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一章 29話 不文律

用語説明w

始原戦争:龍神皇国の前身、龍神皇帝国が興るきっかけとなった、歴史上最後の魔大戦。ダンジョンより現れた魔王との戦いをきっかけとした、その後の国同士の戦乱から龍神皇帝国成立までの戦争


リマ:神族、霊体の頭の部分に輪っかにも見える部分がある。魔物使いの家系。

サエ:、ノーマンの女子、除霊術を使える

ハユン:獣人の女子、運動神経抜群


駆け足で夏が近づいてくる


初等部二年生の島外学習が終わり、今日は三年生が出発の日

三年生は、モンスターハンターについて実際のモンスターハントを見学するとか


モンスターハント…

僕もモンスターと戦えるようになるのだろうか

騎士になれるのだろうか


いつか、セフィ姉と一緒に戦えたら

セフィ姉の背中を守れる、そんな騎士になれたら

かっこいいだろうなー…



「ラーズ?」


「え?」


「何、ボーとしてるの。もう先生来るよ」


「あ、うん、そうだね」


フィーナに変な顔をされたので、僕は慌てて授業の準備をする


島外学習が終わって、いよいよ試験期間

進級するためには、実技試験と筆記試験を乗り越えなくてはいけない


六月中が試験期間と進級試験

そして、七月に入れば個人総合闘武大会が始まる


僕たち初等部は応援だけだが、それでも中等部以上の先輩たちの戦いを見られるのは楽しみだ

僕は絶対にセフィ姉を応援するけどね!


それが終われば、いよいよ進級の準備だ

夏休みに入り、その後に僕たちは初等部二年生となる


ま、進級試験に無事合格すればだけど…



「実技も不安だけどさ、勉強もきついよね」

ミィが教科書を見ながら言う


「算数、国語、理科、社会…、基礎騎士学が難しいんだよ」

ヤマトもうんざりという顔をする


基礎騎士学とは、理科と社会に組み込まれている分野

騎士学園独自の分野で、中等部では独立した試験問題になるらしい


ちなみに、これは僕たちだけでなく生徒全員が同じ意見だ

試験を受ける方は、少しでも勉強範囲が少ない方がいいに決まっている


「でも、全部騎士になったら必要なことだから…」

フィーナが言う


「フィーナは優等生ねー」

「確かにそうなんだけどな…」


フィーナは体力面では劣っているが、やはり飛び級だけあって勉強は得意だ

年下のくせに、僕たちよりも勉強はできている



「起立!」


今日の日直のリマが号令をかけると、ラングドン先生が入って来た




魔導法学には属性と言う概念がある


魔法とは、魔力と言う力に対して法則を与える方法

そして、その法則には種類があり、この種類のことを属性と呼称している


例えば、生命力を上げ下げする生命属性

その生命属性の中には聖属性と魔属性があり、この二つは相克の関係となる


温度を上げ下げする属性を熱属性

温度を上げる火属性と、温度を下げる冷属性の二つからなり、これらも相克の関係だ


相克とは、相反する力の方向を示しており、その二つが合わさると打ち消し合ってエネルギーがゼロになる関係を言う


同じ種類の属性でも、相克の関係にならない場合もある



そして、これが重要なのだが、属性とは魔力の法則の種類を示す


魔力とは、基本的にはこの世の物質には干渉しないため、無属性という状態では何の変化も起こせない


魔法とは、魔力に対して法則性を与えて変化させること

つまり、無属性の魔法と言うものは存在しないのだ


例外として、他の魔法構造を破壊するための霊子情報と言う形での魔法が存在する

例えば解呪の魔法などのことで、魔法構造を構成する霊子情報を上書き、又は改変することで魔法構造を破壊する


この解呪の魔法は、あくまでも魔力で構成された霊子情報であり、魔力に法則を与えて別のエネルギーに変化していないため、正確には魔法という定義から外れた例外的な魔法だ



「この解呪の魔法は、魔石で商品化もされていて誰でも使うことができる」

ラングドン先生が魔石を持ち上げる


「でも、一般的ではない。一度魔法が発動してしまえば、魔法構造を破壊することは難しいからだ。火の玉が飛んで来る火属性投射魔法に解呪の魔法弾を当てたとしても、すでに火属性と言う法則を持ってしまった魔力に変化はない」


