実力を証明するため
「お前ら賑やかそうにやってんなぁ……!」
家のドアからメガネをかけた青年が出てくる。
そう、大樹だ。
薄ら笑いを浮かべその姿は不気味な雰囲気を纏う。
その雰囲気でその場にいる全員に話しかける。
「ようこそ、仮想世界へ!」
「早速だが君たちの実力を見る……」
「証明してくれ……自分自身の実力を……」
言葉を言い放ち新入生へ宣言する。
大樹は新入生をしっかり育てたいと考えておりそのため知り合いから4人を誘った。
もっとも、適当に選んだわけではない。
大樹が注目したのは4人の仲の良さ。
チームで連携を作れる、これは団体戦において大きな武器になる。
このゲームは1対1の勝負とはいえチームワークは大事だ。
個人に注目すると身体能力も少なからず関係してくるこのゲームにとって翔汰はこれ以上ない人材と言えそうだ。
事実、翔汰は既に怪物の片鱗を見せつつあるが頭脳や戦略が不安視される。
楓はこの中では唯一の経験者なもののメンタルに不安がある。
陽花は実力が一番未知数であるもののそれ故一番上手い可能性がある。
蓮は野球に関しては実力の高さを見せつけたものの、才能があるタイプの選手ではなかった。
過去もあり大樹の中では兄弟とはいえ蓮を一番不安視しているようだ。
「練習場へ行くぞ……!」
「リオも着いてきてくれ」
「はいっ!」
「他の1.2年生は俺の家で休んでいけ……」
「新一年生は俺たちで面倒を見る」
そう言うと5人を連れて練習場に向かう。
部活ではいつも借りている練習場だ。
そこの案内も兼ねての事だろう。
紅咲家から歩いて15分……。
練習場は屋内で天候関係なく練習できる。
ゲームなのであまり関係はないが。
景色はより町中の近くになりマンションやビルも立ち並ぶ。
近くには赤代高校もあり彼らが練習をするにうってつけの場所だ。
ゲーム内に学校の機能はないが。
「ほら、着いたぞ」
「一年生の実力、どんなもんなんだろうな……」
「ここから始まるんだね……」
「彼らの伝説が……!」
新三年生二人がそう呟く、そして心の底から雰囲気を感じている。
いつもとは違う何かを……。
(こいつら……)
(目の色が違うっ!)