EP.51
悟は、朝日の眩しさで目を覚ました。
洗面台で顔を洗い、口を濯ぐ。鏡に映る自分をじっと見る。ツナグが、林太郎に似ていると言った自分の顔。
自分では、林太郎に似ている要素は見つけられなかった。とは言え、ツナグが言うからには、きっと似ているのだろう。
悟自身、自分の先祖に会う人生は想定していなかった。林太郎の本の世界も、あれば良いなくらいで、夢物語だと思っていた。
「事実は小説より奇なりですねぇ……」
一人、ぽつりと言葉を零す。悟の言葉に反応するように、「ピチチッ」と小鳥が窓の外で鳴いた。
悟は、マグカップにインスタントコーヒーを淹れた。
コーヒーの入ったマグカップを持ったまま椅子に腰掛けると、ほぅっとため息をついた。
「聞いていた通り、優しい人でしたね」
祖父や曽祖母などから聞いていた通りの人だった。優しく、朗らかで、明るい人だった。
『星降る夜にひとときの願いを』と書かれた本を手に取る。
ツナグとのやりとりが描かれているその本は、林太郎の人の良さや、優しさが滲み出ていた。
林太郎に会って気付いたことは、これは日記に近いものかもしれないということだった。
「林太郎さんが笑顔で良かった」
悟は、ふっと笑うと、食パンをオーブントースターに入れて、トーストを作り始めた。
しばらくすると、オーブントースターからチンッという音が聞こえてきた。
皿にトーストを乗せ、冷蔵庫からマーマレードを取り出す。ささっとマーマレードを塗ると、悟はそれを口に運んだ。
さくっと軽快な音が辺りに響く。静かな空間に悟がトーストを食べる音が響く。
インスタントコーヒーを一口飲んで、一呼吸置く。
悟は、コーヒーについてはサイフォンで作るものが一番好きだが、時折作るインスタントコーヒーも好きだったりする。
悟がいろいろなものに興味を抱いたきっかけは、林太郎の本だった。
見たことのない世界。世界は、見たことのないもので溢れている。そんな世界を少しでも知りたい。そんな気持ちから、たくさんの本を読むようになった。
「林太郎さんは、私の世界を広げてくれました。そして、今回も」
外では、鳥がさえずる。その鳴き声が、爽やかな朝にぴったりのBGMとなる。
「今日も清々しい朝ですね」
悟の顔を、朝日が優しく照らす。
その光は、心地良いシャワーのように部屋に降り注いだ。
悟自身のように、穏やかでゆっくりとした時間が過ぎていった。
読んでいただき、ありがとうございます。
今回は、悟の朝のひとときでした。
朝は、トーストが好きだったりします。
インスタントコーヒー、便利で美味しいですよね。
作った人はすごいなと思います。
悟は、林太郎に世界を広げてもらったんですね。
そんな悟が、林太郎に出会ったのは、やはり運命だったのかもしれません。
さて、今度は誰が出て来るのでしょう?
ぜひ、続きもお楽しみいただけますと幸いです。




