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七分の三


 薄暗く真っ直ぐ何処までも続く中廊下。

 灯りは点点と燭台が備え付けられ影がゆらゆらとうごめいている。


 そこをヒタヒタと足音を鳴らしながら玉藻は一人、ゆっくり歩を進めていた。


「聞きましたぞ玉藻殿、なんでも誰一人殺すこと無く戻ってこられたとか?」


 彼女の目の前に一本の樹木が現れる。

 根をうねらせそれは玉藻へと近付いてくる。


夢樹むじゅか、今回の目的は獲物を狩るのが目的では無かろう? あくまで様子見、命を奪うなどいつでも出来よう」


「そんなことを言っておりますとその獲物他の者に横取りされてしまいますぞ……くっくっく」


 夢樹と呼ばれた樹木の樹体に大きな瞳と鋭い歯を持つ口が現れニヤリと笑みを浮かべる。


「その目でこちらを見でない」


 その大きな瞳を玉藻の人差し指がブスリと貫く。


「ギィヤァァァァ!!!」


 樹夢は枝で瞳を覆い葉音をがさがさとたてながらその場で転がりのたうち回る。


「たっ玉藻殿! 何をするのです!」


「やかましい、次見たらその瞳ほじくり出す」


「うぅ……ひどい……」


 樹夢は枝で瞳を擦りながら樹体を起こし立ち上がる。

 

「ふん、さっさと行くぞ、魔王さまがお待ちだ」


 玉藻は夢樹を横目に歩みを再び進める。


「おねーさまー!!!」


 歩みを進め始めた後ろからそう叫ぶ甲高い声が響き渡り、声の主はどんどんと近付いてくる。


「あぁ!! 御姉様!! お会いしとうございました!!」


 純白の着物を着た少女は後ろから玉藻に飛び付くと頭部に生えた狐耳をピコピコと動かし三本の金色の尾をフリフリと動かしている。


「おお、久しいな妲己か、久しいな」


 玉藻はその歩みを止める事無く妲己に声をかける。


「ああん、御姉様! せっかくお会いできましたのに! せめて! せめてお顔をお見せくださいまし!」


 玉藻は妲己をズリズリと引きながらそれでもなお前へ前へと進み続ける。


「ぐへへへ」


 胸部にまわされていた妲己の腕は徐々にずり落ち腹部に差し掛かった所で彼女は玉藻の尻尾に顔をうずめる。


「ああ、この毛並みたまりません……あっ」


 玉藻は妲己のうなじを鷲掴みにすると思いっきり振り回し顔面から壁に叩き付ける。


 壁は打ち抜かれ妲己は瓦礫に埋もれる。

 

「ひどいですの御姉様、久しぶりに再会した妹に対してこの仕打ち……およよよよ」


 妲己は瓦礫から顔を出すと両袖で顔を隠しよよよと泣き真似をする。


「茶番はやめい、それより聞いたぞ? お前も七死夜天に入ったそうじゃな」


「そうですの! わたくしもついに御姉様と同じ夜天になりましたの!」


 妲己は泣き真似をやめ笑みを浮かべ再び玉藻に飛び付こうと試みるがするりとかわされ空を切る。


「くっくっく、妲己殿もようやく我等と同じ七死夜天になれたのですか、して入れ替わりの死合いはどなたと?」


 二人の会話に夢樹が割って入る。


「あら? 夢樹さんいらしたの? デュランとやりましたわ、あのおかたは昔御姉様のお楽しみの所を邪魔しましたのでその意趣返しもも兼ねて」


「おやおや、妲己殿……七死夜天に入ったからと言って我と対等になったおつもりかな? 新参風情が調子に乗らないことですなぁ? デュランなど七死夜天で最弱、我の夢幻地獄を味わってみますか?」


「新参だからと甘くみない方が身のためですの、痛い目をみるのはそちらでなくって?」


 両者にらみ合い一触即発たいったところ。


「あだだだだ!!」

「あっ……」


 玉藻にかたや眼球、かたやうなじを鷲掴みされ割って入られる。


「魔王様がお待ちじゃ、そのへんにしておけ」


 玉藻は眼球とうなじを鷲掴みにしたまま歩みを再び進める。




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