入場
練習場の扉を開け中に入り込む。
そこにはホテルのような受付と奥につながる細長い廊下が目に見える。
大樹が真っ先に受け付けに行きAIの受付担当とスムーズに会話を交わし使用許可を得る。
そして部屋の番号を皆に伝える。
「11号室だ……」
「それじゃ行こうっ!」
リオの声掛けと共に全員で11号室に向かう。
長い廊下の真ん中ぐらいまで歩くようだ。
向かう最中に歩きながら4人で会話を繰り広げる。
「楽しみだっ! お前と勝負するの!」
「久々だからね、こっちも楽しみだよ」
溢れる闘争心を抑えきれず歯を見せ笑う。
その様子を見て楓が言葉を発する。
「僕が……一番最初に……戦いたい……」
「えっ、わたしが先!」
「いや!俺が最初に勝負する!」
「えっー、絶対わたし!」
「僕が……このゲームのこと教えたい……」
どういうわけか取り合いに発展する。
蓮はその様子を見てポカーンとしたあと言葉を返す。
「僕で取り合いにならないでよ……」
呆れながら笑みを浮かべる、久々に4人で遊べる。
そう考えると気持ちも上がってくる。
その様子をリオが微笑ましく見つめる。
(仲良いんだね……本当に……)
「って、えぇ!」
いつの間にか蓮の手を引っ張り合いさながら道具のように手を引っ張り合う。
蓮はなんでこのような事になったと困惑したような顔をする。
「ああああ!!取り合わないで!取り合わないで! 髪痛いっ! 髪痛いっ!」
「お前らイチャつくんじゃねぇーぞ、カップルじゃねぇんだから、そもそもこのゲームに痛覚ねぇからな」
大樹が冷静にツッコミを入れる。
「ほら、着いたぞ」
四人で取り合いという名のイチャつきを繰り返すうちに11号室に到着した。
「もう到着したから……離してぇ……」
弱々しく訴えかけると3人はようやく手を離す。
楓が繰り返し頭を下げ謝罪する。
蓮は笑いながら三人を見つめる。
(こいつら、久々にお前に会えて嬉しかったんだよ……)
大樹はそっと笑みを浮かべる。
大ケガ以来暗い表情しか浮かべなかった弟が笑顔を見せている。
それだけでも彼にとっては大きな喜びになる。
大樹が暗証カードをスキャンし扉が横にスッーと動く。
その瞬間に全員で部屋に入っていく。