違和感
「綱一くん! そっちへ数十体向かった! 対処できるか?!」
「問題ないです! 武さん、こっちは任せてください!」
綱一達がネルリゲンに到着してから数日後、彼等は今日もネルリゲンへ進行する魔族との戦闘を行っていた。
空からは後方から光弾の雨が降り注ぎ辺りには魔族の肉片と体液が撒き散らされていく。
「綱一! 手伝いに来てやったぜ!」
「B.Bさん! 西側は!?」
「あっちはもう終わりだ、ダリルも直に合流してくるはずだ、さっさと終わらせようぜ」
綱一と武が後方の真弓と華の援護射撃を受けつつ魔族軍右翼約二千と交戦中、一足先に魔族軍左翼約二千を殲滅したB.B達は綱一達と合流し一気に魔族の数を減らしていく。
「綱一くん! B.Bも来ていたのか」
「ああ、西側は一足先に終わらせたから手伝いに来てやったぜ!」
「ありがたい、この辺の魔族もあらかた倒したみたいだが……」
「後ろに控えてる奴等がなんか不気味ですね」
今回の魔族は部隊を三つに分けていた、綱一達207小隊が相手をしていた右翼、そしてB.B達206小隊が相手をしていた左翼、それともうひとつ後方に約三千ほどの部隊がその場に留まっている。
「なになにー? こっちももう終わり? ならさっさと後ろの奴等もやっちゃおうよ」
綱一達にダリルも合流し彼女は後方の魔族部隊を攻撃しようと提案する。
「いや、ただ突撃しかしてこなかった魔族がその場に留まっているのはどうも気持ちが悪い、ここは隊長の指示を仰いだ方がいいと思うぜ? 罠の可能性だってあるんだしな」
ちょうどその頃後方のマイケルは周囲を偵察中の魔法使いよりラバットを介して一報を受け他の四人を引き連れ綱一達と合流するため彼等の元へ赴いていた。
「お前達、たった今周囲を偵察している魔法使いから伝書兎が届いた、こいつらは囮だ、ここから東に十数キロ地点にネルリゲンへ向かうゴーレムの姿が確認された、私と207小隊はそちらの迎撃に向かう、206小隊はここで奴等を監視、向かってくるようなら迎撃しろ、念のため警戒任務中の176小隊に応援を要請しておいた、多少時間はかかるが来てくれるはずだ」
綱一達に合流したマイケルはその場の全員に指示を飛ばし彼等はそれを了承する、そして207小隊と共にゴーレムがいるとされる東へと全速力で向かう。
「隊長、さっきB.Bさんは今まで突撃しかしてこなかった魔族がこんな動きするのに違和感感じてましたけどこんなこと以前にもあったんですか?」
「いや、こんなことは初めてだ、奴等が戦術めいたことをするなんて私も聞いたことがない……」
綱一はここ数日魔族との戦闘を繰り返しその間も彼等は群れを成しただ突撃を繰り返す戦いしか見てこなかった。
そして先程のB.Bの言動からもそれは少なくともそれ以前からもそうだったと言うことがわかる。
そしてここに来てのマイケルの言動である。
彼はヘルズヘイムに来て既に十年という月日が流れている、その十年という期間、戦い方を変えて来なかった魔族がそれを変えた。
その事に対し綱一はどこか胸騒ぎのようなものを感じる。
そしてそれは彼だけではなかった。
「目標の魔力を感知したよ! 偵察隊の情報通り四つ!」
華は他の四人よりも一足先にゴーレムの保有する魔力を感じていた。
「よし! 綱一 華 武は魔導砲により牽制しつつ接近、真弓と私は後方から援護する! さっきも言ったがゴーレムは胸の中にある要石を破壊しないと幾らでも再生する! 露出させるには硬い外殻を破壊する必要がある!」
「そのためにはある程度接近して魔導砲を撃ち込まなければならない、奴らの一撃は強力だから気を付けろ!」
「了解です」「はーい」「了解」「わかりました」
「よろしい、では攻撃開始!」
五機の甲殻機はマイケルの指示通り、岩で出来た巨人、ゴーレムへと攻撃を開始する。
ゴーレムの体躯はどれも十メートルをはるかに越え特に発達した腕はそれだけでも全質量の五割を占めていた。
先行する三機の甲殻機の魔導砲により、最も手前にいた一体の胸部へと光弾が撃ち込まれ、外殻を破壊。
すかさず後方の真弓の甲殻機により露出した要石を狙撃され、ゴーレムは体が崩れ、ただの岩へと成り変わる。
「まずは一体!」
「真ん中と左の二体は俺が引き付ける! 右の一体を頼む!」
そう言うと武の甲殻機は二体のゴーレムへ光弾を撃ち込みながら少し左へ距離をとる。
二体のゴーレムはゆっくりと歩みを武へと向ける。
残った一体へ綱一と華が攻撃を仕掛けるが右腕に阻まれ思いの外効果が薄いようだ。
二人は振り下ろされる拳を掻い潜りながらゴーレムを中心に対角に別れ旋回しつつ砲撃を集中する。
二人の前後左右からの砲撃に加え後方からの援護もあり、ゴーレムの重心が少し後ろへと傾く。
「防壁展開!」
綱一は跳躍し魔導防壁を展開、そのまま勢いよくゴーレムの胸部へ体当たりをかますと、ゴーレムは体勢を完全に崩し胸部のガードが完全に外れる。
そこへバリアを解いた綱一が弾かれながらも砲撃、すかさず後方の真弓と足元の華から追撃を受けその場でゴーレムは崩れ去る。
「あと二体!」
武はバリアと砲撃を交互に使い分け相手の攻撃を回避しながら二体を相手に怯むことなく戦っていた。
しかし援護があるとは言え一人では決定打に欠け、戦いは拮抗していた。
そこへ一体を倒した綱一と華が合流し一気に有利に傾く。
そのあとは特に苦戦することもなく残りの二体を撃退することに成功する。
「お前達ご苦労だった、奴等の動向が気掛かりだ、すぐに戻るぞ」
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