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第207甲殻魔導小隊  作者: 光 寿寿
第二章  強襲 七死夜天
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バフォメット


「ヨウ、オソカッタじゃねーか」


 綱一達が急いでB.B達の居る戦場へ戻るとそこには無惨に大破した四機の甲殻機とB.Bの機体の上にあぐらをかくヤギ頭の魔族の姿が飛び込む。


「……そんな……!」


「そこでユックリ見ていけよ? 今からお仲間が潰れる様をヨ」


 ヤギ頭の魔族はその場でゆっくりと立ち上がると両手を広げ天を仰いだ。

 すると魔力が魔族を中心に広がっていくのと華が感じとる。


「あいつ何かしようとしてる! 急がないと!」


「やめろぉぉぉぉ!!!」


 綱一は考えるより先に体が動いていた。

 それに続くように残りの三人も動く、しかし魔族との距離は約一キロ、一瞬で縮まる距離ではない。

 真弓は動くのではなくその場にとどまりヤギ頭の魔族へ狙撃を試みる。


「……なんで……っ!」


 しかし真弓の放った光弾は途中で不自然に大地へと吸い寄せられる。


「ハハハ、早くしないとみんなペチャンコになっちまうぜぇ?」


 そうこうしているうちに大破した四機の甲殻機はミシミシと音をたて始める。


(急げ! もっと速く……!)


 綱一は願う、もっと速くと、しかしすでに彼は自分の出しうる最高速度を出していた、しかしそれではヤギ頭の魔族の元に到達するには約三十秒から四十秒かかる。

 そしてヤギ頭の魔族に対し魔導砲は届かない、恐らく真弓同様途中で落とされてしまう。


 その時、綱一に一つの記憶が流れ込んでくる。

 それは以前の夢のように、誰かの記憶。


(よいか、レイチェル、脚に魔力を集め一気に爆発させる、そうすれば一瞬で間合いを詰めることが出来る、これを瞬足と言う)


「魔力を八足に! 一気に爆発させる!」


 その時、綱一の甲殻機は爆発的に加速しヤギ頭の魔族との距離がまばたきする程の時間でゼロになる。


「ハ?」


 それはまるで巨大な弾丸、ヤギ頭の魔族は綱一の体当たりの直撃を受け一直線に吹き飛ばされて地面を滑っていく。


「B.Bさん! 無事ですか!」


 綱一はヤギ頭の魔族を警戒しつつ後ろのB.Bに声をかける。


「すまねえ……綱一……なんとか生きてる、ダリルとサラとアイシャは無事か……?」


「今皆が見てくれてます、きっと大丈夫です!」


「そう……か……ならよかった……ぜ……」


「B.Bさん!? B.Bさん!?」


 B.Bはそう言うとそれ以降いくら問いかけようと反応しなくなってしまう。


「綱一君! あちらの三人は無事だ! 気を失ってはいるが特に外傷はない!」


 綱一の横に並び武もヤギ頭の魔族を警戒する。


「まだ生きてるのか……?」


「みたいです、まだ魔力が消えてないです、あいつは俺が引き付けます、西脇さんは皆を守ってあげてください、後ろの魔族の群れもいつ動き出すか……」


「わかった、無茶をするんじゃ無いぞ?」


「はい!」


「くっくっくっ! ハハハはは! やっと面白そうなのがデテキタナァ! 俺はバフォ! お前名前は!」


「……明石……綱一だ」


「アカシコウイチ? なんだかイラつくナマエダナぁ」


 ヤギ頭の魔族バフォはそう言うと同時に綱一に手をかざす。

 その瞬間綱一は自分の周りに魔力を感じると突然機体が重くなる。


「瞬足!」


 綱一は機体が重くなるの感じ八足に魔力を集め一気に爆発させ横へ跳躍する。


「ハハハ、よく避けたなぁ、さっきの奴らは全く反応できなかったのによぉ!」


 綱一はその後も魔力を感じ右へ左へと跳躍しバフォへ魔導砲を撃ち込んでいく。

 しかしそれらはすべてバフォの目の前で無情にも落ちていく。

 

(こいつの魔法は多分重力を操る類い、ゼロ距離で当てないと全部落とされる……!)


「くっくっくっ、逃げ回るだけかぁ? その動き中のやつは無事なのかねぇ?」


「心配ご無用! 屁でもない!」

(ってもちょっときついかも)


 綱一は口ではそう言うもののいくら中のミスリルスライムが衝撃を吸収しているとはいえ何度も急加速急制動を繰り返していると流石に生身の肉体がもたないとわかっていた。


(だからといってさっきの体当たりは不意討ちだから成功したようなもの、一瞬でもバフォのきをそらせれば!)


「その脚の早さ鬱陶しいなぁ!」


 バフォは両手を広げ自身の魔力を周囲に広げる、そして綱一もその魔力に包まれる。


「潰れろぉ!」


 そしてバフォを中心に重力が増していく。


「ぐぅっ! あぁぁ!」


 それでも綱一は脚を止めない八足に込める魔力を増やしなんとか速度を維持している。

 その瞬間に微かに聞こえる砲撃音、後方の真弓がはるか上空に向け一発の魔導砲を発射した。


「ナンダァ? なんかの合図か?」


 ほんの一瞬バフォはそれに目を奪われる。

 綱一はその一瞬を見逃さなかった。


「瞬足!」


 綱一はバフォめがけ一直線に音速の体当たりをお見舞いする。

 そしてそのまま速度を落とすこと無くバフォ機体に張り付けにする。


「くはは! こんなんで俺様を倒せるとオモッテイルノカ!」


「俺はあくまでアシストだよ! 本命は!」


 綱一は知ってた、王都サルムでの模擬戦で幾度と無くくらってきたそれを、真弓が放つ砲撃の意味を、そして光弾は重力に引かれいずれ落下することも。


「重力操れても上から降ってくる攻撃には意味ないよなぁ!!!」


 綱一の体当たりの意味は攻撃ではなかった、ただ真弓が上空へ放った光弾の着弾地点にバフォを持っていくだけ。


「ちょ待!」


 そしてその光弾はバフォの顔面に直撃する。



 

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