岩山の向こうに
鉱山都市ミスリナル、ミスリルを含む多くの鉱石が眠る標高約千メートル程の鉱山のふもとにつくられた大都市、ドワーフ族の国、ストール王国の中心部であった場所である。
「そこを今回取り返すってこと?」
綱一達は岩場の多い平地を駆けていた。
華はその道中で綱一と武から目的地がどの様な所か聞いている。
「華さんはもう少しこの世界について調べたりした方がいいと思うぞ?」
「えー? うち勉強とかキライ、都道府県とかですら場所よく知らないし、来たばっかりの世界の地理なんか覚えらんないしー」
「こっちに来てもう結構経つ気がするんだけど……どうやって高校受験乗り切ったんだ?」
綱一は半ばあきれ気味に華へ尋ねる。
「そんなの気合いと根性と一夜漬けよ!」
おそらく一夜漬けが大部分を占めているだろうと察しながら綱一はそれ以上聞くのをやめた。
「あー! 今馬鹿にしたな! うちの事馬鹿にするとまゆみが黙ってないぞ~! 背中には気を付けな!」
「華ちゃん……」
「あっ……ちょっと待って、魔力を感じる、東側!」
華はそう言うと立ち止まり東を向く。
「魔族か?!」
残りの三人も立ち止まり辺りを警戒する。
「わかんない、数は四、北に向かって移動中」
「ちょうど高台が邪魔で見えませんね」
綱一の視線の先には低い岩山がある。
「俺が様子を見てくる、君達はここにいてくれ」
「西脇さん危ないです、俺も行きます」
「いや、綱一君はもしもの時のために二人に付いていてくれ」
「……わかりました」
「ちょっとたけしゃん!」
「ちょっと見てくるだけだ、大丈夫、直ぐ戻ってくる」
武はそう言うと岩山へ駆けていく。
(群れではなく魔力が四つ……北へ向かっていると言うことはもしかして……)
武は岩山を登り身を隠しつつ華の言う方角を確認すると四機の甲殻機が北へ向かって駆けていた。
(やはり魔導士か、目的地はミスリナルか?)
武が四機の甲殻機を確認しているとその甲殻機の足が止まり武の方を向く。
そして四発の光弾が放たれる。
(砲撃!?)
武は光弾を魔導防壁で防ぐと即座に岩山を下り綱一達の元へ向かう。
「たけしゃん大丈夫かな?」
離れたところから華達は武を見ている。
「四つの魔力で北に向かってるってことは多分甲殻機じゃないかな? きっと大丈夫……」
綱一が喋っていると岩山が轟音と共に爆発する。
「たけしゃん!?」
そして爆炎の中から武の甲殻機が現れ此方へ向かってくる。
「攻撃されたんだ! 真弓さんは後退して援護を頼む、姫路さん相手の位置を教えて!」
「う……うん」
「りょ! この方向だいたい五キロ位!」
「わかった! 姫路さんと真弓さんはそこに砲撃を、俺は突撃する!」
「綱一くん! あれ使うと身体が!」
「大丈夫! セーブして使うから!」
(30%位なら……!)
綱一は消費魔力を抑えた駿足を使う。
それはかつて使ったものの四分の一程度の速度ではあったが移動手段としては十分な速度を有していた。
「西脇さん! 相手は魔族ですか!?」
「綱一くん!相手は甲殻機だ! 何か誤解があったのかもしれない!」
武の側まで来た綱一は状況の確認を行う。
「じゃあ姿を見せれば攻撃やめてくれるんじゃ?」
「とりあえず岩山を迂回して正面に出てみよう」
綱一と武は岩山を迂回し四機の甲殻機の前に姿を表す。
すると砲頭は彼らを向いておりそれは火を吹いた。
「魔導防壁!」
光弾を武が防ぎ二人は再び岩山に姿を隠す。
「ええぇぇ!? 撃って来ましたよ!? なんで!?」
「目が見えてないのか? それともやる気満々なのか?」
「やるしかないのか!?」
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