最後の二人
唯一まだ来てない陽花が到着しそうになっている。
手には大量の荷物を抱え、笑顔で機嫌良さそうにスキップしながら向かってくる。
「たくさん買って来たよっー!」
「愛する弟のためにっ!」
腕を元気よく上げウィンクしながら蓮たちを見つめる。
どうやら到着が遅れたのは買い物をしていたからのようだ。
ちなみにゲーム内の買い物は基本的にゲーム内通貨で済ませれるものの一部の商品は現金が必要になる。
もっとも、普通に遊ぶだけならゲーム内通貨のみで十分だが。
「ごめーん! 買い物と散歩が楽しすぎて遅れちゃった!」
「いや、それはいいんだけどさ……」
蓮が会話を切り込むともう一人の女性に向かって声を出す。
「なんで姉ちゃんがいるの!?」
思わず指を指し口を大きく開け体を小刻みに震えさせる。
予想外すぎる人物の登場に開いた口が塞がらない。
「そりゃ……私が部員だから……!」
「とゆーかお姉ちゃんに向かってその態度……」
「失礼っ! お姉ちゃんはレンくんをそんな悪い子に育てた覚えはないっ!」
明音は弟に向けて珍しく説教をする。
もっとも、本気で怒ってはおらずちょっとからかうつもりだった。
しかし、蓮はこれを真に受けてしまう。
「ごめん……なさぃ……」
「悪口いって……せっかく僕のこと面倒見てくれてたのに……僕は出来の悪いおと……」
さっきの言動をよっぽど後悔しているのか謝罪以上に自分自身を卑下し始める。
「あーごめん!ごめん!本気で言ってないよぉぉぉなんでもするから許してぇぇぇ!!!!」
明音が練に抱きつこうと暴走をする。
蓮はそう簡単に触らせまいと華麗に避ける。
「またアカネさんの暴走始まっちゃった……ふふふ」
(……いいなぁ……兄弟って……)
陽花が呆れ笑いしながら微笑ましそうに見つめる。
しかし、心の底ではどこか二人を羨んでいる。
その感情が思わず溢れ拳をぎゅっと握りしめる。
そしてやや憂いを浮かべるような顔をする。
「ちょっと待って……」
リオが会話を遮り質問を叩きつける。
「クラスでアカネさんの妹がいるって噂になっててっ! しかも相当美人な……」
「レンくんって妹さんいるのっ?」
リオが会話を切り込むと練がすぐに反応し避けながら叫ぶ。
「聞かないでくださいッ!」
今日一大きい声でリオを牽制する。
大きい声を出してる間にとうとう明音に捕まってしまう。
「わっ、わかった……」
あまりの気迫にリオも後手にまわる。
その様子を見た陽花はふふふっと笑う。
翔汰はそれを見て疑問の表情を浮かべる。
(さっきもそうだったけど……何か隠してるな……!)
楽しい時間を過ごしていると扉の向こうに人影がいるのがわかる。
この場にいる全員が人影を感じた瞬間にドアが開く。
(あれ……俺たち……)
(プロフィールシート書かかれてない〜……?)