脱出
綱一達十二機の甲殻機は武の拓いた道をひたすら駆ける。
地は熱を帯びトレントは底から生えてくる事は出来ないようだ。
しかし行く手を阻もうと両脇からワラワラと押し寄せてきている。
「俺が行きます!」
綱一はそう言うと先頭になり両脇の魔導翼剣を展開し、それに魔力を込める。
すると魔導翼剣は十数メートルの光の刃を形成する。
「駿足!」
綱一の機体は一瞬で超加速をし、道を塞ぎつつあったトレントを一刀両断する。
「……! 何なんだあいつらは、マジで新人か?!」
「ガハハハ! バーカッス、あ奴等を新人と甘く見るのはやめた方がいい、甲殻機の性能にあぐらをかき格下をただ狩っていた今の魔導士と違って多少は死線を越えておる、あれらは大きくなるかもなぁ」
「……チッ! せめてケツ持ちぐらいはしてやらぁ! で、明石! お前の考えってのはなんだ! ツマンネェ事だったらあとではっ倒すぞ!」
「王都にいたときにレイチェルさんから聞いた事があるんです、魔法使いと魔導士の連携について」
それは207小隊がまだ王都で訓練をしていたとある日の綱一とレイチェルの会話。
夕食の準備をしているレイチェルと翌日の小休止に出すクッキーを作っている綱一は共にキッチンにて作業をしていた。
「レイチェルさん、そう言えば魔法使いの人との連携訓練とか今後あるんですか? 魔法使いの人との交流がヴァルムガルさんぐらいしかないのでどんな人達なのか気になって」
「連携訓練の予定はアリマセンヨ? トイウカ甲殻機は基本的に人間と共に戦闘行動をオコナウヨウニハ出来ていませんから、互いにアシヲ引っ張ってしまいます」
「互いに?」
「ハイ、まず甲殻機の魔導防壁は人体に触れるとカラダにダメージを与えてシマイマス、それこそ命に関わるほどに、そして周囲には人が居れば甲殻機で轢いてしまう可能性があるので機動力がソコナワレテシマイマス、すべての魔法使いが飛べるわけではないので」
「じゃあ完全に別れて戦う事に?」
「ソウデスネ、もし共に戦うとなれば、ミスリルは魔力伝達をしやすいので魔法使いを背中に乗せれば皆さんの魔力を使って魔法を撃てるようにナリマスネ、その際魔法使いは自分の何十倍もの魔力を使えるワケデスカラその威力は個人差はあれど何倍にもなるでしょうね、その代わり魔導防壁の使用不可と、振り落とさないようにと機動力の低下、と甲殻機は戦力が激減してしまいますが、そもそもそれほどのリスクをとるぐらいなら魔導砲を撃つ方が有効だと思います」
「うーん、待ち伏せかつ属性攻撃が欲しい時限定で使えるかなぁ……」
「コウイチさんそろそろクッキーのいい香りがシテキマシタヨ?」
「あっ、ほんとだ皆喜んでくれるかな……?」
そして現在。
「つまり俺達魔導士を魔力タンクにして魔法使いの魔法をお見舞いするわけか!」
「はい、火魔法と風魔法があれば!」
そして綱一達はトレントの森を抜け後方の本隊を目指す。
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