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Dream World Online  作者: 藤見 紅桜
第1話 Start a new game
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憂鬱な夢

ーー挫折ーー


その言葉は人生において誰もが耳にする言葉だろう。

嫌でもどんなに逃げても人生では必ず挫折を経験する。

しかし、挫折を乗り越えたものはより強い生命となり人生を生きる。

そう、この物語は挫折から始まる。

一人の少年が夢を破られ絶望し生きる意味を失う。

そこからどう立ち上がるのか立ち上がった先に何があるのか。


彼らの成長を共に見届けてほしい。

2030年4月、季節は春。

岩手県赤代(せきしろ)島市では外は暖かな風が吹き、桜は咲き乱れ人々の新しい道を祝福するかのように優しい雰囲気がした。

人々は新しい環境へ期待と不安を乗せ日々忙しく暮らす。


しかし、そのような感情すら感じられないほど暗く独りでしゃがみ込む少年がいた。


明かりの付いた部屋に一人でしゃがみ込みただ虚空を見上げる。

その目は虚ろだ、輝きも温かみもなにも感じない。


退屈な日々に飽き飽きし、もはや涙すら出ない。

全てを諦めたような顔で呟いた。


「夢なんか持たない方がいいな……どうせ壊れるんだから……」


ため息をつき、肩まで伸び切った赤色の髪がこれまでの道のりを物語る、髪を切る暇もないほど鬱屈した人生を送ってきたのだろうか、その姿は女性のようにも見える。

彼の名は紅咲蓮(あかさきれん)。今年から高校生になる人間の一人。

小学生の頃から野球に打ち込み中学時代には投手に捕手として活躍。

もう一人の投手とともに天才バッテリーとして将来を渇望されたが……。


「ぐっ……なんでまだ……」


古傷がぐっと痛みだす。

そう、彼は()()()()を奪われる大ケガをしてしまったのだ。

復帰できたとしても間違いなくプロにはなれないだろう。

メンタル面のダメージもあり明るい性格も暗い性格になってしまった。

幸いにも日常生活に影響は出なかったものの、それ以上に失ったものは大きかった。


(もう何も持てない……持ちたくない……どんなに愛おしくて追いかけて追いかけても最後には全部壊される……)


彼が真っ先に思いつくのは未来への悲観と過去への羨望だった。生きる意味さえ失い毎日を彷徨うように生きる。

夢を持たない日々に慣れていた。


(たまには出かけるか……)


暗い気分を和らげるために外出することにしたようだ。

外に出れば太陽と風によって気分も晴れるだろうと考えた。

早速立ち上がり歩き出すと、部屋の扉を開け廊下に出ていく。

廊下に出て一歩目を踏み出した瞬間、体がクラっと揺れる。


(ここ最近寝れてないもんな……)


どうやら不眠のようだ、疲れた体を引きずりながらも歩く。

その歩き方はバランスを取れておらず、立つので精一杯だった。


(ねむっ……)


やはり眠気に耐えられず廊下に倒れ込むと家中に大きな音が響く。

鼻と目の先には階段、危うく大惨事になっている所だった。

誰かが急いで階段を登ってくる音が聴こえてくる、その音を聴いている間に深い眠りに落ちていくーー。


温かく優しい光が蓮を包み込む。

その光が目に差し込む刹那(せつな)、見覚えのある懐かしい景色が目の前に広がる。

もう二度と戻れぬ愛しい景色だ。


明るく差し込む太陽、吹き込む爽やかな風。

観客席から響く大声援に選手たちが応える。

そして、蓮は捕手としてこの舞台に立っている。

マウンドに立つのは投手だ。

捕手はいわゆるピッチャーを支える脇役だ。

しかし、その投手を操るのは捕手、蓮は全てを支配するポジションに誇りを持っていた。


(ここは……野球場か……)

(いやいや、当たり前でしょ試合やってるんだから! どうした!僕! 緊張でおかしくなったか!?)

(でも……なんでこんなに温かいんだろう……)

(涙が……出そうだ……)


過去の彼はまだ髪が伸び切っておらず、ちょうどいいぐらいの髪の長さを保っている。

蓮は夢を見ていることに気づいてはいない。

ただ普通の幸せで楽しくて時間があっという間になる空間だ。

しかし、この空間に戻れることはない。

現実の蓮は密かにその事に気づき涙を流していた。


スコアは4-0、蓮は2打席連続ホームランを打ちチームに貢献していた。

打撃のいい感触を守備に持ってくると、鋭い目で自信を持ってサインを出し高めに構える。


(自信持って……来いっ!)


