最低限の基本
「重っ!」
思わずリアクションを起こしてしまう。
武器の重さは現実に基づいて決定される。
木製の武器や小さい武器なら軽く調整されるが金属製の武器や大きい武器であるほど重い設定に調整される。
刀はどちらかと言えば軽いほうだが武器の装備がいきなりだったので重く感じるようだ。
どうやら次は武器に関する練習のようだ。
「今からお前らには武器の操作の練習をしてもらう……!」
「武器には一つ一つ特徴があるんだっ!武器の事を理解すれば試合の進め方が楽になるっ!」
「そして、選手には一人一人プレースタイルがある……」
「まあ、それは部活の時にっ!」
リオが言葉を言い切ると人形の的が目の前に現れる。
この人形を倒せということだろうか。
蓮たちは武器を構え的をじっと見る。
(重さにすぐ慣れてきた……持ってれば意外と慣れるものだな……)
刀を持ち重さに慣れた感覚を感じる。
(武器は……僕が刀で……槍と剣と杖か……いい感じにバラけたな……)
蓮が他の人の武器をチラッと見て確認する。
確認を終えてすぐ攻撃しに向かう。
攻撃範囲に入ると両手で刀を握り武器を高く構える。
(最初は……一気にっ……!)
上から一思いに振り下ろす、風切り音と共に刀が下に向かっていく。
勢いよく振り下ろされた一撃は人形の肩を叩き切る。
大ダメージとなり人形のHPが一気に減っていく。
(よしっ! いいダメージ入った!)
一見順調にも見えるが大樹は蓮にアドバイスを送る。
「力み過ぎだっ……! もうちょっと抑えを利かせた方がいい……確かに攻撃力は出るが実戦じゃ相手に避けられる……振り下ろしの速さと確実さ、この2つの理想のバランスを見つけろ……」
蓮はしっかりと相手の目を見て首を縦に振る。
どうやら有意義に感じたようだ。
(一個一個手応えを積み重ねていくしかない……! この世界じゃ僕は天才じゃない……!)
蓮がそう決意を新たにする、そしてその考えどおりに一つ攻撃方法を変更する。
(片手で持ってみよう……)
その考えどおりに刀を右手に持ちさっきと同じような形で刀を持ち上げ高い所から振り下ろす。
(さっきより80%ぐらいの力で……!)
片手持ちと力を抑えることでスムーズに刀が振り下ろされる。
それもあり絶妙なバランスを実現させることができた。
刃が人形に当たると人形のHPが減少する。
やはり先程よりも減少量は少ない。
それを見た大樹は蓮に声をかける。
「持ち方は片手のほうがいいな……片手持ちを継続しろその感じでやれば、実戦でやっていけるはずだ……!」
蓮はその話を聞くとメニュー画面を開きそこからメモを書く。
力を入れすぎない、片手でOKと教わった事を忘れないようにメモに書き込む。
(よし……これで忘れない……)
メニュー画面を閉じた瞬間だった、雷のような大きな音が部屋中に響く。
音がした方向に目をやると翔汰が人形の腹を完全に突き刺していた。
その人形のHPは0になっていた。
そして、自信溢れる表情でニヤッと笑い、その様子を全員で見ていた。
「すごい攻撃力だっ!ユウトが負けたのもわかる!」
リオがその実力に感心する。
攻撃力というものは身体能力だけで出せるようなものではない。
武器をうまく当てる、つまりはゲームスキルも関わってくるからだ。
(確かに攻撃力はすごい……が、おそらくゲームスキルはない……ほぼ身体能力で出した攻撃だろう……)
一方の大樹は身体能力の高さこそ認めたもののゲームスキルはないと読み取った。
とはいえそこは大樹が想定していた通り。
翔汰にゲームに馴染みがない以上、ゲームスキルがないことも仕方ない。
同じ三年生でも考えは正反対だ。
その後も一年生は練習を続ける。
蓮は他人のアドバイスにも耳を傾けながら自らの練習をこなす。
そのメモにはアドバイスがきっちり刻まれていた。
体全体をしっかり使って攻撃、足の踏み込みを意識するなど他人に向けられたアドバイスも含め書き連ねていた。
メモに書いたアドバイスを意識して蓮はある行動に出る。