EP.38
「ごちそうさまでした」
ツナグは、そっと手を合わせると、皿とカップをいそいそと洗った。
そんな様子を見て、林太郎は声をかける。
「そんなに急いで、お散歩かい?」
「そう! 今日はいいお天気だから!」
ツナグは、嬉しそうに答えた。
そして、歯を磨いて毛繕いを済ませると、そそくさと家を出た。
「んー! 今日もいい天気!」
ツナグは、大きく伸びをすると、てくてくと歩き出した。
さーっと風が流れる。木の葉が、さらさらと音を立てる。
「あら、ツナグちゃん。お散歩かい?」
「あ! トミさんおはよう! 今日もいい天気だね!」
ツナグは、トミと呼ばれた近所で顔馴染みの老婦人に声をかけられ、元気に返事をする。
「気をつけて行ってらっしゃい」
「行ってきます!」
ツナグは、眩しそうに空を見上げて、また歩き出した。
しばらく歩くと、川が見えてきた。
ツナグは、ブーツを脱いで、そっと河原に置いた。
裸足で川の石に座ると、ブーツを履いていた足を川の水に浸けた。
「ひゃー! 冷たい! 気持ちいい!」
冷たいと言いながらも、目を細めて気持ちよさそうに目を閉じるツナグ。
風はそよそよと流れ、木の葉が時折はらりと舞う。
ツナグは、チャプチャプと足を川の水に浸けながら、ぼんやりとしている。
「みんな幸せそうでよかったなぁ。叶奈と涼太と悟に会えるの楽しみだなぁ……。剛さんが、僕たちと幸せな生活ができているといいなぁ……」
風の音がほんの少し大きくなった。
ルイが、ツナグのそばに立っていた。
「ルイ。どうしたんだい?」
「あなたにお菓子をあげるわ」
ルイはそう言うと、紙に包んだクッキーを繋ぐに渡した。
「わぁ! チョコクッキーだ! ルイ、ありがとう!」
「どういたしまして」
ツナグは、クッキーを齧った。
「んー! 美味しい!」
「それは良かった」
「うん! 本当にありがとう!」
「良いのよ。ところで、ツナグは何か悩んでる?」
ルイの言葉に、ツナグが少し宙を見た。
「悩みってほどじゃないけど……。剛さんは、僕たちと一緒にいて幸せなのかなぁと思ったの。幸せだと良いなぁと思ったんだ」
ツナグの言葉にルイは少し考える素振りをした後、言葉を返した。
「少なくとも、居心地の良さは感じているようよ。心穏やかに過ごせて、顔つきも柔らかくなってきたじゃない。それは、ツナグと林太郎のおかげよ。二人が剛の心を解いていっているのは間違いないわ。だから大丈夫。あなたは、いつものあなたでいれば良いのよ」
ルイの言葉に、ツナグは笑みを浮かべると、ルイを見ながら言った。
「それなら良かった。僕は、剛さんにも幸せになってほしいから。剛さんも少しでも幸せを感じてくれると嬉しい。でも、僕のままでいいなら、僕のままでいるよ」
「ありのままのツナグに、剛は心癒されていると思うわ。自信持って」
ルイの言葉に、ツナグは微笑んだ。
「ルイ、ありがとう。なんだか元気出てきた!」
「それなら良かった。私はそろそろ戻るけど、ツナグはどうする?」
「僕は、もう少しだけここでのんびりするよ。ありがとう」
ルイは、手をひらひらと振ると、ツナグが歩いてきた道を歩いて行った。
ツナグが、水に足を浸ける。チャプンと音がした。
「僕は僕でいいのか。それもそうか」
風が、またそよそよと流れている。
ツナグは、空を見上げた。
小鳥が飛び去った。
日の光が、優しくツナグを包んでいた。
ここまで読んでいただき、ありがとうございます。
ツナグのお散歩のワンシーンでした。
ツナグなりに剛のことを気遣っていることが伝われば良いなと思います。
引き続き、お楽しみいただけると幸いです。




