EP.37
涼太は、喫茶店の扉を開けた。
「いらっしゃいませ」
常連客が、次々と入ってくる。
「おはようマスター」
「おはよう、今日もいい天気だね、マスター」
「おはよう! 俺いつものモーニングね!」
「おはようございます。今日は暖かくなりそうですね。モーニングですね、かしこまりました。他のお二人もモーニングでよろしいですか?」
「それで頼むよー」
「それでお願いするよ」
「かしこまりました」
三人の常連客は、いつも通り陽気な様子で涼太と挨拶を交わした。
トーストを焼いていく。
その間にコーヒーを作り、皿にレタスの千切りとポテトサラダ、ゆで卵、ジャムの入った小さなパックと、マーガリンの入った小さなパックを載せていく。
チンっと、トーストが焼き上がる音がした。
涼太は、サッとそれぞれの皿に載せると、お盆に三名分のモーニングセットを載せて、三人組の常連客がいるテーブルへ向かった。
「お待たせしました。コーヒーもすぐお持ちしますね」
「ありがとうマスター」
「ごゆっくりお召し上がりください」
「ありがとう」
「ありがとう」
「ありがとう」
三人は、いつも開店と同時に来ては、モーニングを食べながら、さまざまな話をしている。
だいたいがたわいもない話だ。
隣の奥さんが腰を痛めた話、奥さんと喧嘩した話、持っている株がちょっといい感じに値上がりしている話、今日の天気の話。
いつも、ささやかな日常の話をしている。
ところが、今日は少し涼太が気になる話をし始めた。
「そういや知ってるかい? 最近、変わった猫がこの辺をうろついてるらしい」
「へぇ、どんな猫だい?」
「ほぅ?」
「なんでも、ブーツ履いて、二本足で歩いてる猫らしい」
真顔でそう言うと、その男はさらに続けた。
「しかも、その猫は人間の言葉も喋るらしい」
そう話すと、話した男は二人を交互に見る。
一通り聞いた二人は、キョトンとした顔をした後に、盛大に笑った。
「そんなわけないでしょう」
「そんなわけないだろう。そんなことがあったら、大事件だ」
男は、二人が笑うのを見ながら、さらに話した。
「ところがなぁ、俺の家の近所で、二人も見たと言う人物がいるんだよ。一人は俺の二軒隣の佐藤さんとこの奥さん。もう一人は、宮沢さんとこの奥さん。二人と仲のいいうちのかみさんが、二人から聞いたらしい」
そんな話をする三人組を、涼太はそっと視線を向けた。
涼太は、あえて話には入らず、コーヒーの入ったカップを三人のテーブルに置いて、その場を離れた。
「その二人が言うには、とても可愛らしい猫らしくてな。今日は、シチューが食べたいとか言っていたらしい。三人で可愛らしい猫もいるもんだと話したんだと」
「へぇ、そんな可愛い猫がいるなら会ってみたいものだね」
「是非ともおしゃべりしてみてぇなぁ」
涼太は、男たちの会話を聞きながら、ツナグたちと食べた食事を思い出す。
「叶奈さんに連絡してみよう」
涼太は、スマートフォンを取り出すと、叶奈に連絡した。
涼太は、ほんの少し脈拍数が上がったような、そんな感覚を覚えた。
読んでいただきありがとうございます。
今回は、涼太のお店の常連客がメインのお話です。
何気に、この常連客好きなんですよね。
元気なおじちゃんたちが、楽しそうに喋ってると思うと、なんだかほっこりした気分になります。
引き続き、お楽しみいただけると幸いです。