「では、どういう時に解呪の魔法が使えるのですか?」

ルノーが質問する


「投射魔法よりも複雑な範囲魔法が発動する瞬間かな。後は、徐々に体を蝕む呪い系の魔術、より複雑な構成を持つ特殊な多重構造の魔法が発動する前ならとかだね」


「そんな凄い魔法を使ってくるモンスターがいるんですか?」

サエが手を挙げる


「もちろんさ。悪魔系、高位のアンデッド、天使系や精霊系にも知能の高いものがいる。ランクの高いドラゴンや巨人には、人類とは違う独自の魔法を使う場合もある」


「怖い…」

ハユンが言う


「人類よりも高い知能を持った相手と戦う場合は、総力戦でパーティや隊列を組む必要がある。それでも対処できない場合は、少しでも多くの情報を持ち帰って対処方法を研究していくことになる」


「研究が終わるまで、そのモンスターはどうなるんですか?」


「もちろん、暴れ回ることになるだろう。騎士の役目は囮をしながら住人を逃がし、倒せないなら倒すための情報を少しでも持ち帰ることだ」


「…」


「幸い、私達人類という存在は強い。しかし、もっと強い存在はいる。傲慢にならず、冷静に、自分を律することが必要ということだね」



ペアには多種多様な生命体がいる

そんな生命体に共通する、ある不文律がある


それは、この世には絶対に手を出してはいけない相手が三つ存在するということだ

その三つとは、「竜」、「巨人」、そして「国」



竜とは、いわゆるドラゴンのことで、西洋型、東洋型、異形型、宝珠型の四つに分類される

更に六つの成長ランクと、同じく六つの能力ランクを持っている


成長ランクには幼竜から古竜まで、能力ランクには牙竜から極竜まで

最高位の古極竜(エンシェント・マスタードラゴン)ともなれば、生物でありながら高次元的存在である神や魔神と渡り合えるほどの存在となる


まさに、全生態系の頂点に君臨する生物と言えるだろう



次に巨人


見た目は大きな人類であるが、その根源は星の化身、人類とは別種の存在だ

高位から下位まで様々で、亜種はモンスター化しているものもいる


惑星から力を引き出す独自の代謝システムを内包しており、超常的な破壊力、耐久力、回復力を持ち、最高位の巨神と呼ばれる存在ともなると、ペアの惑星上にいる限り不死と言っても過言ではない


条件を満たしている限り死なない、チートの権化のような、圧倒的な巨大さを誇る存在だ



そして、最後が国家


国とは人類が作る組織の一形態であり、最大規模の組織

この国と呼ばれる規模にまで組織を巨大化させたことで、人類は二つの惑星を持つペアの覇者の一種となった


資源採取の効率化、技術と知識の進歩、脆弱な身体構造を持つ人類が集団という戦闘方式を取ることによって、時にはAランクのモンスターでさえ狩ることが出来る

更に、英雄と呼ばれる存在を作り出し、高次元的な存在である神や魔神から力を引き出し、時に敵対した魔王、ドラゴン、巨人、その他超常的な存在を打ち倒す


人類以外の存在にとって、ペアの各地に存在している国は、希少性の高い魔王などと比べてはるかに危険極まりない存在なのだ



「初等部二年生が戻って来たばかりだが、ブリトンから各国に跨る大森林は秘境と呼ばれている。なぜかわかるかな?」

ラングドン先生が教室を見回す


「まだ、冒険がされていないからです!」

エイダンが言う


「うん、その通り。では、なぜ冒険がされていないのか?」

ラングドン先生が微笑む


「…」


現代において、まだ大森林は未開の地である

それはなぜなのか?

人類が入れない理由がある?


「答えは、何がいるのか分からないからだよ」

ラングドン先生が続ける


「もし、人類と敵対する巨大な存在がいたら。その縄張りを不法に犯してしまったら。そして、その報復として、近隣の国に、人類という存在に対して、襲い掛かって来たら…」


「…っ!?」


僕とセフィ姉の出身である龍神皇国

大きな国だが、その成り立ちは魔王の侵攻によって引き起こされた戦乱によるものだという


これは始原戦争と呼ばれている



「私達人類はね、簡単に言うとビビってしまったんだ。怖くて中を調査できないと、大森林に対して判断したんだよ」


そ、そんなに怖い所なの!?

そんなに危ない存在が大森林にはいるかもしれないって…!


「でも、怖がることは騎士にとって、そして人類にとって必要なことだ。ペアの二つの惑星は人類だけのものじゃない、それを忘れないように」


ラングドン先生は、顔が青くなった僕たちの顔を見回す

そして、微笑みながらそう締めくくった



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