野太き声
綱一と武は四機の甲殻機からの砲撃をかわしつつ魔導砲による反撃を試みる。
「なんで撃ってくるのさ! 同じ魔導士でしょ?!」
綱一は躊躇っていた、同じ人間を撃つことに、彼の砲撃は相手の足元や前方に落ち傍目に見ても直撃するようには見えない。
それに気付いたのか一機の甲殻機が徐々に距離を摘めてくる。
「綱一くん! 躊躇していてはダメだ!」
「でも!」
武が前に出た一機に魔導砲を撃ち込みそれは甲殻機の魔導防壁により防がれる。
しかしそれにより一瞬それの足は止まる。
綱一は魔導砲をその甲殻機に向けていた、しかし一瞬の躊躇いがあった。
その一瞬の躊躇いが相手に攻撃のチャンスを与える。
綱一に向く魔導砲、綱一は防壁を展開しようとするが魔導砲と魔導防壁は同時には使えない、切り替えが必要なのだ。
それはほんの一瞬、だが相手が光弾を当てるには十分な時間。
「間に合わない……!」
しかしその刹那、上空より一発の光弾が相手の甲殻機に向け飛来する。
甲殻機はそれを後ろに下がり寸前で回避する。
岩山の向こうからの砲撃である。
「あー! 惜しい! かわされた、真弓! 後ろに四回とんだ、甲殻機六個分くらい!」
「わっわかった!」
華は周囲の魔力を感じとり逐一真弓に報告する。
真弓からは岩山の向こう側がどうなっているか全くわからない、しかし華が彼女の目になることで砲撃を可能としていた。
「危なかった……」
「綱一くん! 覚悟を決めるんだ! 俺達がやられたら後ろの彼女達が危険な目に遭うんだぞ!」
「わかってます!」
(ちくしょう! あの時と同じじゃないか! 初めて魔族と戦ったときと……!)
「俺が前に出てアイツの砲撃を防ぐ! 君は」
「側面から行きます!」
武が綱一に指示を出そうとするがそれを綱一が即座に理解し行動に移す。
武はまっすぐ相手の甲殻機に向け突貫し綱一はそれを追随する。
そして相手の甲殻機は魔導砲を武へと向け放つ。
それは光弾ではなく継続的に放たれていた。
まるでビームのように。
「ぐうぅぅぅ!!!」
(魔導砲にはそんな使い方もあるのか!)
ビームのような魔導砲を武は一身に受ける、彼の防壁により甲殻機から放たれた魔力は四散し武の後方へと流れていく。
「撃つのをやめろ! この距離なら中の人間ごと撃ち抜けるぞ!」
綱一は相手の側面で砲身を押し当てる。
武の後ろから駿足を使い横に飛び出しそこから再度駿足で相手の懐へ距離を詰めたのだ。
「全員撃ち方やめーい」
相手の甲殻機から野太い声が発せられる。
その瞬間残りの三機からの砲撃は止み辺りに静寂が立ち込める。
「クックック……ぐわーっはっはっはー!」
その静寂を破ったのは一機前に出ていた野太い声の甲殻機だった。
「はっはっは! すまんなぁ! いやーワシの負けだ、いやはややられたわー!」
その甲殻機は豪快に笑いながら負けを認める、しかし無駄に声がでかい。
「おいこらおっさん! なんで撃ってくるのさ!」
綱一は怒りを隠すことなく相手にぶつける。
「すまんなぁ! お前等もミスリナルに行くのだろう! どんなやつか試してみたくなってなぁ!」
「親父ぃ、ほら怒ってるじゃねぇか、だから僕はやめとこうって言ったんだ」
「そうだよ父さん、ホントに脳筋なんだから」
「脳筋ジジイ……」
後方の三機の甲殻機がよってきてそれぞれ野太い声の甲殻機に対し好き勝手言い始める。
「脳筋? がっはっは! 褒めてもなんも出んぞ! がっはっはー!」
「褒めてねーし」「褒めてない」「謗ってる」
(なんか癖の強い人に絡まれちゃったかも……)
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