絶望
「なぁなぁ、ビービーホントにこのままみてるだけでいいのかー?」
「のかー?」
207小隊がゴーレムと交戦している頃、B.B率いる206小隊は依然魔族の部隊を監視していた。
その状況にサラとアイシャは少し退屈に感じているようだ。
「なんだ二人とも飽きてきたのか? だがよく考えてみろ? 俺達の後ろには隊商の奴等が控えてるんだぞ? もし俺達が魔族側に近付いたらそれだけ隊商の連中の守りが手薄になるんだぜ? だから応援が来るまで俺達はあいつ等の監視をしてりゃいいのさ」
「んー、わかった」
「わかったー」
「よし、いい子だ、……所でダリルは随分静かだがまさか……?」
「うん、寝てるー」
「寝てるー」
「マジか……」
B.Bはダリルの居眠りグセにもう慣れていたつもりでいたがまさかまさかこのような状況でも居眠り出来るのかと呆れと感心の感情が半々になっていた。
「B.B……なにか来る、警戒した方がいい」
「お前起きてたのか?! ……ああ、なにか来るな」
眠っていると思っていたダリルの声に少し驚きはしたもののB.Bも上空から近付いてくる魔力を感じ直ぐに上空を警戒する。
「数は一体……か?」
上空よりゆっくりと舞い降りたのは筋骨隆々の赤黒い肌をし黒い翼の生えたヤギ頭の魔族が一体。
「ヤァヤァドウモドウモ、こんにちは、おめでとう、君たちはオレの最初のエモノニなる栄誉ガ与えられました」
ヤギ頭の魔族はそう言いながら両手を左右へ広げ天を仰ぐ。
その表情はどこか不適な笑みを浮かべていた。
「全機正面の魔族に照準合わせろ! 撃て撃て撃て!」
四機の甲殻機は前方のヤギ頭の魔族に向けて魔導砲を発射、距離にしておよそ四百メートル、これまでの魔族なら避けることも出来ず命を散らしてきた。
四機はその魔族に向けて一発二発と次々と集中砲火を浴びせる。
「やったか?」
数十発の魔導砲を受けた魔族は土煙に覆われ姿を確認することが出来なくなっていた。
そして土煙が晴れた先には無傷のそれが立っていた。
「B.B! 効いてない!」
「クソ! なんなんだあいつは! 撃て撃て撃て!」
四機は魔導砲に加え回転式六連装砲も共に照射するがヤギ頭の魔族にはそれは届いていなかった。
まるで吸い込まれるように全て地面へと光弾はヤギ頭の魔族の目の前で落ちていく。
「ザンネンだなぁ、届かないんだなぁ」
ヤギ頭の魔族はニヤニヤしながらゆっくりと歩み始める。
「クソ! クソ! 何で届かねぇ!」
「なんなのこいつ!」
「ビービー! 全然当たらないよ!」
「ビービー!」
ヤギ頭の魔族は更にじわじわと距離を摘めそれに合わせるように四機の甲殻機もゆっくりと後退を始める。
「クフフふふ、がんばれがんばれぇ」
ヤギ頭の魔族はまるで嘲笑うかのように笑みを浮かべ手を叩きながら更に歩みを進める。
「サラ! アイシャ! お前達は後ろの隊商と合流して一緒に撤退するように言ってくれ! マックスは207の連中のところに言ってこの事を伝えてくれ!」
B.Bはサラとアイシャに下がるように指示をし上空を飛ぶ206小隊の伝書兎マックスに207小隊の元へ向かうように指示を飛ばす。
「ビービーとダリルは!」
「は!」
「俺達は時間を稼ぐ! 早く行ってくれ!」
「早く行って! こいつは私たちの手に余る!」
「……っ!」
「……っ!」
サラとアイシャは反転し後方へ駆け出す。
「クフフふふ、逃がすと思う~?」
ヤギ頭の魔族は、にやついた表情で両手を前へかざすと駆け出したサラとアイシャの甲殻機の左右の前足が突然根本からもげ落ちバランスを崩した両機は頭部から地面に突っ伏す。
「まだまだ行くよ~?」
更に残りの前足二本に加え後ろ足四本も次々と圧力がかかったようにひしゃげていきやがて二機とも身動きがとれなくなっていく。
「くそがぁぁぁ!!!」
「こんちくしょおぉぉぉ!!!」
それを目の当たりにしたB.Bとダリルは砲撃を継続しながらヤギ頭の魔族へ距離を摘めていく。
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