視野は広く
ヤバい!ヤバい!ヤバい!
完全にロックオンされとる。不幸中の幸いか1匹しか居ないのが救い。ゴブリンはガキンチョの身体より小さいが武器持ちだ。
当たりどころが悪ければ死ぬ。
向こうはギャッギャ叫びながら興奮してるっぽい。後ろに逃げたらさっきのゴブリン達に見つかる。かと言って正面突破はこの身体じゃ難しい。
残るは右か左なんだが、逃げるにしても身体のスペックが分からない状態。自分の体力、スピードがコイツを上回っていればいいんだが。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
無理だな。身体中傷だらけだし腹も減っているみたいだ。力もあまり入らないし、逃げ切るのは出来なそうだ。一か八か、もつれて武器を奪えればやれるか?
「こんなチュートリアルありえん。」
愚痴ぐらいは言いたい。
そんな中でも、あちらさんは待ってはくれないみたい。ジリジリと近づいて来てる。
「ん?そういえばこんな状況を想定してた軍事格闘技動画を見た事あったな。」
日本にいたときは空き時間によく格闘技動画みてたっけ。
たしか、ナイフを振り回す不審者に対しては、正中線を晒さずに半身。当たるか当たらないかの距離を保ち、自分の対処出来る型が来たらキメる!だったかな?
狙うは上段からの振り下ろししかない。頭を狙ってきた所に踏み込んで掌底。
イメージは出来た。あとはビビらず実行できるかどうかだ。
「こいよ!醜いバケモンが!」
映画で観た武術家の様に、手を前に出して向かってくる様挑発する。短気なのか、木の棒をブンブン振り回して突っ込んでくる。
ギリギリを見極め、バックステップやサイトステップで回避。掠ったりはするが直撃は避けられている。暫く当てられない時間が続くと、
イライラしたのか両手持ちに切り替え、前に出て頭を狙ってくる。
それに合わせて自分も前に踏み込む。
「くらえやぁぁぁぁぁ!!!」
木の棒は自分スレスレに通り過ぎ、右の掌打が顔面を捉える。
カウンターが決まり、奴は後頭部を地面に強く打ち付ける形になった。死んではいない様だが痙攣していてすぐに動ける様子じゃない。
「はぁ、はぁ、はぁ。こんなんもう一回やれって言われても無理だな。マジ奇跡。」
実際もう体力の限界で、すぐにその場にへたりこんだ。もう少し頭をねらってくるのが遅かったらやられていたのは俺だろう。
「コイツ、起き上がる様子ないな。だけどトドメを刺す体力もねぇ。少し休も。」
ゴブリンの様子を気にしながら木にもたれ、身体を休める。
しかし、目の前のゴブリンの様子に集中しすぎていて、周囲の警戒を怠っていた。
その結果・・・・
「さっきの3匹戻ってきてるぅぅぅ。」