EP.33
「さて、今度こそお暇しましょうか」
悟は、立ち上がる。時刻は午後九時になろうとしていた。
「もうこんな時間!? 流石に帰らないとですね」
悟と時計を交互に見てから、残念そうに叶奈も立ち上がった。
「また来てください。その時ゆっくり続きをお話ししましょう」
「そうですね。ぜひ、またお話させてください」
悟はそう言いながら、ドアを開けた。
「ごちそうさまでした! 絶対また来ますね!」
「ごちそうさまでした。 私もまた来ます」
「ぜひ。おやすみなさい」
「おやすみなさい」
「おやすみなさい」
言葉を交わして、叶奈と悟は並んで歩き出した。
二人が振り返ると、涼太が手を振った。二人は、笑顔で手を振り返した。
「楽しかったですね!」
「えぇ、本当に楽しかったです」
叶奈の言葉に、悟が微笑む。
「改めて考えると、縁って不思議ですね。ツナグをきっかけに、こんな風に人と出会うとは思いませんでした。ましてや、私が好きな作家さんの子孫の方に出会えるなんて……」
叶奈は、感慨深げにため息をつく。
「そうですねぇ……。私も、ツナグさんを通して、こんなに素晴らしい出会いがあるとは思いませんでした。ツナグさんには、感謝してもしきれません」
悟は目尻に皺を寄せて、嬉しそうに笑顔を浮かべた。
そして、その笑顔を崩さずに言葉を続けた。
「人の縁は移り変わりゆくものも多いですが、だからこそ、一つ一つ大切にしたいと常々思っています。私は、叶奈さんと涼太さんとのご縁は、末永く繋がることを願っています……なんて、年甲斐もなく恥ずかしいことを申しましたね」
悟はそう言うと、苦笑した。
叶奈は、そんな悟に対して笑顔を向けた。
「ちっとも恥ずかしくないですよ! 私は、悟さんの気持ちに賛成です! 私も、このご縁が長く続くといいなぁと思います」
悟は、優しく微笑んだ。
「ツナグさんたちは、今頃どうしてるのでしょうかね? あちらも、楽しんでいらっしゃるといいですね」
「ツナグは、寝るのが早いので、今頃眠っているかもしれませんね」
悟の言葉に、叶奈はカラカラと笑った。
「そうですか。ツナグさんは、健康的な生活を送っていらっしゃるのですね」
「そうなんですよ! 寝るの早いし、起きるのも早くて!」
叶奈は、目を大きく見開きながら、悟に説明した。
そんな話をしているうちに、駅へと辿り着いた。
「では、私はここで」
悟の言葉に、叶奈が続く。
「はい。今日はありがとうございました」
「こちらこそ、楽しい時間をありがとうございました。帰り道、お気をつけください」
「ありがとうございます。悟さんもお気をつけて」
「ありがとうございます。では」
悟はそう言うと、人混みの中に消えていった。
人混みに完全に溶ける前に悟が振り返った。
叶奈は、大きく手を振る。悟も小さく手を振ると、完全に人混みに溶けていった。
叶奈は、大きく深呼吸すると、勢いよく改札を通った。
夜が更けていく。それぞれを優しく包むように。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。
人のご縁って不思議ですよね。
この物語のような繋がり方のご縁はありませんが、ありがたいことに、長く続くご縁に恵まれているなと思う今日この頃です。
そんな優しさに包まれたご縁を、これからも大切にしていけたらなと思います。




