だからね」
「なるほど…」
各国の騎士団によって、有望な騎士候補は取り合いだ
この騎士学園は世界でも有数の人材の宝庫だもんな
「セフィ姉はどうするの?」
フィーナが尋ねる
「私は龍神皇国の騎士団に入団することが決まっているから」
セフィ姉は龍神皇国の貴族の家柄
卒業後は当然、龍神皇国に戻る
「セフィリアさんは、卒業したらすぐに入団するんですか?」
ミィが聞く
「いいえ、普通に大学を受験しようと思ってるわ」
「騎士大学?」
「私は一般の大学に進むつもりよ。志望は龍神皇国立の中央大学」
「それって、超難関大学じゃないか…」
おっちゃんが言う
「セフィリアちゃんは、騎士としての実力だけでなく勉強もできるんだねぇ」
おばちゃんが感心している
騎士学園の進路としては、世界にいくつかある騎士大学に進むか、各国の騎士団に就職するのが一般的だ
卒業生の八割以上はこの二つの進路を選んでいる
それ以外の就職や大学進学は、卒業生の二割にも満たないのだ
「ねぇ、セフィ姉。私達もセフィ姉みたいに戦えるようになるかな?」
フィーナがたこ焼きをハフハフしながら言う
「なるわよ。闘氣、魔法、特技を習得して、自分のスタイルを研究して、自分に合った武器を選んで練習する。それだけよ」
「言葉で聞くと簡単そうなんだけどな…」
僕は魔法の発動だってまだ出来ない
やっと魔力の感覚が分かって来ただけだ
「でも、あんたらは凄いんだよ。普通は、そんな年で魔法が使えたりなんてしない。闘氣だって何年も修行してやっと身に付く技術なんだ。この学園に入れただけで、才能があるってことさ」
「え…」
おばちゃんが僕たちを誉める
強力な兵器を使ったとしても、人類の戦闘力はCランクまで行けばかなり高い方だ
Cランクとは戦車と同レベルの戦闘力と言われており、その戦車は兵器の中でも高火力、高射程、高防御力を誇っている
しかし、人類の粋を集めた戦車などの兵器でも敵わないモンスターは存在する
その時のために戦うのがBランク以上の騎士であり、数は極めて少ないがAランクの実力を持つものまでいる
科学、魔導法学を問わない数々の超兵器とBランク以上の戦闘員を使って、人類はようやくペアでの支配領域を維持しているのだ
「フィーナ、夏休みはどうするの?」
セフィ姉が尋ねる
「一度はクレハナに戻るけど、二、三日で龍神皇国に戻るつもりだよ」
「あら、そうなの」
「うん、クレハナはあまり情勢が良くないらしくて、長期間の滞在は止めた方がいいって…」
クレハナとはフィーナの母国
内戦など、いろいろと事情があるらしい
「龍神皇国では、ファブル地区のあの別荘に?」
「そう思っていたんだけど、ラーズのお父さんとお母さんが家にいらっしゃいって言ってくれて…」
「え!? そうなの?」
僕は慌てて口を挟む
何も聞いてないんだけど!?
「嫌?」
「いや、嫌じゃないし、別にいいんだけど…」
僕だけ知らなかったことが問題なんだよ
何で僕の両親が息子に一言も連絡しないんだ
「それなら、私もラーズの家に遊びに行くわね」
そう言って、セフィ姉がフィーナの頭を撫でる
「本当!? セフィ姉、待ってる!」
フィーナが嬉しそうに言う
「別荘って何だ?」
ヤマトが口を挟む
「フィーナの家って金持ちだからさ。いろんなところに家を持ってるんだってさ。龍神皇国の僕の家の側にもあって、騎士学園に入学前は、そこにフィーナが住んでたんだよ」
「凄い。それなら、フィーナの国に遊びに行きましょうよ」
ミィが言う
「フィーナの国は戦争が始まっていて…、フィーナは亡命に近い立場なのよ。年に一回はお父様に会いに行くことになるけど、正直、命の危険もあるから…」
「…」「…」「…」
セフィ姉の本気の呟きに、僕たちは黙ってしまう
十歳になった僕たちの二つ下、八歳のフィーナは、すでにとんでもない人生経験をしてきているみたいだ
「ラーズ、このたこ焼き、最後の一個もらうね」
パクついているフィーナを見て、僕たちは恵まれているんだなぁと思ったのだった
・・・・・・
最後の登校日
終業式で学園長のお話を聞く
その後、教室へ行くころには、みんながソワソワし始めた
初めての夏休みを迎え、僕たちは帰宅する
つまり、島外に出られる
要するに浮足立っているのだ
「みんな、この一年間よく頑張りました。全員が無事に進級が出来て、僕は嬉しい」
ラングドン先生が言う
クラス全員が進級
初等部の一年生では、退学は誰もいなかったそうだ
「ただ、今年は初等部二年生に一人だけ、進級できなかった生徒が出た。みんなも油断せず、コツコツと勉強や訓練をしていくようにね」
「はい!」
やっぱり進級できなかった人がいるんだ
僕も気を付けないと
「初等部二年生では、魔法の自力発動を身につけることになる。巻物を使わない分、一年生よりも内容は難しくなるし、勉強も同じだ」
「…」
「よし、これ以上言っても頭に入らないだろうから、最後に一つだけ指示をするよ」
ラングドン先生が笑う
「夏休みを思いっきり楽しんで来なさい! そして、新学期に無事に騎士学園に戻って来ること! 分かったかな?」
「はーい!」
一つと言いながら二つの指示を出したラングドン先生に、僕たちは大きな声で返事をする
夏休み前に、そんな些細なことはどうでもいい
教室から出ると、一度、みんなで寮に帰る
そして、あらかじめ詰めていた荷物を持ち出して次々と寮を出ていく
「初等部の学生は十四時出発の船だぞー!」
「遅れないように、忘れ物の無いようにね!」
ラングドン先生とマーゴット先生が僕たちを寮から送り出していく
終業式の日は、初等部、中等部、高等部の順番で船に乗ることが決まっているのだ
「ラーズ、フィーナ! 向こうでね!」
「あ、セフィ姉!」「お先にー!」
中等部の寮の前で、セフィ姉が手を振ってくれる
僕たちは手を振り返して港町へと向かった
「ラーズとフィーナはウルまで行くんだよな?」
ヤマトが言う
「うん。グリーギムの軌道エレベーターを使って宇宙飛行機で行くんだ」
「私、あの無重力な感じ好きだよ」
「一か月半近く会えないのも、ちょっと寂しいわね」
ミィが珍しく愁傷なことを言う
僕たちは船に乗り込み、港町の人達に手を振る
徐々に離れていく学園島
僕たちの初等部一年生が終わった
ボリュガ・バウド騎士学園 通信簿
初等部一年三組
担任:ラングドン
・生徒
氏名:ラーズ・オーティル
人種:竜人
性別:男
・学科(十段階評価)
国語:5
算数:6
理科:7
社会:4
・実技(十段階評価)
体育:6
訓練:4
魔法:8
・総合
理科に興味を持っている
反面、社会や歴史にはあまり興味がないようだ
体力面では持久力に優れている反面、筋力は弱い
魔法はセンスが良く飲み込みが早い
魔術師系統の職業を考えてみるのもいいかもしれない
フィーナの亡命 一章 4話 瞑想と魔力
読んでいただきありがとうございます!
これで一章終了になります
ここから不定期になりますが、なるべく間隔を開けずに投稿しようと思っています
閑話を二つ投稿後、二章開始となります
よろしくお願いします




