終結
玉藻の槍の直撃を受けた武、それは甲殻機の装甲をも貫いき深く突き刺さっていた。
武の元へ真弓が急ぎ駆けつける。
「西脇さん! ごめんなさい……私……!」
「問題無い、それよりこの槍を抜いて貰えると助かる、すぐに綱一君の所へ戻らないと」
「……大丈夫ですか?!」
「大丈夫だ、たのむ」
武の返事を聞いた真弓は前足で槍の柄を掴むとゆっくりそれを引き抜く。
「……っ!!」
(腕はまだ繋がっているな……! 止血はスライムがしてくれるはず、問題無い! まだ動ける)
その槍は武の生身の腕をかすめてはいるもののそれ程深く切れているわけではないようだった。
「……! 西脇さん! 槍に血が!」
「大丈夫だ、少しかすめた、それより引き続き援護をたのむ」
武はそう言い残し玉藻と戦う綱一の元へ駆ける。
「西脇さん! 大丈夫ですか!?」
「支障は無い! まだ動ける! 奴は得物を失った! 今がチャンスだ!」
「おやおや? てっきり貫通して二体とも殺れると思ったのだけれども? 意外と耐えるのう」
玉藻は二機の猛攻を全て素手でいなす、まるで踊るように。
(ふむ、惜しいのう、まだまだ余地はあるが力の使い方もまだまだ、実に未熟、惜しい)
玉藻はそう思いながら綱一と武、そして時折飛来する真弓の砲撃をいなし続ける。
その時先程の笑みは玉藻の表情から消えていた。
そこへ更に飛来する数発の光弾、それは空中で爆散し玉藻の頭上から雨のように降り注ぐ。
「なんだ!?」
綱一は予期せぬその攻撃に思わず声をあげる。
「207! 無事かー!」
「あたしらが来たからにはもう安心や! きばりやー!」
砲撃の主は警戒任務中であった黒人率いる176小隊だった。
「全機ー! 爆散式魔導砲一斉発射! 撃てー!!」
援軍に駆け付けた四機の甲殻機はそれぞれ魔導砲を上空に向け放つ、それは空中で爆散しまるでクラスター爆弾のように玉藻に降り注ぐ。
「そろそろ頃合いかのう? 起きよバフォ! いつまで寝ておる!」
「はいぃぃぃぃぃ!!!!!」
頭部を吹き飛ばされたはずのバフォはその場から勢いよく立ち上がり辺りをキョロキョロと見回す。
無くしたはずの頭部はすでにもとに戻っており、その瞳はすぐに玉藻へと向けられる。
「すぐに撤退する、飛べ」
「ウスッ!」
バフォはその場で翼を動かし飛び上がり玉藻の頭上へ移動する。
「逃がすわけあらへんやろー!」
176小隊は引き続き玉藻及びバフォへ砲撃を開始する、そして綱一たちもそれに合わせるように砲撃を開始するがやはりバフォによりそれらは届くことはない。
「アカシコウイチ! お前はオボエタカラナ! この礼は必ずしてやる! それまで首洗って待ってやがれ!」
玉藻はバフォにより横抱きされ上空へ飛び立っていく。
「くそー! にげんなー! 降りてこい!」
黒人の叫びもむなしく二人の魔族は空高く飛び立っていく。
「アホ黒人! この状況見てみい!」
そして辺りを見回す黒人、そこには大破した甲殻機が四機、行動不能が一機、そして小破した綱一と武の甲殻機が目に映る。
そして先程まで居た魔族の一軍もすでにその姿はなかった。
「……派手にやられたなぁ……」
「武さん大丈夫ですか……?」
綱一は武に近づき槍で貫かれた箇所を心配する。
「大丈夫だ、少しかすめたがスライムが止血してくれている、それよりどう思う?」
「見逃された……て言うべきですよね? あの玉藻、多分本気じゃなかったと思います、魔法とか全く使って来ませんでしたし」
「綱一君もそう思うか……」
被害は少ないとは言えないだろう、しかしこの状況で全員生きてる、今はその事にひとまず安堵するべきであろう。
「姐さん、どうしてアイツラ見逃したんで? 全員やっちまいましょうよ?」
バフォは玉藻を横抱きしながら彼女に問う。
「馬鹿者、まだ青いうちから収穫する者が何処にいる、果実は熟れてからいただくのが常識ではないか」
「出る杭は打つべきだと思いますけどねー」
「口答えか?」
「ひっ! そそそそんな姐さんに口答えだなんてイヤだなぁ」
そして二人は遠く北の地へと飛んでいく。
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