EP.26
叶奈は、ほうっとため息をつく。
「いかがされましたか?」
叶奈のため息に、悟が反応する。
「いえ、もうツナグたちには会えないのかなと思ってしまって……」
叶奈は、窓の方に視線を向ける。そんな、叶奈に、悟は優しい視線を向ける。
「きっと、また会えますよ」
「そうでしょうか?」
叶奈の不安げな声に、悟はにっこりと笑みを浮かべる。
「大丈夫ですよ。林太郎も再会できたのですから」
叶奈は、ハッとした。林太郎は、再会を果たしている。ということは、叶奈にもそのチャンスがあることを示している。
「会いたいな……」
叶奈が、そっと呟く。
「大丈夫です」
悟が微笑みながら、コーヒーカップに手を伸ばす。
叶奈はクッキーに手を伸ばすと、一口齧った。
「そうですよね。きっと会えますよね」
「そうですよ」
二人の間に、あたたかい空気が流れる。
「そういえば……」
「どうしました?」
叶奈の呟きに、悟が反応する。
「実は、向こうの世界で出会った人を、この世界でお見かけしたんです」
「ほう?」
悟が興味深げに、コーヒーカップを持ったまま叶奈を見つめる。
「実は、この間とある喫茶店に行ったんです。どこか懐かしい雰囲気に釣られて入ったんですが、どうも見覚えがあるなと思って。そうしたら、私が夢の中で訪れたお店だったんです」
叶奈の話に、目を見開く悟。言葉は何も発していない。
叶奈は、悟の反応を気にせず、言葉を続ける。
「でも、はじめは気づかなくて。で、マスターの声もどこかで聞いたことがあるなって思って、思い切って話しかけたら、マスターの方も思い出したようで。いろいろあの世界を去った後の話をしたんです」
叶奈は、ここまで話すと、コーヒーを一口飲んだ。
「なるほど……。それは、とても興味深い出来事ですね」
悟は、顎に手を添えながら、考える仕草をする。
「悟さんに、伝えたつもりですっかり忘れてて……。このことを伝えに行かなきゃと思ったんです」
叶奈は、もう一口コーヒーを飲む。コーヒーは、まだ少しあたたかい。
「そうなのですね。伝えに来ていただき、ありがとうございます」
「いえ……。ひょっとすると、まだ何か忘れているかもしれないんですけど……」
「そのお気持ちだけで、十分です」
悟は、優しく微笑むと、言葉を続けた。
「マスターとは、その後お会いしたのですか?」
「それが、まだなんです。なかなか行けてなくて……」
叶奈は、両手でコーヒーカップを持ち、肩を竦めた。
「なるほど……。それでは、来週のどこかで、一緒にその喫茶店に行ってみましょうか」
悟の言葉に、叶奈は大きく目を見開く。
「え! 良いんですか!?」
「えぇ、もちろんですよ」
悟は、にっこりと笑う。
「では、来週の土曜日は空いていますか?」
「はい! 空いてます!」
「それでは、土曜日の午後二時に最寄りの駅で待ち合わせしましょう」
悟の提案に、叶奈はコクコクと頷く。あっという間に、詳細が決まっていった。
「さて、それでは、そろそろ日も傾いてきましたし、お帰りになられますか?」
悟の言葉に、叶奈はハッとして窓を見た。窓の向こうが、オレンジ色に染まっている。時計を見ると、午後五時を指していた。
「本当だ! もうこんな時間! ごめんなさい! 長居をしてしまって……」
叶奈が謝ると、悟は微笑んで言葉を返す。
「いえいえ、こちらこそ、楽しいひとときをいただきありがとうございました。まだ完全に日は落ちていませんが、お気をつけてお帰りくださいね。土曜日、楽しみにしております」
悟の言葉に、叶奈はにこっと笑った。
「私も、楽しみにしてます」
「さて、それでは、出入口までお見送りいたしましょうか」
「ありがとうございます」
出入口に着くと、叶奈は振り返って、ぺこりとお辞儀をした。
「今日もごちそうさまでした。土曜日、よろしくお願いいたします」
「こちらこそ、ありがとうございました。土曜日、楽しみにしておりますね」
悟は、微笑んだ。
叶奈もにっこり笑うと、夕焼けに向かって歩き出した。
夕暮れが、叶奈をオレンジ色に染める。
悟は、そんな叶奈を眩しそうに見つめた。
ここまで読んでいただきありがとうございます(^ω^)
叶奈と悟は、歳の差はあれど、いい友人関係を築いているなぁと思う今日この頃です(*´ω`*)
引き続きお楽しみいただけると幸いです(*uωu*)
感想、評価等いただけると嬉しいです(*´ω`*)