ピッチャーが大きく腕を持ち上げ、足を腰の位置まで持っていくと、力強く足を踏み込み刀を振り下ろすように豪快に投げ下ろす。

小さな身体に見合わない力強いフォームでストレートが風を切る。

轟音を上げ蓮の目の前にまでボールが迫ってくる。


(渾身のボールだ! 150は出てる!)


バットに当たり、軽い弱々しい音が響くと、ボールはファウルゾーンに飛ぶ。

スコアボードには151という数字が測定され、観客席がどよめく。


(絶対取るんだっ!)


取れば3アウトチェンジで次の攻撃に繋がる。

蓮はボールを取ろうと気迫を見せながら飛び込んでこうとした。


「うあっ!」


突然、足に激痛が走り声が漏れてしまう。

それはまるで雷に打たれたような痛みだった。


(負けたくないっ!痛みにもっ……試合にもっ!)


それでも蓮は痛みに負けずに飛び込む。

試合にも痛みにも負けたくない、そんな気持ちでただひたすらに。

しかし、現実は無情だ、蓮はバランスを崩しヘルメットが脱げてしまう。


(ヘルメットが……!)


そして、眼前に広がったのは内野フェンス、まるで目の前に立ちはだかる壁のようだ。

止まれるはずもなく、フェンスに頭を強く打ち付ける。

首が後ろに曲がり右腕も同じように打ち付けてしまう。

鈍い音が球場に響き渡る、まるで誰かがトンカチで殴られたような。

思わず相手選手も心配になり駆け寄り、球場スタッフが応急処置をしに彼の周りに集まってくる。

観客席はあまりの惨劇に騒然とするしかなかった。


そして、ボールはスタンドに落ちていった。

蓮が飛び込もうが飛ばなかろうがボールを取ることは絶対に取れなかった。

体に今まで感じたことのない激痛が走ると意識を失い深い絶望に落ちていく……。


(痛い……痛いよ……死ぬのかな……ここで……)


痛みに悶え苦しんでいると突然、場面が変わる。

暖かく優しい世界から一点、暗闇の世界にただ一人取り残されただ立ちすくむ。

温度を感じることができず、風も吹かないまるで宇宙空間のようだった。

叫ぼうとしても声は出ないし、誰にも届かない。

歩こうとしても歩けない、恐怖の感情が蓮を支配する。


そうした矢先、頭に強烈な痛みが走る。

脳に何かを埋め込まれているような、そんな痛みが。

もだえ苦しみながら膝を突き頭を抱え倒れ込む。

そして、走馬灯のように彼の人生の出来事が写し込まれる。

それは嬉しい出来事ではなく彼を苦しめる出来事ばかりだが。


「お前のエラーのせいで負けたんだぞっ!」

「ダッサー、なんでそんなところでミスれるかなぁー!」

「お前、正義ぶってんじゃねぇよ」


人々がしきりに蓮を罵倒する。

全て彼の記憶から取ってきたのだろうか、もしくは夢が勝手に捏造した記憶だろうか。

そんな事は今の彼にはわからない。


「もういやっ、見たくない……見たくない……もう嫌だあああああああ!!!」


慟哭が暗闇に響き渡る、しかしここで叫んでも誰も聞いていない、ここは夢の中だ、どう叫んでも聞こえるはずがない。

しかし、彼の耳に呼び声が暗闇を切り裂き飛び込んでくる。

その声に応えると閉ざされた目が開いていく。


「……ーン、レーン!起きてーっ!」

余談ですがこの回の初回掲載は2020年となっていますが、これはDWOの前身作品を掲載しておりその名残です。

実際の掲載年は2022年となっております。


キャラクタープロフィール


名前 紅咲 蓮

身長 173cm

血液型 B型

誕生日 1月22日

好きな事 多趣味だが特にスポーツと音楽鑑賞とアニメ鑑賞

    ゲームは好きだがVR系で遊んだことはない。

    好きな音楽のジャンルは基本何でも聴くけど

    あえて言うならロックバンドとアニソン

    好きなアニメはバトル、スポーツもの

    

好きな食べ物 肉系だけど基本何でも食べれる

嫌いな食べ物 アボカド 出されたら食べるけど自分からは食べたくない……

憧れの人物 アクイラーズの藤原選手(野球選手)と源義経

      藤原選手はなんでもできるところ 義経は誰も思いつかないことをやる、そういう所が好きだから

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