現実と仮想
蓮がふと目を開けると見覚えのある景色が入り込んでくる。
画質にはまったく違和感を感じない、現実の風景と仮想空間の風景を同時に比べてもわからないほど。
外出の際によく使う見慣れた景色だ。
(すごい……赤代駅だ……)
赤代駅には人が大勢歩いており、大きな賑わいを見せている。
果たしてこの中の何人がプレイヤーなのだろうか。
広さはちょっと小さくなっているとはいえ、相当な広さを誇る。
更には聞き覚えのあるアナウンスが耳に入り込んでくる。
ここは現実なのかと錯覚するほどだ。
(ここ……本当に仮想空間……? )
疑問に思った蓮は試しに地面に手を付ける。
(いや、変わらないっ、確かに駅の床ってこんなかも)
VRの技術力の高さに驚きつつ駅から出ることにした。
早く三人に会わないとならないからだ。
そう一歩踏み出すとすぐに足が止まる。
(……なんか視線を感じるような……)
蓮が後ろを振り向き、違和感を覚える。
初めてのVRということもあり緊張で妙な感覚に陥っている。
しかし、本当に人が覗いてるのには気付かないようだ。
(あの長い髪の子が……ちゃんと守ってあげなくちゃ……)
(えっと……)
白色の長い髪の人物がこっそり蓮を覗く。
人混みに紛れ気付かぬように。
しかし、その目から悪意は感じない、むしろ見守るような雰囲気すら出ている。
見守りながらチャットで仲間と会話している。
何かの連絡だろうか。
蓮は多少の違和感を抱きつつ改札を抜け売店を通り、駅の正面までたどり着いた。
(しかし本当にすごい……売店の配置もバッチリだ)
正面口から出ると見慣れた景色が目に飛び込んでくる、そしてプレイヤーを温かい太陽が包み込む。
ほどほどの高さのビルが立ち並びその中でも最も目立つ大きなビルにはスクリーンが設置されている。
スクリーンにはVRスポーツの速報が流れている。
(これ……本当にゲームなの?……眩しいし……感覚も現実に近い……)
あまりのリアルさにここは現実なのではと疑ってしまう。
練はメニュー画面を開くことにした、メニュー画面を開けばゲームだとすぐわかるからだ。
練は操作どおりに動かしメニュー画面を開こうとする。
「開いたっ! 本当にゲームの中なんだ!」
メニュー画面が開いたことに驚き、思わず声に出してしまう。
現実では絶対にありえない画面が目の前に広がる。
そして一つ一つ項目が綺麗に並んでいる。
現実のような感覚ながらこの中は完全にゲームだ。
そしてそのまま自分の武器やステータスを見ようとした。
(えっと……ステータスがここか……)
しかし、操作している間に二人組の男が蓮に迫る。
後ろの方から聴こえる足音に気付かないまま操作を続ける。
蓮がメニュー画面を開いている間にその男二人は蓮の肩に手を伸ばす。