突然
「ひゃっ!」
不意に肩を突っつかれ、高い悲鳴をあげてしまう。
長い髪も相まってその姿はさながら女性のようだ。
突然の行動に驚き、メニュー画面を閉じてしまう。
恐る恐るゆっくり振り向くと先程の二人組がニヤニヤしながら立っていた。
「おっ、女の子じゃん! マジでかわいいー!」
「オッ……オレラトアソバネ?」
男はチャラく飄々とした態度で蓮に話しかける。
恐らくはナンパだろうか、男から悪意を感じる。
もう一人の男も便乗して話しかけるがどういうわけか棒読みだ。
(えっ……えぇーー!)
(あああああ!!!勘違いされたぁぁぁぁぁ!!!)
(か、髪切っておけば良かったぁぁぁぁぁぁ!!!)
(ど、ど、どうしよう……)
ナンパされたことよりも女性と勘違いされる事に羞恥心を覚える。
穏やかではない胸中でなんとか冷静に振る舞おうとする。
「ごめんなさい……今急いでるんで!」
「それと……僕……男です!」
そう言い放ちなんとか男二人を振り切り家に向かって走ろうとする。
しかし、服の裾を掴まれバランスを崩し倒れてしまう。
「うわっ!」
倒れてうつ伏せ状態になると二人が耳で囁いてくる。
笑みを浮かべ、悪意に満ちた表情で。
「あのな……俺らこえーんだぞ……」
「オレラヲダマシテユルサン!」
そう言うと二人組は上から蓮を押さえつける。
口を開きながらはははと狂い笑いをする。
「離して……くださいっ!」
苦しそうな声で二人に懇願する。
このゲームに痛覚はないが、人に体を抑え込まれているという屈辱が苦しそうな声を生む。
「これ以上……やめてっ!」
広場に高い声が響く、どうやら蓮の声ではない。
その響きが消えた瞬間に看板の裏からいきなりさっきの白髪の人物が飛び出した。
実は練をこっそり尾行していたようだ。
走り出し飛び出していくと二人にドロップキックを思いっきりカマす。
二人は驚く暇もなくあっさりと吹き飛ばされる。
「この子ゲーム始めたてなんだよっ!」
「いじわるしちゃダメ!」
再び高い声が響いていく、二人は完全に怯みさっきの威勢はどこへやら、すっかり怯えている。
「ありがとうございます!」
蓮が感謝を伝える。
ゲームを初めてすぐに窮地を救ってくれたからだ。 本来なら見て見ぬふりされてもおかしくはない。
ゲームとはいえこのあとどういう事をされたかはわからない。
しかし、温かい雰囲気を切り裂くように、二人組の一人が声を荒げる。