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第207甲殻魔導小隊  作者: 光 寿寿
ミスリナル攻略戦
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医療施設にて


 七死夜天の襲撃から数日後の昼下がり。

 真弓と華はネルリゲンのとある医療施設を訪れていた。

 かご一杯の果物を手に提げ目的の部屋へと向かう。

 

 二人は207小隊と書かれた扉の前で立ち止まり、ノックをしてゆっくりと扉を開く。


 まず彼女達の目に映ったのはベッドに横たわる綱一の姿だった。

 その姿を見た華はゆっくりと口を開く。


「まるで寝てるみたいだね……あの瞬足って技のせいでもう目が覚めないかもしれないなんて……」


 綱一は玉藻とバフォとの戦いで瞬足を多用した結果、身体にダメージを負っていた。 


「そりゃぁあんな速度で動いたら身体に負担がかかるよね」


「ちょっと、勝手に意識不明にしないでくれる?! 俺、意識あるし、ピンピンしてるよ?! ウッ!」


 眠っていた綱一は華の言葉に思わず飛び起きそして身体の痛みに悶える。


「そうだよ! はなちゃん、そんな縁起でもない……」


 そして華は真弓からもお叱りを受ける。


「まぁまぁ、二人とも見舞いの品を持参したぞー」


 華は二人を軽くあしらい手に提げていた果物を高らかに掲げる。


 綱一の隣のベッドで読書をしながら茶番をスルーしていた武はパタリと本を閉じる。


「そんな毎日来なくてもいいんだぞ? 君達も今のうちにゆっくり休息をとった方がいいと思うが?」


「いーの、うちらは来たくて来てるんだから、おとなしく看病されなさい」


 武もまた玉藻との戦闘で腕を負傷し七針ほど縫っていた。


「で、何読んでたの?」


 華は武のベッドの横にある椅子に腰掛け自ら持参した果物の皮をナイフでむきはじめる。


「七死夜天と言うのが何者なのか調べていたところだ」


「七死夜天……何者なの?」


「いろいろ持ってきてもらったが記録が少なすぎてよくわからないと言うのが正直な感想だな、五十年前に人とエルフとドワーフの連合軍が魔族の軍勢と戦って敗れたという記録があったが、その時二十万の連合軍がたった七体の魔族に手も足も出ず敗北したらしい、その時その魔族は七死夜天と名乗ったようだ」


「じゃあ、あんなのがまだ他に五体もいるって事ですか?!」


「綱一君、おそらくだがバフォは七死夜天ではないと思う、つまりあと六体いると考えた方がいい」


「私達……勝てるでしょうか……?」


「わからない、だが綱一君の見せた瞬足、あれは甲殻機の可能性の一つだと思う、あれにはまだ俺達の知らない力があるのではないかと、それを突き詰めればあるいは……」


 と、そこで突然扉をコンコンとノックする音が部屋の中に響く。


「誰だろう? B.Bさんは頻繁に遊びに来てるけどいつもノックなんかしないし」


 綱一は扉を注視し首をかしげる。


「先生じゃないか? どうぞ、開いていますよ」


 武は扉に向かってノックをする主を招き入れる。

 そして開かれた扉の向こうには見慣れぬ男が立っていた。

 その男は黄色のローブを羽織った二十代前半程の青年だった。


(黄色のローブ……黄級おうきゅう魔法使いか)


 武はローブの色から彼が魔法使いの中でも比較的上位の立場の者であることがわかった。


 魔法使いにも綱一達魔導士同様七つの階級が存在する。

 最上位に位置する、赤いローブを羽織る事を許された、赤級しゃっきゅう魔法使い。

 個人で数千の兵士と同等かそれ以上の戦力を有する、燈級とうきゅう魔法使い。

 魔法使いの中でも上位に位置する一つの到達点と言える、黄級おうきゅう魔法使い。

 魔法の実力を備えた戦力の中核を成す、緑級ろくきゅう魔法使い。

 魔法が得意な者が努力すればなれるであろう、青級せいきゅう魔法使い。

 ある程度の実力があればなれる藍級らんきゅう魔法使い。

 そして一般の者より秀でた魔法の実力を備える紫級しきゅう魔法使い。


 しかしその中にはいくつか例外も存在する。


「君達が七死夜天玉藻を退けた207小隊だな?」


 黄級魔法使いは彼らの顔を確認するように見渡しそう告げた。


「退けたと言っても俺達は何も、運が良かったとしか」


「君がニシワキか? 謙遜するな、七死夜天と戦闘になって生きているだけでも大したものだ、君達にはとある作戦に参加してもらう」


「作戦?」


 綱一達四人は互いに顔を見合せる。


「ちょっと待ってよ、まだたけしゃんとこうくんは怪我がなおってないんだよ? それなのに」


「それなら心配はいらない、姫、お願いいたします」


 黄級魔法使いの後ろから白いローブを羽織った赤く長い髪の女が彼らの前に姿を表す。


「パポリヤス、何ですかその物言いは、まず名乗るのが礼儀と言うものでしょう?」


「申し訳ありません」


「供の者が大変失礼をいたしました、わたくしエスリザと申します、この者はパポリヤス、以後お見知りおきを」


 エスリザはスカートの裾をつまみ上げ会釈をする。


「そしてお久しぶりです、西脇様」


 彼女の金色の瞳が武を真っ直ぐと見つめる。


「たけしゃん!? いつの間にこんな美人と知り合いに! 手が早すぎない!?」


 華は驚愕しその部屋にいる全員が武に視線を注ぐ。


「いや……何処かでお会いしましたか?」


 武の頭上には疑問符が浮かび上がる。


読んでいただきありがとうございます。

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