EP.28
土曜日になった。
叶奈は、駅の改札ロビーで腕時計を見る。
「少し早く着いてしまったかな」
時計は、午後一時五十分を表示している。悟の姿は、見当たらない。
待ち合わせ時間は、午後二時。確かに早すぎるとも言えないことはない時間である。
叶奈は、そわそわしながら、もう一度腕時計を見た。
「叶奈さん、おはようございます」
あたたかく、優しい悟の声が叶奈の耳に入った。
「悟さん、おはようございます」
叶奈は、柔らかい笑みを悟に向ける。そんな叶奈に、悟も優しく微笑む。
「それでは、行きましょうか」
「はい」
二人は、叶奈が行ったカフェに向かう。
「叶奈さんは、あれからツナグさんとお会いになりましたか?」
悟が、叶奈の横顔を見つめる。
叶奈は、悟に顔を向けながら、返事をする。
「会っていないんです。会いたいとは思うのですが、彼に会う手段がわからなくて……」
雑踏の中に、叶奈のミュールのカツカツという音が響く。
「そうですか……」
悟は、少し寂しそうに眉尻を下げた。
そこで会話が途切れてしまい、二人は無言で歩く。
心なしか、靴音が大きくなった。
「あ! ここです! このカフェです!」
お互い会話に詰まってしまったタイミングで、そのカフェは現れた。
コンクリートの壁に、明るい茶色の木の扉。扉にかけてあるプレートには「OPEN」の文字が書かれている。
叶奈は、そっと取っ手に手をかけると、静かに扉を開けた。
カランカランと、扉のベルが鳴る。
「いらっしゃいませ」
涼太が、叶奈と悟の前に姿を見せる。
「「あ……」」
叶奈と涼太は、同時に声を出した。二人とも、互いのことを思い出していた。そして、また会えることを願っていた。
「お、お席にご案内いたします」
涼太は、しどろもどろになりながら、叶奈と悟を案内した。
「すぐにお水をお持ちします」
そう言って、涼太は席を離れる。
「叶奈さん、先ほどの男性が、叶奈さんが仰っていた方ですか?」
「はい、私がツナグと過ごした場所で一緒に過ごした方です」
叶奈の返事に、悟はうんうんと頷きながら、話を聞く。
「彼の様子ですと、彼も叶奈さんとお会いしたかったみたいですね」
「そうですか? でも、話しかけるタイミングがなさそうですね……」
叶奈の言葉に、悟はまた頷く。
「確かにそうですね。タイミングが合えば、声をかけてみましょうか」
悟の言葉に、叶奈はそっと頷いて返事をした。
「お待たせしました。メニューはこちらです」
「ありがとうございます」
「ありがとうございます」
涼太の言葉に、二人はバラバラにお礼を伝えた。
「ごゆっくりお過ごしください」
涼太は一礼すると、席を離れた。
「まずは、飲み物を決めましょうか。ケーキも美味しそうですね」
悟は、にこりと笑うと、「スペシャルブレンドが気になりますねぇ」なんて言いながら、メニューを凝視した。
「叶奈さん、カウンターに置いてあるケーキが美味しそうですね。どれが食べたいですか?」
悟は、ニコニコと笑みを浮かべながら、叶奈に問う。
「そうですね……。あのナッツがたくさん乗ったタルトが気になります」
「いいですね。私は、ガトーショコラでしょうか? あのチョコレートのケーキが気になります。飲み物は決まりましたか?」
悟は、さくさくとメニューを決めて確認していく。
「私は、アイスレモネードにします」
「そうですか。私は、スペシャルブレンドにします。では、これで決まりですね。すみません」
悟は、店員を呼んだ。涼太しかいないので、涼太が返事をして、二人のテーブルへ向かった。
「お決まりでしょうか?」
「スペシャルブレンドとアイスレモネード。それから、カウンターにある木の実のタルトとガトーショコラですかね? あのチョコレートのケーキをお願いします」
悟は、慣れたように涼太に注文する。
涼太は、さらさらとメモをすると、注文を復唱した。
「スペシャルブレンドおひとつと、アイスレモネードがおひとつと、木の実のタルトがおひとつと、ガトーショコラがおひとつ。以上でよろしいでしょうか?」
「「はい」」
「かしこまりました。では、メニューをお下げします」
涼太は、そっとメニューを取ると、一礼して離れていった。
「ケーキもコーヒーもレモネードも楽しみですねぇ」
「はい、前回来た時もとてもおいしかったので、とても楽しみです」
叶奈は、今日悟に会うまでの出来事を話した。悟は興味深げに聞きながら、叶奈の小説の話に耳を傾けた。
「小説を書くという夢が見つかってよかったですねぇ」
「はい、まだ趣味程度の範囲ですが、いつか本にしてみたいです」
「応援してますよ」
気付くと、部屋全体が少し暗くなっていた。
二人が窓に視線を移すと、今にも降り出しそうな曇り空が広がっていた。
ここまで読んでいただきありがとうございます(^ω^)
レモネード、おいしいですよねぇ(*´ω`*)
ナッツのケーキもガトーショコラもコーヒーもおいしいですよねぇ(*´ω`*)
引き続きお楽しみいただけると幸いです(*uωu*)
感想、評価等いただけると嬉しいです(*´ω`*)




