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序章 1話 上級生の戦い



「グオォォォォォォッ!!」


ゴガァッッ!



トロルがこん棒を叩きつける

その衝撃で地面が陥没し、ヒビがが入った



僕の名はラーズ

ラーズ・オーティルという


入学式を終え、僕たち新入生はある映像を見ながら悲鳴を上げている



ここ、ペアの人類は、個人で必ず「多目的多層メモリ」を持っている

ユーザーの個人識別情報が記録されており、生涯改変されることのない身分証明書として使われているのだ


この個人識別情報と個人用携帯通信情報端末とリンクさせてることで、ネットやクラウドにアクセスすることが可能となる

この個人用情報端末のことを、略してPITという


そして、このPITは個人の肉体と霊体に接続されており、個人の視界に対して情報を表示させることが出来る

これを仮想モニタ―といい、ディスプレイを必要としない情報表示機能だ


今、僕たちの仮想モニターには、ある共通の映像が映し出されている


「よく見ておけ。これは紛れもない、この学園の上級生の姿だ」


ハビエル先生が紹介しているのは、この学園内にあるというダンジョンの映像

その危険な異世界で、たった一人の女子生徒が複数のモンスターと戦っていた



「トロルは、戦闘ランクDのモンスターだ。本来はパーティでの対応を要する」


戦っている生徒は、長く美しい金髪をたなびかせた竜人の女子生徒

二本の細いレイピアを使う双剣使いだ


「はぁっっ!」


トロルの足を連続で斬り裂く

その刀身には水属性付加魔法が使われており、液体の粘度によって抵抗が減り切れ味が大幅に上がっている


思わず膝をついたトロルの首に、二本のレイピアが横薙ぎに振り切られる



「グゴォォッ!?」


ドシュッ…!!



その首がきれいに飛ぶ

ホーリーエッジと呼ばれる、聖属性の特技(スキル)



「…っ!!」


ドッゴォッッ!!



戦いを終えた…、と思われた女生徒

その背後から岩のような尻尾が叩きつけられた



「きゃっ!?」「うわっ!!」「えぇっ!」


僕たち新入生が口々に悲鳴を上げる



一人で戦っていた女生徒が潰されてしまったと思ったからだ


だが、土煙の中に一人の影

美しい金髪の女生徒は、二本のレイピアでその太い尻尾を受け止めていた


その体は、仄かな光に包まれている


「あの尻尾はロックカメレオン。岩に擬態する上、固く重い尻尾で獲物を狙う厄介なDランクモンスターだ」

また、ハビエル先生が解説する



金髪の女生徒が魔法で水の塊を作り出す

水属性投射魔法だ



ビチャッ…!


「…ゴボォッ……ゴボッ…!?」



水の固まりはゼリーのようにロックカメレオンの顔に張り付く


そして、そのまま呼吸器を含めた顔全体を覆う

呼吸ができないロックカメレオンが苦しみながら暴れ回る


その隙に、金髪の女生徒が静かに剣を構えた



「…彼女の名はセフィリア・ドルグネル。中等部三年生にして、この学園で一番の注目株。そして、君達の先輩だ」

先生か説明する


「あの水属性投射魔法は、液体の粘度を上げる高難易度の魔法だ」


先生が言い終わると同時に、金髪の女生徒、セフィリアが飛ぶ



その身体能力は常人のものではない

そして、一太刀の元にロックカメレオンを斬り裂いた



「彼女が纏っている仄かな光が()()(オーラ)だ。身体に纏えば身体能力を強化、同時に体を守るバリアとなる。そして、武器や防具を闘氣(オーラ)で包むことで、その強度を飛躍的に上げる。騎士の、騎士たる由縁であり、騎士であるための資格でもある」

先生が続ける


ロックカメレオンの甲殻は、文字通り岩のように硬い

その甲殻を簡単に切り裂く力が闘氣(オーラ)


その上、更に付加魔法や特技(スキル)でその切れ味を強化している


映像では、戦いを終えたセフィリアが、優雅に剣を振って鞘に納めていた


「先輩であるセフィリア君のように、君達はこの学園で、魔法、特技(スキル)闘氣(オーラ)を習得していくことになる。そして、卒業した暁には、偉大なる騎士として世界各国に羽ばたくのだ」

先生の言葉を聞きながら、僕たちは仮想モニタ―を切って前に立っている先生を見る


「ひ、一人でDランクモンスターを倒すなんて…」

「中等部に行ったら、俺達もあんなこと出来るのか?」


生徒達が、口々に今見た信じられない戦いの感想を言い合っている

それだけ、衝撃的な光景だった



「…セフィ姉、凄かったね」

フィーナが小声で僕に言ってくる


「うん。初めて見たけど凄かった。まるで、英雄みたい」

僕も頷きを返す


セフィリア先輩…、実は僕とフィーナの幼馴染のお姉さんだ


龍神皇国という国の貴族の娘で、皇帝の血筋と同系統の龍神王の血を引く天才

この学園一の才能と呼ばれており、上級生である高等部の生徒も敵わないとか


でも、優しくて上品で、おいしい紅茶を入れてくれる

僕たちは龍神皇国にいた頃からセフィ姉と呼んで慕っていた


僕がこの騎士学園を受験したのも、実はこのセフィ姉に憧れたからだ


いつか、僕も騎士になる

騎士になってセフィ姉と一緒にモンスターを狩る


…それが、僕の夢なんだ



「君達の最初の目標は魔法の発動だ。初等部の三年間で魔法の発動を身につける。そして、中等部の目標は、今見たセフィリア君のとおりだ」


「…っ!?」


新入生みんなが不安そうな顔をする

後五年経ったら、本当にあんな風に戦えるのだろうか?


「…もっとも、セフィリア君は中等部の中でも別格だ。高等部でも、あそこまでの実力を身につけている者はなかなかいないからな」

先生がフォローするように言う



「ゴホン! 君達は、栄えある我が騎士学園の一員となった。目標を見つけ、目標に向って努力をしなさい。そうすれば、理想の自分に近づけるはずだ」


「…!」


「わが学園は、そして、世界は、若い君たちの力に期待をしている!」


「はい!」


先生の言葉で、そしてセフィ姉の戦いぶりを見て、僕たちは興奮していた


たった一人でダンジョンに挑む姿は、まるで物語の英雄だった


あんな凄い戦闘員になりたい

騎士になりたい


改めて、そう思った





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