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第207甲殻魔導小隊  作者: 光 寿寿
第一章 ヘルズヘイム召喚
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神の御色


 翌朝華は自室で目を覚まし、仰向けの状態からおもむろに上半身を起こしボーッと正面を見つめている。

 徐々に脳は覚醒していき昨夜の事を思い出していく。

 記憶が鮮明になっていくにつれてどんどん顔は赤くなっていきやがて両手で顔を隠し掛け布団へと伏せる。


(あああぁぁぁ!人前であんな号泣とか恥ずかしい!きっとたけしゃんもドン引きだよ!もー!何やってんのうち!)


 うつ伏せになり十数秒ほど足をバタつかせやがて停止する。


「よし、忘れよう」


 ムクリと起き上がる


「とりあえずまゆみおこしにいくかなー」


 そのままベッドから立ち上がり華は自室を後にする。隣の真弓の部屋の前に立ちノックもせず勢いよく扉を開ける。


「ぐっもーにん!まゆみ-!」


 しかし部屋には真弓の姿はなかった、華は腕を組み少し考えある結論に至る。


「顔でも洗いに行ったかな……?」


 真弓の部屋を後にして階段を下っていくと浴室の方から微かにシャワーの音が聞こえてくる。


(部屋にいないまゆみ、聞こえてくるシャワーの音……)


 そこで華はニヤリと不適な笑みをこぼし先程不発に終わった寝起きどっきりを再び別の形で実行しようと思い至る。

 実に悪い顔をしている。

 しかしこの決断は後に悲劇を生む結果になろうとはまだ知るよしもない。


 華は浴室の扉をゆっくりと開け脱衣所へと侵入する。

 脱衣所は1度に数人は使用できる程の広さがあり身を隠しながら浴室に行くのは容易であった。

 磨りガラスの扉の向こうには誰かがシャワーを浴びているのは確認できる。

 ゆっくりと扉に近付いていき扉に手をかけ勢いよく開ける。


「ぐっもーにん!まゆみー!」


「キャー!!!」

「キャー!!!」


 



 華が浴室に侵入する少し前、武は井戸の水を汲み上げ顔を洗っていた。

 そこへタオルを手に持ち辺りをキョロキョロと見渡しながら壁の死角から姿を表す。

 顔を洗うために水源となるものを探していたようだ、井戸を見つけるとそちらへ真っ直ぐと歩いてくる。


「おはよう、よく眠れたかい?」


「お……おはようございます……、はい……」


 武の挨拶に真弓は肯定するが目の下には少しクマができておりあまり快眠できたとは言い難いようだった。


(昨日の華さんもそうだがやはりすぐに受け入れるのは無理があるだろうな、こればかりは少し時間がかかるか……)


 そう思いながら新たに井戸から水を汲み上げ真弓へと差し出す。


「ありがとうございます」


 すると次の瞬間中から悲鳴が聞こえてくる、二人は顔を見合わせ急いで悲鳴のした方へと向かう。


 脱衣所へと到着した二人が見たものは浴室の入口付近で両手で顔を覆いその場にへたりこんでいる華と湯船に浸かることで体を隠すことに成功している綱一の姿があった。


「見た?」


「後ろ姿だけ」


 綱一の問いに華はそう答える。

 その後、華は綱一にこってりしぼられたのは言うまでもない。




 四人が朝食を終えたころヴァルがやってきた。


「四人とも体調に問題はないかい?」


 四人が体調に問題がないことを告げるとヴァルは顎に拳を当てて少し考え込む。


(ふむ、魔導石をあれほどの時間赤く発光させていると魔力の使いすぎで多少なりとも疲労はあるはずだが彼らには少しもその様子がないな……、これはもしかすると相当な魔力量を秘めているかもしれん)


 魔導石は魔力を込める量によってその色を変える性質がある。

 普段は透明のガラス玉のようなものだが少量の魔力を流すことで紫色へと色を変え、込める魔力量を増やすことにより藍色青色緑色黄色橙色赤色と7色に変化していく。

 

 並の現地の人間ではせいぜい緑色までしか光らせることはできず、ヴァルのような高い魔力量を誇る者でも赤色に10時間も発光させ続ければ次の日には体が思うように動かなくなるほど疲労がたまる。


 しかし綱一達のようなゲートを通ってきた者は総じて高い魔力を秘めている、しかし普通は赤色に10時間も発光させれば多少なりとも疲労は見られるものである。


「今日は四人ともこの建物の中でなら自由に過ごしてもらってかまわないよ、ただしこの魔導石を必ず何処か皮膚に当てて赤く発光させ続けなさい、私の目の届く範囲でね」


 ヴァルの手には握り拳程のサイズの魔導石があった。四人にそれを配り終えると自身は甲殻機のそばで作業をしているレイチェルのもとへと歩いていった。


 四人は顔を見合わせ取り敢えず昨日の感覚を忘れていないか確かめるために魔導石に魔力をこめてみる。

 四人とも赤く発光させることに成功し一安心し、後はやることもないので各々読書にいそしむために自室より本を持ってきて読むことにする。


 綱一はテーブルに座り魔導石を肘の裏側つまり肘窩ちゅうかに挟み読書をしていた。

 少し本に集中すると魔導石から光は失われていく。

 つまり魔力の供給がストップしていた。


「これ結構難しいな」


 意識を魔導石に集中させないと光は失われ、かといって魔導石に意識を集中させると内容が入ってこない。

 綱一は取り敢えず本を読むのをやめ魔導石を発光させることに集中することにした。


 (取り敢えずこれに慣れるしかないか)


 他の三人も同じ結論に至ったようで魔導石を発光させることに集中していた。



 しかしそれもお昼頃まで。

四人とも昼食をとりながら魔導石を発光させ続けていた。


(この短期間で魔力操作をここまでこなすとはこりゃ驚いた、まるであの子の再来だね、異世界人なのが誠に惜しい人材だ、魔法使いになれるならどれ程のものになるか……)


 ここまで幾度となくヴァルを驚かせてきた四人だったがその日の夕方またもやヴァルは驚愕することになる。


 その日の夕方華は十本の指先で魔導石を持ち上げ何やら難しい顔をしていた。

 その場にいる全員から死角になるように魔導石を持っていたため何をしているかはわからない。

 

「おっ!できたー!みてみてー、レインボー!」


 華の手には虹色に光輝く魔導石があった。

十本の指からそれぞれ違う量の魔力を波のように送り込むことで実現していた。

しかしそんなことができる者は過去に一人もおらず本人はどれ程の事をやってのけているのか全くわかっていなかった。


(かっ!神の弓!)


 この国では空にかかる虹は信仰の対象だった。虹は天より降り注ぐ災いを射つための神の弓として信じられ虹色も又神聖な色として崇められている。


(この子達はもしかしたらこの戦争を終わらせるために神が遣わせた使者なのかもしれない……)


 ヴァルはこの時戦争の終結を確信したとかしないとか。


読んでいただきありがとうございます

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