EP.24
目覚ましが鳴って、叶奈は目を覚ました。正しく言うと、まだ頭は起きていない。
まだ覚めていない頭で、時刻を確認する。
「あと五分……いや、十分……」
眉間に皺を寄せながら、布団を頭から被る叶奈。スヌーズを設定して潜り込んだ布団の中は温かい。
鳥がピーピー鳴きながら窓の外を通り過ぎていく。叶奈の耳に、うっすらその音が届く。しかし、彼女は起きない。
どこかの誰かの日常音が聞こえ始めた頃、目覚ましがもう一度鳴った。
叶奈は、もう一度眉間に皺を寄せる。目覚ましを止めて、のっそりのっそりと起き上がる。しかし、彼女の頭はまだ起きない。
寝ぼけまなこのまま、ベッドからゆっくり立ち上がり、大きく伸びをする。
半目の状態で、洗面台へと向かう。水道の蛇口を捻ると、冷たい水が出てきた。
叶奈は、何度か流れる水に一瞬ずつ指をつけてから手のひらに水を溜め、一気に顔を洗った。ほんの少し目が覚めると、軽く口を濯ぎ、顔を拭いて台所へ向かう。
グラスに、冷蔵庫を冷やしておいたミネラルウォーターを注ぐ。そして、一気にその水を飲んだ。
食道、胃へと、冷たい感覚が移動していく。それと同時に、叶奈の目が開いていく。
「よし、起きた」
おまじないかのように言葉を発して、食パンをトースターで温め始める。それとほぼ同時に、電気ケトルでお湯を沸かし、紅茶を作る。
缶から、ティーバッグを取り出す。種類は、イングリッシュブレイクファストティー。
ティーポットは持っていないので、そのままマグカップにティーバッグを入れる。紐だけ外にかけるように出し、お湯を入れる。
お湯をたっぷり入れると、雑貨屋で見つけたマグカップ用の蓋で蓋をして蒸らす。
今日は、砂糖を入れて飲む。風味や香り、コクが強い種類なので、鼻腔や舌を刺激して目をさらに覚ましてくれると、叶奈は思っている。根拠はない。
紅茶を蒸らす間に、トーストが焼き上がる。
「あちちっ」
耳たぶで指を冷やしつつ、皿にトーストを載せる。
冷蔵庫からマーガリンを出し、椅子に座る。
良い感じに三分紅茶を蒸らしたところで、ティーバッグを取り出す。紅茶の良い香りが、叶奈の鼻をくすぐる。
「いただきます」
叶奈は、そっと手を合わせて言うと、マーガリンを食パンにつけ始めた。
部屋に、あたたかい香りが充満する。
黙々と食べながら、今日の予定を考える。
「今日は、悟さんに会いにいく。会いに行きすぎかな?」
ほんの少しの不安が、叶奈をつつく。しかし、そんな不安を払拭するかのように、空は晴れている。
あっという間に朝食を終えると、叶奈はさっさと準備を済ませて、玄関を出た。
前回同様、バスと電車に揺られて、植物園へと向かう。
叶奈は、なんとなく会うことへの緊張感と闘いながら、悟のいる植物園へと向かう。
「大丈夫。大丈夫」
植物園に着くと、土曜日ということもあり、以前来た時より、人が多くいた。
忍者のように人の間をすり抜け、目当ての建物へと向かう叶奈。
しばらく植物園の中を進んでいくと、その建物は、思ったより早く目の前にやってきた。
「あった……」
深呼吸をする叶奈。心臓の音が、自分の耳に入ってきそうな感覚が叶奈を襲う。
叶奈は、さっきより大きな深呼吸をして、足を前に動かした。
「すみません」
ほんの少しざわついてはいるものの、以前と変わらず、静かな場所だった。
叶奈は、悟の姿を探して、あたりを見渡す。
「いらっしゃいま……おや、叶奈さんではないですか」
奥から、悟が顔を出す。
「悟さん。こんにちは」
「こんにちは」
互いに、相好を崩す。二人の空白時間は、あっという間に埋まった。
「前回よりお顔の色がよろしいですね」
「そうですか? あ、でもこんなことがあったんです」
叶奈は、ことの次第を話そうとする。そんな叶奈を、悟は手で制した。
「ここで立ち話もなんですし、椅子に座って、ゆっくりお話しましょうか」
悟は叶奈を静止し、前回話したテーブルにお菓子を置き、コーヒーを用意し始めた。
ほんの少しいた客は、いつの間にかいなくなっており、その一瞬の隙をついて、悟は「CLOSE」の板をドアノブにかけた。
コーヒーの香りが、フロアに漂う。叶奈は、大きく鼻から息を吸い込んだ。
「さて、それではお話をお伺いいたしましょうかね」
「はい。実は……」
叶奈は、ゆっくりと自分の身に起きた出来事を話す。
悟は、驚きつつも、叶奈の言葉を信じて言葉を待った。
悟は目尻に皺を作りつつ、ニコニコと叶奈の話を聞いていた。
叶奈は、一口コーヒーを飲み、喉を潤して一息ついた。
二人の間を、静かな時間が流れる。コーヒーの湯気は、ゆっくりと立ち昇っている。
二人の間は、時が止まっているようだった。
ここまで読んでいただきありがとうございます(^ω^)
悟みたいな男性と話すと、なんだか落ち着く気がするなぁと思います(*´ω`*)
この二人のやりとりが結構好きだったりします(*´ω`*)
引き続きお楽しみいただけると幸いです(*uωu*)
感想や評価等いただけると嬉しいです(*´ω`*)




