涙色
「あっ……あの……さ……」
次は楓が蓮に話そうとする。
彼は本当は質問するのが怖い、上手く言えなかったら上手く伝えられなかったらどうしよう、そんな事ばかり思い浮かんでくる。
それでも一歩勇気を踏み出して言葉を形にする。
「学校で……ずっと……ぼくらに話しかけなかった……よね……話しかけても……無視するし……どう……して」
「話そうと……しなかったの……」
たどたどしくそれでもなんとか思いを伝えた。
涙が溢れそうな顔をなんとか抑えながら。
少なくとも伝えたいことは伝えられたように思える。
体を震わせながら返答を待つ。
「……簡単だよ……」
重い口を開きボソボソと喋る。
「皆が嫌いになったからだよ……挫折も苦労もしていないような人間に付き合うのが鬱陶しくなったからだよ、自分より恵まれた人間なんか増して大っ嫌いだから!」
愚痴に近いような言葉がつらつらと重なる。
その姿に3人はショックを受けざるを得なくなった。
楓はどうしてという顔で蓮を見つめる。
そして、3人を突き放す言葉を言い放つ。
「僕の前から……消えてくれ!」
突き放すように吐き捨てるように言葉を話す。
気が弱い楓にとっては一番辛い言葉だろう。
今まで信じてきた、信じられてきた関係に傷をつけられた。
実際に泣きそうな顔で蓮をただ見つめる。
それでも今日は違った、楓は蓮に寄り添うように近づき、優しく声をかける。
「そっか……ずっと辛かったんだね……その目を見てればわかるよでも……君がぼくらの事を嫌いになっても……ぼくらは君の事が大好きだよ……!だから……辛いことあったら……何でも話して……」
抑えていた涙が遂に溢れだす、それでも彼は笑ってみせた。
友達のため仲間のために笑った。
泣き笑いの顔で震えた声で話しかけた。
「それで少し楽になってくれたら嬉しいな……!」
一つの汚れもなく純粋に微笑み蓮を励ます。
酷い言葉を言われ泣きたい気持ちを我慢して笑って彼にそっと寄り添う。
蓮はあまりにも意外な言葉にゆっくりと目から涙を流す、涙は頬をつたっていき、そっと床に落ちた。
しかし、その涙を振り払うように三人に頭を下げる。
「もう……帰ってよ……もういいんだよ僕のことは……あんな酷い言葉を言った……だから僕に友達でいれる資格なんかない……僕のことはもう忘れて……自分のために生きて」
弱々しく言葉がこぼれる、しかし先程のような強い拒否感は感じられない。
むしろ三人を気遣っているような雰囲気すら感じ取れる。
「いやっ!帰らねぇっ!お前に前を向いてもらうまで帰れねぇんだオレはっ!」
「さっき……言ったよ……何があっても嫌いにならないって……」
二人が蓮を説得させる。
翔汰の力強さと楓の優しさ、2つが入り混じった言葉だ。
その言葉でもまだ心は動かない。
その様子を見た陽花がさらに畳み掛ける。
蓮との距離を詰めじっと目を向き合う、そして、大きく口を開き叫ぶように話しかけた。
「全部……嘘なんでしょ!才能がないのが辛くてやめたとか……皆が嫌いになったとか……そんなの全部嘘っ!私知ってる!話しかけてもらえなくなったあとも誰にも見られないところでずっと泣いてるの見てて……」
大声で蓮に対して語りかける。
その剣幕には誰もが黙り込まざるをえなくなった。
しかし、その後地面に顔を合わせ先程までの勢いが嘘のように静かな声になる。
「本当は……本当は……違うんでしょ……答えてよ……」
「レンくんを……忘れたくないよ……思い出にしたくないよ……」
(それに……まだ、本当の想いを伝えてないから……)
そう言い切るとうつむき自分の手をギュッと握りながら目を閉じる。
祈るようなそんなふうにも見える行動だった。
しかし、そんな彼女を見て蓮の心がついに動いた。
小粒だった涙もゆっくりと大粒の涙になっていく。
さらに嗚咽をとうとう我慢できずに漏らす。
そこから本音を叫ぶように吐き捨てるように叫んだ。
「全部嘘だよ……!本当は……やめたくなかった……諦めたくなかった……!怖かっ……たんだ……自分がどんどん弱くなってくのが……周りに天才……って言われて……その気になって……でも、全然……違ったんだ……僕は……普通の人間だって……話したく……なかったのも……誰かと話して……愚痴を吐き出しそうになって……誰かを傷つけそうな気がして……」
言葉に詰まり目を瞬きさせしゃっくりしながら3人に話しかける。
「ごめんなさい……こんな嘘つきで……強がりな人間で……あんな酷い事言っても友達だと思ってくれる……?」
言いたいこと全部吐き出しとうとう地面に顔をつけ声を出し泣き始める。
それは文字では到底言い表せないような状態だった。
ごめん、ごめんとずっと繰り返して言う……
そんな彼を優しい目で三人が見つめる。
泣き出してしばらく立つと翔汰が優しく肩を叩く。
「オレたちはずっと信じてたからなっ!」
「今度は……僕も頑張るから……」
「もう強がらなくていいからね!」
三人が優しく言葉をかける。
ありがとうと言葉を伝えると蓮は自然と笑顔になっていく。
作り笑いでも愛想笑いでもない正真正銘の笑顔だ。
「泣けるだけ……泣いて……叫びたいだけ叫んで……楽になった気がする……!」
顔に涙を浮かべながらも笑顔で三人の方を向くその目はもう虚ろな目はしていない。
純粋で、それでいて繊細で、見た者誰もを引き込む目をしている。
涙混じりの目はまるで宝石のように輝いていた。
そして、蓮が言葉を言い切った瞬間、部屋のドアが何者かに開けられる。
まるでタイミングを待っていたかのように勢いよくドアが動く。
名前 小鳥遊 楓
身長 159cm
血液型 AB型
誕生日 3月13日
好きな事 ゲーム アニメ鑑賞 好きなジャンルは学園モノ
好きな食べ物 健康にいいもの 食べると気分が良くなる
嫌いな食べ物 健康に悪いもの 食べすぎると具合崩しちゃう
誰にも言えないこと 声が高いので女の子のキャラのアフレコ遊びにハマってる